第二十五章「終わらない厄災の夜」8
早起きをした凛音と茜は先に台所へと向かうと野菜スティックとレトルトパウチのクラムチャウダーを準備して、朝食として食べることにした。
「静かな朝食ですね」
「そうだね」
テレビもラジオも付かない、十分な電気も通っていないとなるとスマートフォンの充電にも困るほどだった。キスの感触を忘れられない凛音は音楽を掛けたい気持ちをグッと堪えて、必死に昨日自分がしてしまった行為がバレないよう、気を逸らした。
黒江と羽佐奈は夜遅くまで晩酌に興じていたせいで起きて来ることはなく、友梨は呼びかけても返事もなく就寝していた。
茜は今までと違う日常へと変わっていく寂しさを堪え、スプーンで湯気を出すクラムチャウダーを掬って口に含んだ。
そうして、朝食を食べ終わると、昨日黒江とした約束の話しを凛音にもしようと口を開いた。
「凛音、先生とも約束したことなんだけど。この異変を生き残って一緒に朝日を見よう。とても綺麗で眩しいくらいの朝日をさ」
茜にとっての今の希望は生き残り、一緒に朝日を観ること。
失われてしまった、眩しいくらいの陽の光を取り戻すこと。
それは、昨日の戦闘を経ても変わることはなかった。
「はい、こんな私でよければ。先輩と一緒に朝日を見る時まで生き残りましょう」
茜にはもう家族がいない。
それを知る凛音はその家族の代わりになれるなどと自惚れてはならないと言い聞かせながら、共に生き残ることを目標とすることに決めた。
「約束出来てよかった。もう誰も悲しませたくないから」
「私は茜先輩がいてくれるなら、頑張れます。そういう風に自分を言い聞かせることに決めました」
凛音の言葉を聞くと、茜は安心したように穏やかな表情で微笑んだ。
(……私にとって、茜先輩が心の支えです。だから、私も茜先輩を支えて見せます)
強い信念と共に静かに決意を固める凛音。
恐怖と立ち向かうための勇気を持つために、言葉を掛け合う二人。
新婚夫婦のような安らぎを感じる時間が過ぎると、二人は後片付けを済ませ、ブラウンのお世話をするため、一足先に制服姿に着替え学園へと向かった。




