最終話 告白
その後は猛スピードでコトが進んだ。
転移した先にはウィアさんが居て、直ぐにネネの呪いを解いてくれて。
「今すぐ日本に帰ることも出来るが、どうする?」
「俺はネネと結婚したいので、こちらに住みます」
「そうか」
「な、何をアホなこと言ってるのよこのアホナトカ!」
「俺はネネが好きだ。付き合ってほしいと思ってるし、結婚したいとも思う」
「し、真剣に言われても、そんなこと……」
「ダメ、か……?」
「だだだダメとは言ってないわよ! でも、なんでわたしなんかを……っ!」
「まあダメって言われても意地でも逃がさないけどな」
「ヒョウ様の血はまだ濃いんだな」
「よく言われます」
「ば……」
「ば?」
「ばばばバカなんじゃないのバカなのバカなのね!? わたしみたいなツンツン女が良い訳ないでしょ見る目ないのアホなの!?」
「見る目ないって言われようが、俺がネネに惚れたのは事実だし? 俺、見る目はあるほうだと思うけど」
「バカなのっ!?」
「ネネが頷いてくれるならバカでもいいとは思ってるかな……ネネ、殴られると痛いんだが?」
「バカにはこれで十分でしょあほーっ!」
そんなやり取りをしつつ、人魚姿に戻ったネネにぽかぽかと全く痛くない拳で殴られつつ。
丁寧にネネの言葉を拾って、プラスに解釈して、彼女が素直になるまで待って。
「というわけで、娘さんをください」
「アネモネは大事なワシの姫! 生半可な男にはやらん!」
「そうよそうよ!」
「そうよそうよ!」
「はあ……。じゃあ決闘でもしたらいかがですか、お父様」
「姉人魚、ナイスアシスト」
「待ちなさい、なんですかその呼び名は!」
ネネとのお付き合いを反対する、ネネの父親や姉は決闘で叩きのめして黙らせて。
……ちょっと、思ったより手加減できなくて、心が折れてしまったらしいお姉さんたちが引きこもってしまったせいで姉人魚に王位が回ってきたりしたけれど。
そして、今は――
「姉人魚ー、水エルフの里が魔道具欲しいそうなんだけど、増産って出来そうかー?」
「姉人魚は止めてと……まあいいです。職人たちはまだ余裕がありそうですし、一時的に増産するぐらいは大丈夫だと思いますが……詳しい事は本人たちに聞いてくださいな」
「了解です、女王陛下」
「……かしこまられるとそれはそれで気持ち悪いですね……」
人魚の国で、女王になった姉人魚のもと、魔道具の開発や陸との交易(俺が姉人魚に提案して始めた)を行う日々を送っている。
「ナトカー! お弁当忘れてたから、届けに来たわよ!」
「ありがとうネネ。愛しい妻の顔が見れて嬉しいよ」
「ななななによ!? 気合い入れて作ったんだからちゃんと食べてよね!」
「もちろん」
「……イチャつくのは他所でやってちょうだいな……」
賢者の曾孫は、童話の姫を伴侶に、幸せな日々を過ごしている。…なんてな。
おしまい
★おまけ
「ぶっ!?」
人魚姿のネネを見た俺は、思わず顔を背けた。
「な、なに?」
「なんて格好してるんだお前!!」
いや人魚ってあんな感じのイメージだけど!ド王道に貝殻のブラしか付けてないとか!
ムリムリ好きな子がこんな露出高い格好してるのムリ。もう一回言うけどムリ。
……背後でウィアさんとレイスさんが笑ってる気配がするけど、爆笑するぐらいなら彼女に服を用意してほしい……。
「とりあえずこれ着てくれ。お願いだから」
「え、ええ……わかったわ」
後ろ手に着ていた制服の上着(うちの高校はブレザーなのだ)を渡す。
背後からする布擦れの音がたいへん下半身に悪いがそれは仕方ない。仕方ないんだ。うん。
「着たわよ、ナトカ」
「うん……ごめんちょっと待って」
「? ええ」
――――――――――
※ナトカは健全な男子高校生です。
お読みいただきありがとうございました!