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14少女漂流記  作者: shiori


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Tips1「片桐茜」2

 あたしは愛犬であるバーニーズ・マウンテン・ドッグのブラウンと一緒に恒例である朝のランニングに向かった。


 アディダスのシューズにキャップを被り、ジャージ姿で元気よくを意識していつも決めているコースを走る。

 

「バウバウ」とリードを繋いでいるブラウンが自慢の脚力を活かして今日も威勢が良く元気だ。


「相変わらずお前はやる気に満ち溢れてるなぁ」


 あたしは彼のことを感心している。尻尾を振って愛嬌があるだけでなく、朝からだらける様子も見せない。運動をするのが大好きで、実にあたしに似ている。あたしが通う凛翔学園の男子も見習ってほしいくらいだ。

 体重が40キロ近くある大型犬のブラウンは、頼り甲斐のある体格をしているが、性格は温和で、小さい頃から飼っているのであたしによく懐いている。


 あたしは近くの住宅街から公園を寄りながら帰宅するコースをいつも走る。

 産まれてからずっとここで暮らし育ってきたあたしにとって街で会う人もそうだが、公園でランニングをする人も今はみんな知り合い同士だ。


陣内(じんない)さん、今日もおはようございます、精が出ますね!」

「茜ちゃんは今日も元気だねぇ、、どんどん大人に近づいて、すっかり色っぽくなっておじさんは喜んでいいのか、複雑な心境だよ」

 

 陣内さんはもう五十歳を超えるが、今も朝のランニングを欠かさない。

 本人はあたしの走る姿が楽しみだから今も頑張れると豪語しているが、それで元気でいてくれるなら、何とも思わない。

 陣内さんは土木作業員をしているから、必然的に体力は必要としているので、あたしのためというのはお世辞のようなものだけど、あたしは一緒に笑顔になってくれる人がいるのが嬉しい。


 それからも、何人もの舞原市民と挨拶を交わしながら商店街にあるパン屋さんに寄った。

 ここで朝食のパンを人数分買って帰るのがあたしなりの朝の日課だ。


「いらっしゃい! 茜ちゃん今日も綺麗だねぇ」

「ありがとう、今宮さん。今日も朝が早いですね」


 今宮(いまみや)さんはパン屋さんをこの街でずっと営んでいて、朝四時に起きて仕込みをしているそうだ。お店を開ける六時には多くのパンが店内に並べられていて、人気商品は八時には売れ切れてしまうこともある。

 そういう事情があり、お気に入りのパンをこうして朝早くに来て買うようにしている。


 あたしはお父さんからご要望のあった焼きそばパンとコロッケパンを、お母さんにはアップルデニッシュと卵サンドを選び、それと一緒に食パンを買った。


 あたしに比べてお母さんは少食だからいつも半分を分けてあたしの分にしてくれる。お昼に食べる分も確保できて、あたしとしては嬉しい限りだ。


 ちなみにあたしは目移りしながらじっくりと選んだ。

 カレーパンにするかピロシキにするか熟考をした結果、カレーパンを今日は選択し、それと一緒に一番人気のメロンパン、さらにおやつ用にあんこの入った揚げゴマ団子を選んだ。これは特にお気に入りで小さい頃からお母さんに買ってもらって、おやつとして長年食べてきた。生地はもっちりとしていてゴマの風味もあり、一口大を一気に口に放り込むとあんこの甘さが口いっぱいに広がるたまらない味だ。


 あたしはご満悦な表情でトングで掴んだパンをトレイに乗せ、会計を済ませると、帰り道をまた清々しい心地で朝の陽ざしを浴びながら、ブラウンと一緒に家まで走った。


 こんな毎日をずっと過ごしながら思う。


 あたしはこの街が大好きだ。


 どんな形であれ、ずっと守っていきたいと思う。

 

 平和な日常が続いていくのは疑うことのない当たり前のようなことだと思う人もいるけれど、あたしは人々の絶えまぬ努力によって成立しているものだと思っている。


 お互いを尊重し、信頼しあって、生きていく。


 多種多様な人が暮らしているからこそ難しく、時にすれ違ってしまうものだ。


 でも、あたしはあたしなりに人と人とが分かりあって、この先の未来まで繋がっていけるよう、街をゴーストの魔の手から守っていきたいと思う。


 大人になってもきっと、この思いは変わらないことだろう。


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