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長編お仕事小説 『それでも、火葬場は廻っている』  作者: くさなぎそうし
第二章 一蓮託唱(いちれんたくしょう 住職 夏川 菜月(なつかわ なつき)編
21/74

第二章 一蓮託唱 PART1

  1.



 チリーン、チリーン。


 

 暮れてゆく茜色の空に、風鈴が仄かに揺れ音を奏でる。共鳴した向日葵ひまわりが天に向かう時、人は夏の香りを思い出すだろう。


 風鈴夏残ふうりんかざん、おばあちゃんが作った言葉だ。祖母は住職でありながらも自然を愛し、人を信じる気持ちを忘れなかった尊い人だった。


 この音を聴くと、私は必ず祖母のことを思い出す。



 暑い日に咲く向日葵よりも、


 ひぐらしの鳴く声よりも、


 若葉を運ぶ薫風くんぷうよりも、


 穏やかな雲に揺られるおぼろ月夜よりも――。



 花鳥風月に富んだこの季節を巡っても、最後にはやっぱり祖母に辿り着いてしまう。それはきっと彼女の死に目に会えなかったからだろう。


 おばあちゃんに一目だけでも会いたい、今の私を見て認めて欲しい。



 おばあちゃんが最後に残した言葉の意味を、知りたい――。



 それはもう叶わないことだけど、それでもこの音を聴くと、無意識に縋ってしまう。


 だからこそ私は、祖母に近づくために、不安を覚えながらも釈迦の道を走り続けていく。彼女の道を追いかけて、彼女が見た世界を体感していく。


 もちろん、5年経った今でも辿り着いたとは思えない。一生を掛けても到達できるのかもわからない。


 それでも私はおばあちゃんの思いを知るために、これからもこの道を走り続ける。


 おばあちゃんの最期の言葉・一蓮託唱いちれんたくしょうの意味を知るために――――。

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