Tips3「望月麻里江」1
私の名前は望月麻里江、凛翔学園の二年生で社会調査研究部に所属しています。
家は古くから代々受け継ぐ神代神社を守る家系です。
父が神主として神職を取り仕切っていて、私は望月家の長女として生まれた縁で巫女として神事を執り行うこともあります。
私には二人の妹がいて、二人は健やかに育ったのはいいのですがまだ精神的にも幼く天真爛漫といった具合で、神社を守るというお役目についてはなかなか理解するのは難しいようで、私が責任を背負っている部分がまだ大きいです。
夏には恒例行事として行われている神事、姉妹神楽があるのですが……二人は人前で神楽を舞うのを恥ずかしがっていることもあり、なかなか稽古をサボりがちでそれが心配のタネです。
元々は獅子舞神楽がここ舞原市では行われていたということですがこの神事は数十年前に一度途絶え、現代になって姉妹神楽として神事を再演することとなった経緯があります。
神主である父が言うには多くの聴衆に見届けられる神事の方が神様も喜ぶと話していますが、知り合いから聞くと単なる親馬鹿という説が濃厚で、娘の私としては見世物にされているようで、この神事を守り続けることを誇りに思っている父にはとても言えないですが、少し陰ながら軽蔑してしまっているところです。
とはいえ、舞原市で暮らす多くの方に楽しみにしていただいているのは事実で、それならばと私も現実を真摯に受け止めて、毎年頑張って神事を全うしている次第です。
さて、私にはもう一つの顔があります。
社会調査研究部に一緒に所属する茜と雨音の二人と一緒にしているゴースト退治です。
父や母が言うには悪鬼羅刹の類は遥か昔より、どの土地にも蔓延っていて、それを退治する退魔師の存在は古くからあったそうです。
確かに古い文献に目を通しても、陰陽師なども出てきますし、そのような妖怪や鬼はよく描かれており、人の世に災厄として蔓延り、苦しめていたことが知られています。
それらとゴーストがいかなる形で関係のあるものかは分かりかねるところですが、父や母は私がそのような妖怪退治をしていると認識しているようです。
確かに、茜と雨音は魔法戦士として自分たちの個性的な衣装で戦っていますが、私は由緒正しい巫女服で戦っています。
私が巫女服で夜に出掛けていく姿だけを見ていると妖怪退治をしているように見えるのかもしれません。
ゴーストとの戦いでは幼い頃から鍛錬してきた弓道が役立っています。もし凛翔学園に弓道部があったら、そこに所属していたのかも。
私自身は退魔師をしているという認識でも大きく間違いはないのかもしれません。
しかし、未だ分からないことは多く、ついつい考え事をしてしまいます。
茜は自分達のような不思議な超能力を持つ人を魔法戦士と呼んでこれまで活発にゴースト退治をしてきましたが、凛翔学園に赴任して顧問にもなってくれた稗田黒江先生は私たちのような能力者を”魔法使い”と呼んでいて、私たち以上にその存在をご存じのようでした。
そして気になるのは、私たちがアリスからの祝福を受けた死者の霊魂を取り込んだ半人半霊の存在であるということです。
そもそもゴーストを認識できるようになるには強い霊感が必要とのこと。
魔法使いになるということは強引に霊に近づく行為でもあると考えられます。
これが示すことは、自分たちが生きる目的を見失えばたちまち霊に取り込まれてしまうのではないかと……そういった恐ろしい想像です。
それを考えると成行き的に始めてしまって深く考えていませんでしたが、ゴースト退治が命懸けのものであると分かります。
私は……そこまで生に対する執着はありません。これも神職の務めだと受け入れています。
確かに、家族や友達と過ごす時間は大切だから長生きはしたいと思います。でも、それ以上に大切なことを成すことに自分の生きる意味があると考えてしまいます。
一体何が正しいのでしょう?
私たち魔法使いとゴーストの違いとは何なのでしょう?
私たちも呪われて、自分を見失ってしまったらゴーストになってしまうのでしょうか?
人を呪い殺める悪鬼と成り果ててしまうのでしょうか?
私のような無知な人間が考えてわかることではないと分かってはいますが、ふと、自分のこれまでの行いを振り返りながら、そんなことを考えてしまいます。
ただ……今は、仲間と一緒に善行を行う日々に充実感を感じています。
何事もなく、これからもこの使命を全うできればいいのですが。
何か予感のようなものでしょうか。時々、布団の中に入ると落ち着かず、ソワソワしてしまいます。
先生が……稗田先生がこの街にやってきて、それが呼び水となり、大きな災厄の流れの渦に巻き込まれているような……そんな、嫌な胸騒ぎがしているのです。




