第三章「諦めきれない想い」7
いつも以上に真剣に話す茜の姿を見届けて、最初に私は包み隠さず話してくれたことに感謝を伝えた。
アリスプロジェクトに関わって来て、魔女にまでなった私からしても興味深いことで溢れていた。
ゴーストの出現が活発になったのは、自殺報道などと関連して社会不安が広がっているからだろうけど、この街は異例な状況にあると判断できた。
昨日、アリスに確認を取ってアリス自身は今回関与していないことは確認済みで、そうなれば”偽りのアリス”が何者かによって生み出され、魔女の力を悪用して三人を覚醒させたと言える。
一体何のためかもわからない……アリスと同じ形状? まさかクローン体?
考えてはみたがどれも推測の域を出ない。だが、力を与えられてしまい、ゴーストの被害が無くならない以上、彼女たちの戦いに終わりはない。
そのことは真剣にこれから考えていかなければいけないことだろう。
私は彼女たちが魔法戦士と呼んでいる魔法使いについても、ある程度分かる範囲内で説明をした。
やはり、魔法使いが死者の霊魂を取り込んだ半人半霊の存在であるこそは絶句させるほどの衝撃があったようだが、私はアリスプロジェクトのことも自身が魔女であることも当面は秘密にしておくことにした。
「一応、覚えておいて欲しいのだけど。私も霊感があってゴーストが視えるのは理解できたわね。
あなた達が展開してるファイアウォール内にも侵入できる魔法使いであることに間違いはなくて、テレパシーやファイアウォールを展開することは可能なのだけど。年々、魔力許容量が低下していて戦闘が出来るほどの魔力の放出は出来ないから、戦力としては期待しないで欲しいの」
これは事実であるから、今のうちに三人には説明した。
ピンチになったら私が助けに入ってきてくれると期待されれば彼女たちが無茶な行動をしかねないのもそうだが、私自身も非常に困る。夫からもキツク戦闘行動は控えるように厳命されている。それだけ、私はもう本気で一度魔力を行使すれば簡単に壊れかねない戦闘に向いていない魔女なのだ。
魔女としての使命に特化した分、私の戦闘力は格段に落ちている。ある意味では自分の力で戦うのではなく、覚醒させた仲間に全てを託し戦わせろと暗にアリスから言われているようなものだ。
「それは仕方ないですね、でも、顧問として私たちを見守ってくれるんですよね?」
「保護観察くらいならね。新任教師だから、無茶はさせないでよね」
私は期待されても困るという思いを込めて言った。すっかり彼女達の熱気に圧されていた。
「分かってます! だから、あたし達の事、絶対見捨てないでくださいね」
満面の笑みで私を見る茜は話しの最後をそう言って締めた。物騒なことに手を貸すことになってしまったと認めて、覚悟を決めるしかなかった。




