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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十二章「混沌を望む者」1

 厄災四日目の朝。住民の避難先の一つである桜沢小学校がゴーストの襲撃を受けた。

 住民への被害状況は深刻であるとの報告を受けた学園長は守代連に救援を求めることにした。

 話しを引き受けた蓮はアンナマリーと奈月をテレパシー能力で呼び出し、すぐさま合流すると現地までの案内を担当する手塚金義(てづかかねよし)巡査が待っている警察車両へと足早に向かった。


 半分眠ったままの頼りない足取りをしているアンナマリーと時々空腹なのかお腹を押さえている奈月を引き連れ、蓮は警察車両に乗り込んだ。


「ご苦労様です。準備が出来ていましたら現場に急行します」


 真面目な警察官らしく背筋を伸ばし前を向いたまま声を掛ける手塚金義(てづかかねよし)巡査。しかし、待っているほんの少しの間も帽子を被り直したり、ハンドルをコツンコツンと指で音を立てずに叩いたり、微妙に汗ばんでいる姿を見て、蓮には焦っていることがその小さな仕草で手に取るように分かった。


「どうぞ、問題ありません」


 助手席に座ってシートベルトを締めると、表情を変えずに蓮は手塚金義(てづかかねよし)巡査に準備が出来ていることを告げた。


 手塚金義(てづかかねよし)巡査は後部座席に座る思春期である二人の愛くるしい姿に動揺しかけたが、考えるのをやめて静かに発進させた。


「あの……先生、その……おにぎりとかありませんか?」


 空腹に耐えられず、もじもじしながら後ろから蓮の首筋を二本の指で摘まんで奈月は聞いた。その顔は恥ずかしさにも耐えているために赤面していた。


「ないな」

「えぇ……」


 バッサリと持っていないことを告げられると奈月はげんなりとした落ち込み方を見せた。すると、それを聞いていた手塚巡査は車を一旦停め、黒い鞄から保存食のカロリーメイトを取り出すと奈月に手渡した。


「喉が渇くかもしれませんが、これでよければ……」

「あなたは神ですか……メシアですか……?」

「いえ、警察です」


 手渡された保存食をありがたく受け取る奈月。制服姿の手塚巡査が真剣な表情のまま返答を返すと妙なやり取りに気付けばなっていた。奈月は桜沢小学校に着くまでの間、リスのように保存食を下を向いたまま夢中で食べ続けた。


「そろそろ着きますよ」


 信号機が全て止まっている影響もあって徐行運転をせざるおえずここまで十分近くかかっていた。

 舞原市全景から見て桜沢小学校は凛翔学園のある学園都市からは反対方向にある。

 そこは繁華街に最も近く、決して子どもが近寄っていい場所でない。

 しかし、家庭の事情を含め、通学可能範囲に小学校は必要不可欠であるとの観点から、桜沢小学校は存続を続け、一定数の生徒が通っている。


「もう着くって、マリーちゃん起きて」


 なかなか起きない子どもを起こすように奈月がアンナマリーの身体を揺する。するとようやく瞼を開き、アンナマリーは状況も分からないまま身体を起こした。


「ドーナツ食べたい……ご飯の用意が出来たのか?」

「マリーちゃん寝ぼけすぎだよ」


 呆れ顔を浮かべる奈月であったが、奈月の声は余計に眠くなるんだよと言って、残っていたカロリーメイトを奪い取り、アンナマリーは口に入れて栄養補給をした。


「もうすぐ朝の体操が始まるぞ、シャンとして支度しておけ」


 後ろが騒がしいなと思いつつ蓮は声を掛けた。


「お前冗談が下手だな……」


 蓮の声を聞くと、アンナマリーは蓮にちゃんと起きていることが分かるような返答をした。蓮はアンナマリーの声を聞き、普段通りに戦える状態であると分かり安堵した。

 動物的勘を働かせるように周囲からピリピリとしたゴーストの気配をしっかり感じ取っていたアンナマリーは背筋を伸ばした。


「車両はここに停めます。私は皆さんの邪魔にならないよう、後から向かいます。どうぞよろしくお願いします」


 手塚巡査は車を路肩に停車させ、三人に声を掛けた。

 もうすぐそばに人類の敵、ゴーストが徘徊している。

 三人は戦闘モードに切り替え、慌ただしく車を降りた。


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