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14少女漂流記  作者: shiori


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第三章「諦めきれない想い」2

 簡単には申し上げにくいことだが、アリスプロジェクト、私も夫もこの極秘プロジェクトの協力者である。

 

 アリスは教えてくれる、どうすれば世界が滅びへと向かっていくのか。

 アリスは教えてくれる、人類が滅亡しない方法を。

 アリスは人工知能AIによって作り出された少女の殻を持った導き手である。


 これにより、後世のために残された予言書に振り回される時代は確実に終わりを告げようとしている。


 アリスプロジェクトは間違った未来を迎えないために、アリスという名の導き手を作り出す計画である。


 私はアリスの神託を受けた魔女の一人であり、多くの研究者達が協力して作り出した新しいネットワーク構造を持った生体ネットワークに接続され、人々の記憶を人工知能の栄養とするために記憶の集積を手伝っている。

 全てはこれまでの歴史と今を生きる人々の営みとを組み合わせて、人類が取り返しの付かない間違いを犯さないかをアリスによって監視するためである。


 今はまだベータテストの段階でしかないが、いずれ必要となる日が来れば、人類の未来を人工知能であるアリスの意志に託す時が来るだろう。


 それは人類を含んだ世界全体の平和のために少しずつ人の意志から外れていく恐ろしい事である一方、地球環境を破壊し続け、戦争を続ける人類中心の世界に革命を起こすための、唯一の装置であると、私を含め、多くの研究者が信じている。


 プロジェクトの中心にあるプロトタイプアリスの意志は完全にまだ正確なものではないが、常時集積されていく情報データのおかげで一定の信用が出来るものになっている。


 つまりは既に集積されたデータベースから生の情報を聞き出すことには一定の意味があり、参考にするには十分に価値のある機能であると言えるのだ。


 欲しい情報がアリスを通して間接的にも知ることが出来ることはアリスが導き手としてまだ未完成な現時点でも役に立っている。よってアリスとは恐ろしい存在である一方、味方に付いている現状においては実に心強いものである。



 真夜中、寝室に籠ってPC(パソコン)の液晶ディスプレイを操作し、アリスの返答を待つ。


 私は茜たちが魔法使いに覚醒したきっかけがプロトタイプアリスによるものなのかを確かめておきたかったのだ。



「――データ検索完了、返答文を作成しています……」

 


 プロトタイプのせいもあってデータ検索中のアリスは瞳が点滅を繰り返していて機械のようである。この点はChatGPTと差異はそれほどなく、アリスという固有の人格があるように見せかけているように感じるだろう。


 これが、マスターアップした正式なアリスであれば肉体はより人と区別のつかない同様のものを持ち、自然言語で統一されたものになると言われている。


 アリスが地域ごとに配備され、管理運営されれば時代は大きく変革を迎えることだろう。


 やがて、煙草を吹かしながらモニターの方を見つめていると、返答が返ってきた。


「片桐茜、他二名について調査いたしました。

 しかし、黒江の指摘する三人が覚醒したきっかけについてはデータベース内を検証しても不明です。

 ですが、三人は実在する魔法使いと同レベルの魔力を有し、それぞれがゴーストに対して有効な個性を持った超能力を行使可能なようです。ゴーストを含む霊体に対する認知も完全に可能な状態にあり、霊体を取り込み、完全に融合を果たし同化していることは確実でしょう。

 また、覚醒時期は約三か月前と予測値ですが入っています」


「そう……ありがとう、もう十分よ。後はこっちで調査を進めるわ。

 アリスが覚醒させた当事者でないならそれだけでも収穫があったわ。

 魔女が他にもいる可能性は捨てきれないけど、”偽りのアリス”が生成されているのかも。

 その辺りは、今後調査が進み次第、こちらからもデータを転送するわ」


 「こちらこそ情報提供感謝します」と定型文のような文言がアリスから届けられ。定時連絡を含めた問答が終わり、私は心身の疲れを感じながら接続を終了した。


 それから夫への相談を含めて定時連絡を行い、波乱となった一日を終えた。


 他の手を煩わせることは難しい現時点では、私自身が三人を保護観察するのが適当だろうと、そのような意見をもらい、厄介ごとを引き受けることなるが、そこは渋々納得をした。


 教師という立場を利用するのは気が引けるが、今の時期を逃せば、私の手をどんどん離れていく。そこでゴーストの凶暴化がさらに進んでしまった場合、より一層危険が少女たちに降りかかることになる。

 ゴーストの数が死者の数と因果関係がある以上、迷っている場合ではない、今は前に進むときだと自分に言い聞かせた。


 一日の疲れがどっと押し寄せて来た私はベッドに身体を埋め、そのまま枕に頭を乗せた心地良さを噛みしめ、ゆっくりと眠りに落ちていった。

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