第三章「諦めきれない想い」5
テーブル囲むように四人で座る時間が続く。
話しを始める前に一息つくタイミングを取ると、雨音が立ち上がってポットから出したお湯でコーヒーを入れてくれた。部長という立場だが、実に面倒見がよく周りが見えているようだ。
三人はそれぞれ好きな飲み物を淹れているようで、茜はカフェモカ、雨音はローズヒップティーを、麻里江は緑茶を嗜んでいるようだった。
「やっぱり、先生はコーヒー派ですか?」
「よく分かったわね……」
「見ていれば分かります、タバコもお吸いになるんでしょう?」
丁寧な言葉で正確に指摘をしてくる雨音。一口コーヒーを含んだ反応だけを見て理解できるとは凄い観察力だと思った、雨音という少女は只者ではないとひっそりと私は認識を改めた。
「それで、私が知っているゴースト、あの黒い影の魔物に関する説明からしましょうか。全てを知っているわけではないから参考程度に聞いてね。
ゴーストは生物の死後に発生する残り香なの。分かりやすくと言うと、人間なら通常死を迎えると共に魂は自然に還る、この目で観測したわけではないから天に昇ると言い換えてもいいけど。
理由があってそうならなかった個体、それらの一部がゴーストとして呪いを巻き散らし、時に人に寄生して悪影響を及ぼす。
原因は生前の恨みや憎しみ、未練だと考えられているわ。
ゴーストの悪影響を受けると人の場合、精神が不安定になったり、無気力状態、自殺の原因になったりするわ。行方不明者の一定数がゴーストの仕業とも言われているのよ。
感染力の高いウィルスのようなものだとも言えるから、対策を講じず野放しにしておくには危険な存在だっていうのは間違いないわね」
生きている人間よりも死んでいる人間の方が多い、人類が歴史を重ねている以上当たり前の事実であるが、それ故にゴーストが現世から存在しなくなることはあり得ないと考えられている。
息を呑んで、口を挟むことなく聞く姿勢に入っている三人、私は言葉を続けた。
「霊的な存在であるゴーストには通常兵器は一切通用しない。
当然よね、それ以前に普通の人にはあの黒い影は見えないのだから。
だから貴方達のような特別の力を駆使しなければ対処できない。
まぁ感染症に対抗するワクチン、治療薬が誕生することと同様、被害を減らすため抗体を持つものがゴーストと対峙することになるわね。
世間の知らないところで。呪いを巻き散らすゴーストを祓う方法を持ってしまったのだから」
私がゴーストについて知っていることを説明すると三人は私の核心を持った言い方に驚いた様子で、結果的に私の方が詳しいことが明らかになった。
「それじゃあ、今度は私から質問ね、貴方達はどうやって魔法使い、貴方達の言うところの魔法戦士に覚醒を果たしたのかしら?」
これを聞かずして、今後の向き合い方を考えることは出来なかった。
魔法使いとはいわば霊媒師や超能力者で、特別な才能を持ったものが過酷な訓練を重ね、得られる秘術のようなものだ。
超能力として初歩的なテレパシー能力ですら、単純に勘が鋭いだけでは会得できない。高い洞察力と判断力がえってもなかなか人に使いこなせるものではない。何か秘密があるはずだと私は考えた。
「先生、それについてはあたしから説明します、ちょっと自分たちでも不思議な体験だったので、理解が進むかは分かりませんが、包み隠さず覚えている範囲でお話しします」
戦闘中は前線に立って戦っていた茜らしく、一番この状況に順応している彼女の口から説明してくれるようだ。




