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 気付いたら見た事もないお金持ち学校に私は居た。……ような気分になっていた。


「は?うぎッ……!?」


 ぐえ、頭痛が酷い。気を抜いたら倒れそうなんだが。なんだこれ、うぐ……。!!なるほどな、この脳を圧迫する情報は前世の記憶だ。

 どうやら前の私は知らないうちに死んでいたらしい。そして生まれ変わった先が今の私のようだ。というのを、今思い出したというか、流し込まれているというか。


 私ことソフィー=アンジェ、15歳。見た目は、ピンクブロンドのゆるふわセミロングで、くりくりの大きな蕩けるはちみつ色の瞳、と、田中み○実真っ青のたぬき系可愛いの美少女顔。

 ぶっちゃけ前の私の好みでは無い。前世の私は菜○緒タイプに憧れてた人間だ。

 どこぞの乙女ゲーヒロインの2次元キャラかよって唾吐きそう。


 養護施設に捨てられた時に、名前だけはメモに書かれていたようだが、戸籍は取得しておらず、施設長が申請してくれた。両親への執着も無いので、探すこともしていない。

 まあ、コインロッカーに遺棄されるよりはマシ、なレベルの生い立ち。


 つまり、物心ついた頃には児童養護施設にいて、両親は知らない。私がこの、『王立モンブルヌ総合貴族学院』に入学したのは国からの指示。というのも、この世界には魔法があり、私が世界に稀に見る魔力量を持つからだそうだ。その規模たるや、土地の大きさで日本が3つ位は一つの魔法で滅ぼせるレベルだとか。

 核兵器遥かに超えてる。人一人に与える能力じゃねえよ。

 アメリカを超える領土を持つミュンシュ王国といえど、王都を軽く滅ぼせる私を放っておいてはくれないらしい。確かに在野にそんなのがいたら国にしたら脅威でしかない。囲いたいのも頷ける。

 前世現代と変わらない環境で魔法があり、尚且つ貴族制度もある。しかもどうやら経済圏は貴族財閥が牛耳っているようで、中世貴族よりも貴族の影響力は強いようだ。


 ということは、卒業後の進路は確定しているようなものだ。魔法の扱いを習熟させ、国軍とはいえ示威目的のお抱え傭兵になる。そんなところだろう。個人的にはお先真っ暗である。


 日本での私はそれはもう、ちゃらんぽらんだった。大学は遊び呆けて中退、適当にフリーターをするか、長続きしなければ日雇いでその日暮らし。親に合わせる顔が無い、やる気の無い半ばニート。趣味は特にこれと言って無く、アニメ漫画とか。死因は定かでは無いが、覚えている限り生きる気力がとうとう底をつき、限界まで引きこもっていたから餓死辺りが妥当だろう。


 そんな適当人間が、国に仕える。詰んだでしょコレ。


 つっても、この時点で既にこのお金持ち学校に国の金で入学してしまっているし、死ぬ程嫌いな寮生活も確定してしまっている。

 前世の記憶が戻る前の殊勝な私は、育ての親たる施設長に恩返しの気持ちで、誇れるようにと入学を即決している。

 前世を思い出してしまった今、せめて寮規則が緩めであれと願う他ない。


 なんだか、前世の記憶を思い出した途端、考え方が前の私に引っ張られてるな。今生も言い方を選ばなければ、流されるまま生きてきたから、生きた年数だけで勝る前世の考え方に食われてしまったんだろう。


 割とすぐに脳内で情報が整理されてしまったことだし、門の前でボーッと蹲ってるわけにもいかんわな。門番の屈強なスーツメンズが困惑しているのが目に入った。

 今日は入学式、取り敢えず教室に行かねばならん。クラスは1-Aだとの事なので向かうことにする。


 


 

「施設上がりの平民風情がこのお貴族様学校で友人作れるもんなんかね……。流石に卒業までの5年間ボッチはキツいぞコレ……」


 教室に付いて早々の感想はコレ。

 つーか、この学校マジで煌びやかすぎ。どこぞの宮殿かと思ったわ。格式と伝統ある学校なのだろうが、居心地が素晴らしく悪い。メンタルが底辺30歳なので殊更である。

 教室、なんだよなここは?前方に黒板があるから間違いは無いと思うんだが。それにしたって、授業机はフレンチフルコースが全部乗るくらいでけえし、化粧板にしたって真っ白で綺麗すぎる。机とお揃いの猫脚の椅子は、青いベルベットが使われた肘掛けのある簡易ソファーと間違う座り心地の良さよ。

 しかもなんだこの上等な制服は。見た目はベージュのブレザーに濃緑のベスト、それに濃緑ベースの赤ラインのチェックのプリーツスカートだが、軍に採用されてもおかしくないような防御術式が付与されてる。何故だかそういった事が分かる。確かに以前から、生活魔道具の術式を学んでもいないのに理解できていたから、恐らく才能とやらなんだろう、これが国に目を付けられた訳か。いらねえ。


 そもそも、さっきも言った通り、経済圏を貴族が牛耳っているのは、才能ある平民を国が囲うために貴族に登用するので、金を持っている奴はみんな貴族。貴族学院の名の通り、ここに通うのは貴族の御子息御令嬢方。私みたいなのは例外も良いところ。本当に平民が居ないのである。世界の環境の見た目が現代なのに貴族がいるってだけで脳が沸騰しそうな上、ボッチはキツい。気楽に話せる人間が欲しいのに、叶わない。なんでこの世界にいるんだ私。


 卒業したら私も騎士爵に叙爵されてしまうんだろうか。あんまりである。今生も適当に遊んで早死にしてしまいたいのに。国の規範として生きよ、とか無理筋だわ。


 とかなんとか、適当に最後列に座ってボーッと考えていると、教師らしき人物が入って来た。


「えー、おはようございます。これから入学式ですので、講堂へと移動します」


 私以外、皆知り合い同士で固まっている中、私は最後尾を陣取り教師の先導に合わせて移動を始めた。


 


 その中にソフィーを見つめる視線が2つあったのだが、ソフィーは気付かなかった。


 


 


 入学式で知ったが、同じクラスに王太子殿下がいらっしゃるらしい。だってさ、入学生挨拶をしたの、王太子だった。Aクラスのエリアから立ち上がってた。怖。クラス替えまで近寄らんとこ。一言でも交わしたら不敬罪で斬首されそ。いやまあそんな法律無いけど。でも学生生活常に針の筵は御免被る。

 日本と違って、王政だから政治にゴリゴリに関与してるし、というか、最高決定機関が王だから王族への無礼はどうなるか、火を見るより明らかなわけで。


 ほんまこわ。近寄らんとこ。


 そんな思いを粉々に砕く、担任の言葉。


「Aクラスは、王族を含む高位貴族の子弟が在席する為、クラス替えはありません。例外として、次年度以降、才覚のある者がAクラスへの転属が認められますが、今の在籍者は変わりません。今後国を担う人材としての誇りを胸に、5年間、交流を深めてください」


 はい終わったー。ボッチ確定ー。


 Aクラスって特進クラスみたいな扱いだったのね、はいはい。いや、なんで私をAクラスに入れた!?主観的には嫌がらせに他ならねえぞ!?国滅ぼせる魔力量だからですねぇ!!分かります!!クソが!!!!


 もう、ひっそり、いるんだか分からんレベルで存在感消しとこ。それに優秀じゃ無いって分かれば私を囲う理由にならんでしょ。そしたら例外的にBクラス以下に落とされんじゃね?


 いや、待てよ。魔力量は膨大なんだよな?それを国が座視するのか?もし私が劣等性であれば、私の意思など関係無く、軟禁状態で兵器にされるのでは?いや、優等生でも変わらないのか?あれ?うわ、私、どの道終でわ。人間終了でわ。


 亡命しようかな……。


「それと、Aクラスの皆様は、中間期末テストで30位以内、年度末の全世界統一テストで100位以内を取ってもらう必要があります。達成できなければ補習、それでも成果がなければ留年となります。既にご理解頂いているかと思いますが、Aクラスの場合3度留年となりますと、刑罰対象となりますので、勉学にも励むようお願いいたします」


 は????初耳なんだが????


 考えるのやめたい。

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