末路
「娘が、出所を終えました。そして、美弥子さんと会いたいと言っています」
正気かと疑った。まだ終わらないのか。思いっきり悲鳴をあげたかった。
「宜しくお願い致します」
有無を言わせぬ口調と態度は相変わらずだった。抗いきれなかった私も。
そして、みきこが訪れるようになった。
毎日、毎日。娘の部屋の前で、彼女に語り掛け続けた。
「みーちゃん。ダメだよ。いつまでもそんな所で寝てたら」
誰のせいでそうなってると思っている。そう思っているのに、何も出来ない。何も言えない。
「外は気持ちいいよ。ほら、ね?」
「私、全然恨んでないから」
「私のせいだよね。私がみーちゃんの気持ちをちゃんと分かってあげられなかったんだよね」
「だから、あんな事しちゃったんだよね」
「ちょっと痛かっただろうけど、もうそろそろ起きようよ」
「いつまでも、それじゃダメだよ」
「ね、みーちゃんの為にしてあげたんだよ」
「だって、友達だから」
「ね、だから」
「早く」
「出ておいで」
こんな事が毎日続いた。
地獄だ。
罪をずっと念仏のように唱えられ続ける毎日。
ここまでの事をしたのか。娘のやった事は、ここまでの事なのか。
いつになったら、私の気は狂うのだろう。
いつまで正常にいてるのだろう。
もう、許して。
誰のせい。
自業自得。
娘のせい。
ちょっとした恋愛感情如きで。そのせいで。
娘がイジメだなんて、くだらない事をしなければ。
こんなに私は苦しまない。
あんたは寝てるだけだものね。
楽だよね。苦しくないよね。
それで償ってるつもりなの?
それで終わりなの?
一人で勝手に終わらないでよ。
こっちは終わってないのよ。
ねえ。
私ももう、終わっていい?
(終)




