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白の王子  作者: 櫻塚森
2/7

Prologue:2

「サヤカ・メノウ・アルニアでありんす。」

「アヤカ・オニキス・アルニアだ、やなかった、です。」

目の前にいる白と黒の少女を前に少年は固まった。

顔立ちは良く似ているが性格は全く違うらしい。

しかし、意を決したように大声で挨拶を返した。

「オレは、この国で第二王子ってやつをしてるんだ。二人共、宜しくな!」

挨拶をするなり、隣に立つ青年に頭を殴られている。

「いってぇ!何すんだよ!ライナス!」

仮にも王子相手にいいのだろうかと双子は思った。

「マナー、礼節がなってません、やり直しを。」

青年の言葉に舌打ちしながら、赤髪の少年は王族らしい挨拶をした。

随分と親しい間柄のようだった。

サヤカとアヤカの二人が魔界を去ってラーネポリア王国の北にあるアルニア辺境伯家に正式に養女として迎え入れられたのは三年前だ。六歳の双子は変成期も真っ只中で、姿形を見たら嫌がられるかもと思っていたが、アルニア辺境伯領は、魔界門から近く魔族や混血児も多いことから変成期の姿にも容易に受け入れられた。

母や兄弟からの愛情は受けていたものの父親世代の男性を苦手にしていた双子は辺境伯のことをかなり警戒していたが、辺境伯はちょっぴり不器用無口なだけで優しい、双子にとって理想の父親となった。

「何も王家に嫁がなくとも、この辺境伯領で婿を取れば良い。そうしよう!」

本格的にラーネポリア王国での教育が始まると伯は言い出した。

「二人はすでに我が子だ。魔界との公約?知らん。第二王子は、その性格はともかく、そうだ!脳筋だ!賢い二人にはもったいない!」

「この件に限って饒舌になるのなんなん?ええ加減にしいや!」

母が父の頭を叩いている。痛そうだ。

無口何処に?と双子は思ったが嬉しかった。

もし、二人とも王家に嫁がないとなると魔界から何を言われるか。

この優しい父母を困らせたくない。

例え二人とも選ばれなくてもこの二人なら自分達を見捨てないだろう。

と、思ったのだが。


「どっちか一人?二人とも嫁に来いよ。仲いいのに、離れて暮らすなんてだめだろ。」

第二王子リルリオの言葉。

脳筋ではあったが、心優しく寛容なリルリオのことを双子は支えていこうと決意した。

九つになった時、サヤカとアヤカに使い魔の卵がやってきた。

使い魔の卵はラーネポリア王国の民であると神が認めた証であった。二人にとって魔界との真なる決別の証でもあった。

未だに父以外とは交流を保っていた。四つ上の兄は丈夫になり成人と共に父と愛人親子を公爵家から追い出す予定でいるらしい。そして、変成期を終えた双子は揃って自身の因子についてリルリオに話をした。

「九尾と龍……これまた、えぐいな。」

アヤカの因子『龍』は発現するまで『蛇』と勘違いされることが多い。しかし、『龍』と知られると父親に駒扱いされるのは分かっていたので母は父が勘違いしたまま放置していた。

「龍の因子だと知られたら魔界が取り戻そうとしてくるかもしれないから、さっさと結婚しようぜ!」

内心不安だったアヤカもサヤカも喜んだ。

しかし、リルリオは死んでしまった。誰よりも勇敢で優しい二人の王子が。厄災スタンピードで子供を庇って亡くなったのだ。らしいと言えばらしい最期だと双子は思った。

父である辺境伯は二人に帰って来いと言ってくれた。

リルリオとの婚姻を期に発表する予定だった因子の話をどうするか考えることも必要だった。

父は双子のどちらも手放さないと言ってくれているが『龍』の因子を持っている以上、アヤカだけでも魔界に返還せよと言ってくるだろう。

悩む二人の元にやってきたのは、一年前に婚約者であるラーネポリア王国王太子を同じく厄災で亡くしたミライアだった。

彼女とはラーネポリア王国の学園で先輩後輩として交流を重ね本当の姉のように慕っている存在だ。そして、妹のように可愛がっている一つ下のマルティナ。彼女はリルリオの弟王子の婚約者だ。当時のラーネポリア王国には第三王子のラインハルトしか後継者はいない。王太子が亡くなった後、ミライアは遺言によりリルリオの婚約者となっていた。この事は、もちろん、リルリオも双子も納得していた。

「「姉さま……。マルティナ。」」

二人は駆け寄って双子を抱き締めた。

「あぁ、こんなに窶れて。」

ミライアは双子を抱き締めながら言った。

「お二人のことは、ラインハルト様が守って下さります。」

マルティナが語った。

リルリオは、自分が先の厄災で亡くなってしまうような予感がしていたのだそう。

そこで、兄に託されたミライア同様、双子の将来もラインハルトに託したいと遺言書を書いていたのだと。

「リルリオ様が……。」

「私はぁ、姉様達が大好きですぅ。第三王子の妃であれば私のような者でも務まりましょうが、王太子妃など無理ですぅ。でもぉ、姉様達がいらっしゃるなら、心強いと思えるんですぅ!それにラインハルト様は優しくて頭も良いですが、サボりクセが強いのですぅ。私だけの手綱では王位を投げ出すかもしれません!是非、皆でラインハルト様を捕まえ、いや支えて頂けませんかぁ?」

マルティナの本心。

「でも、ラインハルト様は了承してくださるん?」

「その辺は、もう抜かりなく。」

ニッコリ笑うミライアとマルティナ。

こうして、前代未聞。元第三王子は王太子となり、四人の賢妃を一度に得る機会を得たのである。



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