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14少女漂流記  作者: shiori


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第二十一章「クロージングファンタジア」3

 連日続く、もはや怪異のような度重なる異変が襲い掛かる中、さらに深刻な事態が発生していた。


 時計が止まる現象は結界に閉じ込められた全ての人々に影響を及ぼしており、守代蓮は時間感覚が分からず、眠気を抱えたまま学園長室を訪れた。


 学園長から呼び出された以上、またロクでもないことに巻き込まれるのだろうという予想は出来たが、これ以上、仕事を増やさないで欲しいというのが、一番の要望に他ならなかった。



「守代先生、すまないな、突然呼び出してしまって。緊急で伝えねばならないことが出来たのだよ。


 さて、最悪の事態が起きたよ。避難所の一つ、桜沢小学校がゴーストの襲撃に遭い避難していた市民に被害が出ている、既に壊滅状態とのことだ。それに今回は今までにない異変もある。


 守代先生は当然知っている事だと思うが、通常普通の人間にはゴーストの姿は目に見えないはずだが、黒い影も化け物の姿もどうしてかそのまま全ての舞原市民に見えているようだ。


 ゴーストを初めて目の当たりにして、目の前で自分の家族が襲われているのだ。想像するだけで恐ろしい。

 私も状況を見てきたわけではないが、報告によれば酷い混乱だそうだ、状況は最悪だ」



 最悪の事態なんてもう何度目だと思って蓮は聞いていたが、内容が本当に想像の上をいくほどに最悪なものであったので、眠気が吹き飛び、意図せず一気に目が冴えてしまった。 

 

「ゴーストが避難所に出現して襲うこと自体は考えたくはない事でしたが、可能性は十分にありました。しかし、ゴーストの特性を無視して可視化して襲い掛かるとは」


 蓮はすぐにこの惨事を引き起こしたのが上位種のゴーストの仕業であると感じた。

 

(可視化させた目的……一番に思いつくのは人間たちに恐怖を与えるためだが、本当にそれだけのためか……?)


 すぐさま想像を巡らせる蓮、それは彼の性格を物語っていた。


「それでだ……ここからが本題だが、守代先生にはすぐさま現地に向かって欲しい。

 

 ここまでで想像できることだが、早急に出現したゴーストを退治しなければ街にも被害が広がってしまう。


 避難所の数が足りないという理由もあるが、多くの人々が現在も自宅避難を強いられている。可視化したゴーストが襲い掛かれば一溜まりもないだろう。


 時間の経過が把握できない事は置いておいても、一刻を争う。

 稗田先生には姉妹神楽を見守る役目がある、守代先生、貴方だけが今は頼りだ。

 こんな朝早くにご面倒をおかけしますがよろしくお願いします」


 学園長らしく長い話しをされ、蓮はさらにうんざりとしたが、正義感がないわけでもなく、救援の依頼を無視するわけにはいかなかった。


「分かりました、そういう役回りであることは承知しています、現地に向かいましょう。少女たちにはさらなる無理を強いることになりますが」


 ささやかな抵抗とばかりに蓮は鋭い目つきで学園長を睨み付けた。

 それだけ、蓮は連日続く戦いで疲弊していくアンナマリーと奈月を気遣っていた。

 残酷な話だが、二人に限界が訪れた時、それは本当の終わりを意味する。それを蓮は嫌というほど分かっていた。


「すまないな……綺麗ごとを言うようだが、人命を一人でも救うため最善を尽くすのが、私の責務だ。無理をさせたいわけではない、現場の判断は守代先生に一任する。これ以上対処が出来ないというなら、先生の独断で判断してもらっていい。

 

 現場までの足は手塚金義(てづかかねよし)巡査にお願いしている。

 今後の事についてはまた帰還後に稗田先生を加えて話そう。では気を落とさずによろしく頼む」


 学園長が話した後で部屋の隅の方に立っていた警察官、手塚金義(てづかかねよし)巡査がお辞儀をする。ゴーストを直接目の当たりにしてきたのだろう。瞳からは生気が失われ、血の気が引いているようだった。


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