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 「おばあちゃんが言っていた…」

 

 私の目の前には今、仮○ライダーがいる。

 

 「天の道を往き、総てを司る男」

 

 もちろんこれはめちゃくちゃ訓練を積んだ私が魔法で幻術を展開している。中身は言うに及ばず、他人には見せられない恍惚とした表情のジュリエッタ氏だ。

 

 「イキイキしてんね、ジュリエッタ氏」

 「だって、本当にソフィーは私の夢を叶えてくれるんだもの……。もしかして神なのでは……??あ、そうそう!次は魔法少女になりたいの!昔はね、良い年してお○ぷちゃんに憧れていたのよ、わたくし」

 「まって、流石にそこは記憶が朧気だが。あ、ハニー○ラッシュの方なら覚えてるぞ」

 

 あれから私とジュリエッタ氏の距離感は一気に縮まった。クラスメイトは少し不思議そうにしていたが、ジュリエッタ氏の笑顔に皆喜ばしく思ったらしく、私達の交流は受け入れられていた。むしろ、平民の私にも分け隔てないジュリエッタ氏の株が上がっていた。

 

 こうなると、絶対に周りの幻想をぶち壊すわけにはいかない使命感が湧き上がってくるよな。

 

 

 

 ちなみに『マジコイ!』についても詳しく聞いている。

 前世で読んだネット小説のような悪役令嬢は存在しないらしい。強いて言えば、許婚程度とか。なので、攻略キャラとライバルの強制力は無いらしい。

 現実となったこの世界で、貴族制度はあるが恋愛結婚が主なのは、乙女ゲー仕様のご都合主義といったところか。現実世界となっては、前世と同じく、良いところの交際相手は婚姻前に素行調査されるつってるし、そこら辺の諸問題はクリアしてるんだろうよ。

 好感度を上げて恋愛関係に発展すると、攻略キャラが自ら許婚の家に直談判し、そこからライバルの許婚が面子をかけて主人公と各種一騎打ち?するアクションフェーズがあるらしいが、乙女ゲームと無縁だった私にはマジでちょっとよく分からないし、まあ、聞いたところでやっぱり私には関係無かった。てかそれ、攻略キャラより、ライバルとの篤い友情を妄想して百合一冊作れそうなやつじゃね。

 

 

 

 「はあ……。訓練場で遊んでいるとすぐに時間が過ぎてしまうわ。もっとソフィーと色々なお話をしたいのに」

 

 しょげたようにジュリエッタ氏が零すが、憂鬱な美少女マジで美味えなぁ〜。

 

 「たしかに、煩悩を発散する時間が取れてませんわな」

 「そう!そうなのよ!それでね、わたくし考えましたの」

 「ほう」

 「同好会を立ち上げましょう。そうすれば家の者への大義名分も立ちます。更に休日に登校するのも不自然ではありません」

 「なるほど名案一理ある〜。てことは、とりま会員2名の同好会すか?」

 「ええ、そうよ!入会には厳しい審査を設けます。会員を積極的に増やそうとしなくても、私達の影響力を考えれば、という風に文句は言わせません」

 

 自信満々に独自持論展開するジュリエッタ氏、輝いてんな〜。

 

 「ぶ、物騒〜〜〜……」

 「善は急げ、というわけで、明日にも申請して受理させます」

 

 

 

 ―――そしてここに、『歴史文化研究会』が爆誕した。

 

 

 

 え?何が『歴史文化研究』かって?ほら、それっぽい言葉で濁すのはお約束だろ?現代視覚なんちゃらみたいに。つまるところ、まごうことなきヲタ研だよ。言わせんな恥ずかしい。

 

 

 

 次の日の放課後、私とジュリエッタ氏は連れ立ってとある部屋へとやって来た。ここは各学生研究室が建ち並ぶ研究棟の一室。どうやってかは怖くて聞けないが、この部屋を抑えたとか。

 なんか、既にPCとペンタブとか、資料用らしきタブレットまで用意されてる気がするけど幻覚かなぁ……?お城の一室感ある部屋とPCの違和感半端ねぇなあ。

 

 「顧問には私の家と親しい者を担当させましたので、文句は出ませんわ」

 「……うむ!そうか!詳しくは聞かん」

 「ついでに言うと、我々と似た者ですの。ただ、男性教師ですのでそちらの萌えをたまに供給してやればよろしい」

 「うーん、用意周到〜〜〜」

 

 と、そこへ見目麗しい、20代後半と思しき美青年が来た。

 

 「おっ、お嬢様もう来ていらしたんですね!そちらがソフィー嬢かな?」

 「ルーシュ先生もお早かったですわね。ソフィー、ご紹介するわね。こちらが『歴史文化研究会』顧問の、ソラル家が寄り子ルーシュ伯爵家三男、アルベール=ルーシュ先生ですわ」

 

 ちょっ、ちょっとタンマ。え?この、え?イケメンじゃん?この、うーん、このイケメンが、ヲタク??

 

 「……、あのぉ、ジュリエッタ氏??」

 「ん??……ああ!そうなのよ、このイケメン、私が言うのもアレだけれど、手の施しようがない萌え豚なの。例年学院の御令嬢が儚い想いを散らしているわ」

 「どストレートかよ」

 「お嬢様から今回のお話を頂いた時は天啓だと思ったね。……けど、なんでバレたんだろう」

 「わたくしの嗅覚を舐めないで欲しいものだわ」

 「ああ……、よく分かりました。今後共よろしくお願いします」

 「おや?ふぅん、本当にソフィー嬢は特殊だねぇ。いつもなら僕の見た目に熱を上げる女の子ばかりなのになぁ」

 

 自慢なんだかよく分からん言葉が飛び出した。イケメンだからこそ許される発言であr、あ?いや、やっぱ腹立つわ。ぶん殴っていいかな。

 

 「ちょっと、わたくしのソフィーを馬鹿にしないで頂ける?ソフィー、見せておやりなさい。この男の推しはルーナよ」

 「お嬢様?ソフィー嬢?何を?」

 

 困惑する顧問を尻目に、お怒りのジュリエッタ氏のご希望に沿う為に私はジュリエッタ氏に、この世界の魔法少女系人気作品『プリズムルナリエ』の主人公、ルーナの変身シーンを施す。おいおい、ジュリエッタ氏、いちいちポーズまで完璧だな。

 

 途端上がる奇声。

 

 「!?ふおおおおおおおああああああああああ!!!!!!!!!!動く3次元ルーナたんが!!!!!!!!!!!!目の前に!!!!!!!!!!!!!しかも変身シーンでわないでつか!!!!!!!!!!ソフィー嬢!!!!!!!!!!!!!!!貴女が神でしゅかぁ…………いや本当に神でわ…………??」

 

 エクスクラメーションマークがうるっっっっっせえ。

 手のひらクルックルすぎだなおい、いや待て待て待て跪くな拝むな。

 

 「……うむ、ジュリエッタ氏、よく分かった。先生が大変に残念な事が」

 「一応、これでも魔法電子工学分野を一から開発した、若き英傑ですのよ」

 「開発理由が察せられる」

 「流石ね、お察しの通りよ」

 

 この萌え豚先生はどうやらうちの上位学院、王立ソルフェ研究学院の教授で、総合貴族学院でも週一コマを受け持っているとか。

 ちなみに研究学院とは大学のようなもので、王立ソルフェ研究学院は、前世でいうハーバード大学のような世界屈指の上級学院らしい。まあ、エスカレーターでは無いし、進学するのは領地経営と無縁だったり家の会社に入るよりも学問を志したい子弟や、他の学校を卒業した優秀な人物が受験するらしい。入るのも出るのも難しい、ましてや個人研究室を持つのは余程の才覚が求められる、学院とは名ばかりの最高峰のガチガチの研究機関だとか。

 

 そこの個人研究室を持つ教授様のルーシュ大先生様は、どうやら萌えの熱意でそこまで上り詰めたみたいですわ。

 しかもこんな、会員2名のヲタクによるヲタクの為の同好会の顧問になるほどだものな。ブレなさ過ぎ。

 

 「お嬢様、ソフィー嬢、某にできる事であれば何なりとお申し付けくださいませ」

 

 ……偉い人なんだよなぁ〜??ううーん、なんか、短期間で二人もの、柔らかい場所を曝け出されすぎてる気がしてならない。そんなん胸が締め付けられ、はしないな。

 


 

 と、この時はまだ、予想外の場所から更に大きな爆弾を投下されるとは微塵も予想できなかった。

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