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白の王子  作者: 櫻塚森
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「この前、王立ギルドがスタインウェイ伯爵領の第五階層を無事攻略した。」

スタインウェイ伯爵領ダンジョン、通称-魔道具ダンジョン。数年前、第四王子ジュンリルの因子のルーツを見つける足掛かりになるかもしれないと言うダンジョンに王家の王子も参加して攻略に臨んだ。その結果、ジュンリルは使い魔の卵を得ることが出来た。その際、大暴れしたルキリオとルル。彼等の活躍で第五階層以降もまだダンジョンは深く存在していることが判明したが、ルキリオ達が去った後に再生した階層ボスを倒せずにいたため第六階層に潜ることは出来て居なかった。

「あのダンジョンは、ルキが第五階層のボスをワンパンしたやん?で、五階層の魔物レベルが全体的に下がったから、スタインウェイ家も一般の冒険者の挑戦許可を出したんやなかったっけ?」

使い魔を膝に乗せたままジュンリルが言う。

「弱くなっても冒険者では攻略が無理だったんだよ。S級が不在だったってのもあるけど、ここ最近、冒険者ギルドの質が落ちてるって話もあるしね。で、もう一段階、階層ボスには弱くなってもらわないと第五階層でドロップする良質の魔石や魔道具の部品が手に入らない、そこで依頼があって、王立ギルドのメンバーも参加することになったんだ。」

王立ギルドの中でもダンジョンに潜ることを専門としている部隊が参加したらしい。

「それって、ハヤテの部隊?」

ルキリオの言葉に頷くショーン。

「南に出来たダンジョンの新階層の攻略を終えて休暇中だったんやない?」

王立ギルドは、領主レベルからの依頼がなければ動かない。ダンジョンは基本的に存在する領地の当主に管理責任がある。

ハヤテは黒の騎士隊に所属する騎士である。黒の騎士隊は、国王の依頼で各地のダンジョンの調査、攻略を主に行う少数精鋭の特殊部隊である。依頼がなければダンジョンに潜ることはないので普段は、王立の騎士隊に所属し王都の警備隊として街の治安を守っている。

「あの時は、しゃしゃり出たアホを庇って怪我をしたみたいだけど、今度は油断しなかったってことだね。リベンジしたいって名乗り出たらしい。」

王立ギルドと冒険者ギルドの差は国からの援助があるかどうかである。王立の施設が開発した魔道具や魔法陣を優先的に扱えたり、偽骸と言われる偽物の体を作って貰えたりする。

偽骸は、自身の魂や魔力を一時的に移植することで自由に動かせる器で、第二の肉体として動かせるものである。本体の容姿を移した偽骸もあれば、全く異なる姿を取る者もいる。魂が入っているため会話も出来るし、容姿を似せると、一見本物かどうかの区別が難しい場合もある。

また、偽骸で得た経験は本体にも記憶として残る。万が一倒されても魂と魔力は瞬時に眠っている肉体に戻る仕組みになっていて、繋がっているため、偽骸が致死の攻撃を受けても本体は何らかの影響を受けてしまうものの死にはしない。そんな技術を例のダンジョンのドロップ品として得た古い書籍から多少のオリジナルを加えて復元させたのがケイリルを中心とした魔道具研究所の面々だ。当時四歳だったケイリルが六年かけて実用化した超レアアイテムである。もちろん、偽骸のメンテナンスもアップグレードも研究所の仕事である。偽骸を手に入れた冒険者は気負うことなくダンジョンに臨めるのだ。ただし、敵の攻撃で偽骸の核を破壊されると不可逆的な障害を受け、二度と冒険者としては働けなくなるので撤退の見極めも必要な能力である。また、偽骸はかなり高額なため、回収が不可能となれば冒険者には自動的に偽骸のオーナーの奴隷となる。破損していてもいずれの日か回収されれば奴隷契約は解除される。《偽骸を壊すな、置いてくな。》これは、各冒険者ギルドに掲げられたスローガンの一つである。

偽骸にもピンからキリまであるが、王立ギルドにあるものは常にアップグレードされたもので、冒険者ギルドにある偽骸は王立ギルドからの下げ渡し品(中古や試作機)である。

下げ渡し品ではあるが、十分な効果は有されており。耐久レベルもピンからキリである。

「ハヤテのチーム、今回は偽骸使用したんだって?」

前回生身で行って死にかけたので偽骸を使った探索に乗り換えたらしい。

「でも、自力修復可能範囲で済んだ。」

「ハヤテ達、偽骸嫌いだかんなぁ。で、これがハヤテの持って帰ってきた謎のアイテムです!」

ケイリルが嬉しそうに魔法袋に手を突っ込んだ。

そして、皆の前に出されたのはケイリルの掌に乗せられた金属製の立方体。

「五階層のボスから出たドロップ品。ボクらの時は古文書だったけど、今回はこれ。」

ケイリルを前に兄達が唖然としている。

「元あった場所に戻してきなさい!」

レンリルが冷静な口調で告げる。目が笑ってない。

「ケイリルが魔道具に対して並々ならぬ知的好奇心を刺激されやすいのは分かってるけどね、」

仕方ないなぁと言う顔でショーンが言う。

「ダンジョンの階層ボスから出た物は研究所の鑑定士からの報告が上がるまで持ち出し禁止やで、なにしとん!」

ジュンリルが怒る。側で使い魔のマイクンも怒ってる風だ。

「ショーくんが、鑑定出来るからって、止める職員を圧しきったんだろ。」

王太子ショーンの固有魔法は“鑑定”である。

ルキリオはジト目でケイリルを見た。

「えっー!!でも危険なんは危険やでぇ!」

タクリオがルキリオに引っ付きながらケイリルから距離を取る。皆の視線を受けてショーンの常磐色の瞳が金色に輝いた。何だかんだと弟に弱い兄ショーンは鑑定を行おうとした。

「!」

その時、禍々しい気配が黒い霧となって鑑定をするショーンへと伸びてきた。

「ショーくん!」

咄嗟に伸ばされたルキリオの手が兄を突き飛ばす。

レンリルが尻餅を付いたショーンを更に遠くにやるためにタックルする。

ショーンを突き飛ばす際にルキリオに弾かれたタクリオが伸ばした手がルキリオを掴み損ねた。

「兄上!」

「ルキ!」

ジュンリルも素早く大地を蹴りルキリオに手を伸ばすが届かない。ケイリルは自分の行動が一瞬遅れたことを悟りながら、魔道具に封印ための魔法陣を展開したが間に合わず、黒い霧に捕らわれたルキリオは魔道具に吸い込まれていった。

「ルキリオ!」

子供達の叫び声に王城は騒然となっていた。

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