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21 絵本を作ったの

 私は、ユウ君に絵本を読み聞かせた。お母さんも一緒に聞いてくれた。ユウ君は、少しだけ悲しい、寂しいと言って、お母さんは、それでも優しいと言った。友人が話と下書きを描いて、私が絵を描いたのだというと、ユウ君はとても驚いていた。お姉ちゃん、こんなに絵がうまかったんだねと褒められて、私は嬉しかった。


 読み聞かせている中で、絵本の話をする中で、鼻の奥が何度もツンとしたけれど、私は泣かなかった。


 お父さんにも、私と友達が作った絵本だと、休日に読んでもらった。お父さんは、何度も私を褒めてくれた。そして、私の友達についても褒めてくれた。


 夏の終わりにいとことも会った。年上のいとこにも、年下のいとこにも、絵本を読んでもらった。みんな、私と友達の合作だと言うととても驚いて、いろんな感想をくれた。

 私は、そのすべてをクサキに届けたいと思ったけれど、きっと私の見えないところで、あの死神さんたちが伝えてくれているって信じていた。あの二人は、ずっと、ずっと気にしてくれているはずだから。



 そして、夏休みの最終週、私はクサキのお父さんに会いに行った。

 クサキのお父さんは、涙をぽろぽろと流しながら、絵本を読んでくれた。私は、大人の人が涙を流すところなんて一度も見たことがなかったからとっても驚いてしまったけれど、最後には、一緒になってわんわんと泣いた。


 大人も子どもも、悲しいことって変わらないんだなって、そんな当たり前のことを、学んだ。

 クサキのお父さんに絵本がほしいかとたずねたけれど、原本だけでいい、と言われたので、私達が作った絵本は私の手元にある。それを、できるだけたくさんの人に見せて、と言われた。クサキとおんなじことを言うんだなと思って、別れ際に、また少しだけ泣いてしまった。




 夏休みが終わって、最初の登校日。私はランドセルに絵本を忍ばせた。まずはまいまいに見てもらおうかな、と考えていた。

 久しぶりに会ったまいまいは、どこか大人びた感じがして、びっくりしてしまった。一か月、勉強をたくさんしたまいまい。私の知らない努力を重ね、ぐっと大人になったのかもしれない。クラスを見渡せば、真っ黒にやけた子や、背がぐんと伸びた子……ぱっと見ただけでも、変化していることがわかる。

 私だけじゃなくて、皆、変わっていってるんだなあと思う。


「ミドリ!」

 まいまいは、私の顔を見て、目を丸くした。

「何か、ちがう!」

「ええ、まいまいこそ。大人っぽくなった」

「そう? 勉強しすぎて老けた」


 舌を突き出すまいまいと、目を合わせてけらけら笑う。久しぶり、この感じ。


「ミドリは、何かあった?」

「んー」


 たくさんあった。

 たくさんのものを得て、大切なものを失った。


「友達がね、できてさ。その子とすぐにお別れしたんだけど、絵本を作ったの。まいまいにも見てほしい」


 私がランドセルから取り出した絵本を見て、わあ、とまいまいが目を輝かせる。


「すごい、すごい! これ、ミドリが作ったの?」

「うん。絵を私が描いた。物語と下書きは、友達が」

「すごい! 後でゆっくり読ませてよ。すごいねミドリ……大変だったでしょう」

「うん、でも、楽しかった」


 いいねえ、とまいまいが絵本の表紙を撫でる。

「すごいね。こうやって頑張ったものがあったら、この先何でも頑張れる気がするね」

「……そうだね」

 私は、ぎゅっと拳を握る。この夏で、いや、ずっと、考えていたこと。

「例えば、合唱祭で、ソロ、するとかね」


 声が少し上ずった。

 でも、言ってやった。言ってやった!


「ソロかあ、四年生のとき以来でしょ? いいと思うなあ」

 四年生のとき、まいまいとは別のクラスだった。

「まいまい、なんでそれを……」

「覚えてたんだよ。綺麗な歌声だったんだもん」


 まいまいが、恥ずかしそうに笑う。


「え、だって、あのとき失敗した」

「え? そうなの?」

「出だしがうまくできなかった……声も小さくて」

「すごいなあ。じゃあ、本当はさらにうまいんだ」


 私の心の奥が、温かく、はずんでいく。


「まいまいー!」

 まいまいに抱きつく。わあー、とまいまいが大げさな叫び声をあげる。





 窓の外から何か音がした気がして、私はふと、視線を向ける。

 そこには何もいなかったけれど、どこかでクサキが笑ったんじゃないかと、そんなことを考える。

 秋晴れの空はとてもきれいで、飛行機雲が、青い空にのびている。




                                              

                                              了


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