第二章 一蓮託唱 PART1
1.
チリーン、チリーン。
暮れてゆく茜色の空に、風鈴が仄かに揺れ音を奏でる。共鳴した向日葵が天に向かう時、人は夏の香りを思い出すだろう。
風鈴夏残、おばあちゃんが作った言葉だ。祖母は住職でありながらも自然を愛し、人を信じる気持ちを忘れなかった尊い人だった。
この音を聴くと、私は必ず祖母のことを思い出す。
暑い日に咲く向日葵よりも、
蜩の鳴く声よりも、
若葉を運ぶ薫風よりも、
穏やかな雲に揺られる朧月夜よりも――。
花鳥風月に富んだこの季節を巡っても、最後にはやっぱり祖母に辿り着いてしまう。それはきっと彼女の死に目に会えなかったからだろう。
おばあちゃんに一目だけでも会いたい、今の私を見て認めて欲しい。
おばあちゃんが最後に残した言葉の意味を、知りたい――。
それはもう叶わないことだけど、それでもこの音を聴くと、無意識に縋ってしまう。
だからこそ私は、祖母に近づくために、不安を覚えながらも釈迦の道を走り続けていく。彼女の道を追いかけて、彼女が見た世界を体感していく。
もちろん、5年経った今でも辿り着いたとは思えない。一生を掛けても到達できるのかもわからない。
それでも私はおばあちゃんの思いを知るために、これからもこの道を走り続ける。
おばあちゃんの最期の言葉・一蓮託唱の意味を知るために――――。




