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 そうか、そろそろ二度目の中間試験か。ていうか再来週かよ。

 一学期の中間と期末は12位と17位だったし、今回も同様の結果を残せるようにせんとな。と言っても、前回前々回とテスト前に猛勉強したわけじゃないし、今回もなんとかなるんじゃないかなぁ……

 

 「てのは、慢心ですかね?」

 「そうですね、我々貴族、特にAクラスに所属する高位貴族は外国語や法律、政治学や経済学辺りは幼少のみぎりより強制的に家庭教師を付けられて学んでいますから、必修のみの2年生まではかなり余裕があります。それを、学院に入学してから学び始めた貴女が、我々の水準に食らいついているのは大変優秀ですね。ですから、余裕があるのでしたら勉学により力を入れられたら、貴女はもっと上を目指せるのでは、と思いますね」

 

 さっきの一限目の法律学、授業終わりに中間の範囲が告知された。それでつい、「まあ今回も何とかなるかー」的なことを、教室内で一番話す友人のベアトリス=ルヴェリエ侯爵令嬢に溢してしまったところ、鬼クソ真面目な回答を返された。いやまあ、この子根っからのクソ真面目さんだから仕方無いんだけど。

 え?ジュリエッタ氏はどうしたのかって?いやいや、ジュリエッタ氏と話すようになってからまだ一週間しか経ってねえっつの。その一週間がドチャクソ濃かっただけで。

 その点ベアトリスさんは、こう、なんていうの、派閥での集まりを気にしてないというか。ええまあ、あの、有り体に言うと、ボッチでして。隣で授業を受ける事が多くて、入学してしばらくしてよく話すようになり今に至る。

 

 ちな彼女はブルネットのロングウェーブに紺色の瞳の無表情系美人。いや、無表情というかボーッとした表情なので、美人なのに基本的に覇気がない。不思議ちゃんって言ってしまえばそれまでだが。

 

 つか冷静に考えてこの世界顔良いやつばっかじゃね?貴族だからなのか?なんなの?怖い。いや、施設時代も不細工いなかったな?てことはなに、顔面偏差値激高ワールドなん?ヲタクにやさしいせかい?

 

 「おおっほ、ありがとうございます。今後も補習なんて受けたくないし、少しは復習しとくかなぁ……」

 「それが賢明かと思います」

 「うす!頑張ります!……そういえばそれ何読んでるんすか?」

 

 ベアトリスさん、休み時間は基本スマホいじってて、漫画かラノベ読んでる。

 

 「ああ、これはいつもの巡回です」

 「『しよう』っすか?」

 「そうです。今日の更新を確認しています」

 

 ベアトリスさんは、こっちの小説・漫画投稿サイト、『創作しよう』のヘビーロム専である。『しよう』はなろう+支部みたいに、オリジナルも二次創作もなんでもアリ。そのユーザーということは、つまり

 

 「ベアトリスさん、その、……ヲタクの為の同好会、興味無いっすか?」

 「入りましょう」

 「話が早くてビビる」

 「平民学校にはその様な同好会や部活があるらしいのに、私達には今までありませんでしたから羨ましいと思っていました」

 

 私の心の平穏の為に巻き込もうと思ったら豪速球で返事が来た。心強すぎる。いつもの少々ポヤンとした表情がキリッとしてる。

 

 「できてから一週間位なので、まだ活動は不安定なんすけど」

 「問題ありません」

 「メンバー今の所、王太子殿下とジュリエッタ様と私だけなんすけど」

 「…………」

 

 ああん、苦虫を噛み潰したような顔をされたンゴ……。なんでぇ……。

 

 「ハッ!いえ、問題無いでしょう」

 「何を悟った?」

 

 問題無いらしい。心強いなあ!

 

 「いえ、ヲタク同好会は名目で、殿下のお相手を選ぶ集まり、みたいな深読みをしてしまいましたが、よく考えたら殿下はユリウス様一筋ですしね。ジュリエッタ様がこちら側なのは意外でしたけれど」

 「んん?殿下がユリウス様とやら一途なのって皆知ってんすか?」

 「勿論、貴族は全員知っていますね。噂では両陛下もご存知らしいです。知らないのは当のユリウス様だけじゃないかしら」

 「んな漫画みたいな」

 「本当に」

 「あれ?てか、王子の相手って引く手数多なんじゃないんすか?さっきめちゃくちゃ嫌そうな顔してたっすけど……」

 

 

 

 

 

 「王太子なんて一番モテないわよ。この世で一番モテないイケメンはアタシだと思うわ」

 

 放課後、ベアトリスさんを同好会に参加させる為に研究室に案内をした。ヲタクを拗らせているベアトリスさんは、私達の転生事情もすんなり受け入れていた。はちゃめちゃ豪気じゃん。そのついでにエディ本人に、日中の疑問を聞いてみたわけだが、その返事がコレ。

 

 「そうなの!?え?でもほら、親が娘を王子と結婚させようみたいなのもあるんじゃないの?」

 「まあね、めちゃめちゃ少ないけどあるわね」

 「え?めちゃめちゃ少ないの?マジ?」

 「少ないわよ。王家は最終決定権があるとはいえ、基本的に象徴の部分が大きいもの。というか、アタシ達王家って単に総合人事課みたいなもんよ」

 「ふーん。あ、そっか、この国って立憲君主制か」

 「そ。ま、アタシの場合、そういう煩わしいのを避ける為のジュリちゃんなのよ。代々、王子は相手を見つけるまで七公爵家の中で、気の合う相手を許嫁にして虫除けするの。実際、そのまま婚姻することもあるのよね。王女の場合もそうよ。そうなると王子も王女も家入りしてる事が多いから、七公爵家はどの家もつまるところ王家の血筋って事で、基本的には侯爵家以下は下手な企みをしてってのはそうそう無い、って感じなのよ」

 「ほーん」

 「まあ、この国、一夫一婦制だし、貴族も一部を除いて恋愛でにしろ契約でにしろ相手は自分で見つけるのが基本でねぇ、そうなると、王家なんて面倒なとこに政略で嫁ぎたがる貴族はほぼ無いわけ。それこそ、めちゃめちゃ野心や虚栄心が強いとか、政治的に不満がある、とかでないとね」

 「あ〜複雑〜やっぱ色々めんどいんだな〜」

 「そうよぉ!アタシはずぅっとユリウスに一途な乙女なワケだけど、王族って基本学院と王宮しか出会いが無いから、まあ、大変らしいわ。弟なんて、『恋愛って、振られる事しか分からない』って言ってるもの。可哀想に、惚れた相手にアタックし続けて振られ続けてるらしいわ。アタシからしたらあの子も弟の事好きなのに度胸が無いのよ、女は度胸なのにね!」

 

 どうやらエディの弟さんの恋のお相手は16歳年上の平民で、かなり優秀な人で王子王女の家庭教師の一人なのだとか。一目惚れした弟王子は元々かなり懐いていたらしいが、一度その人が結婚した時にはかなり落ち込んだとか。でも結局すぐ離婚したらしく、その後から猛アタックしてるらしい。王子だってのでもビビるのに、OKしたらしたでショタコンとしか言いようが無い年の差の為お相手が尻込みしてるとかそういう話だった。そりゃビビるわ。お相手さんに同情するわ。次代の王族、面倒な恋愛しかできない呪いにかかってんの?

 

 と、隣に座るエディと答え合わせをしている向かいで、ジュリエッタ氏が獲物を見つけた顔でベアトリスさんを懐柔にかかっていたのは、ちょっと見てない。断じて見てない。「BLの可能性を感じてみて欲しいのだけれど」「創作にご興味はおありでないかしら」とか言ってたのは本当に聞こえない。それに、どうせBL沼は堕ちる。たけのこ先生の絵を見たら堕ちるに決まってる。決定事項。落ち着いた頃にベアトリスさんに掛ける言葉はこれだけだ。

 

 ようこそ、こちらの世界へ。

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