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救えない

「お疲れ様です」

「ああ、お疲れ」


 聴取を終え、喫煙所で一休みしている所に、後輩の横田がやってきた。


「見させて頂きました」


 横田は私に向かって綺麗に礼をする。その礼は勉強させて頂きましたといった意味合いを含んでいる。


「まさに仏の新田さんの真骨頂って感じでしたね」

「やめろ。怒鳴ったりするのが苦手なだけだ」


 それは謙遜でもなんでもなかった。実際に大きな声や怒鳴り声をあげるのは苦手だった。さすがになめた態度を見せる者や凶悪な犯罪者にいつも仏でいれるわけでもない。その時はさすがに厳しい顔を見せるようにするが、大人しい女子高生相手にわざわざそんな表情を見せる必要はないし、そんな事をせずとも彼女は自分から全てを語ってくれた。私はこの聴取において、何もしてなどいなかった。


「しかし……」

「どうした?」


 横田はそこで複雑そうに表情を歪めた。


「イジメってのは、なくらないもんすね」

「ああ、そうだな」


 イジメという言葉が認知され、当たり前のように広まったのは言ってもまだつい最近になってからだ。しかしその内容は年々、陰湿で巧みで凄惨なものになっているように思える。特にネット社会と言われるほど文明が発達するようになってからは、その流れは顕著だ。


「ひどい事をするもんですよね。でも何よりあの子、加害者とは言えなんだかいたたまれませんね」


 どんな事情であれ、犯罪者に肩入れするような言動は慎むべきだが、横田が言わんとしている事は何となく分かる。


『どうして彼女を殴ったんだい?』


 彼女が犯行に至った動機。


『殺すつもりなんて、ありませんでした』


 彼女の気持ちに悪意はあったのだろうか。


『目を覚まして欲しかったんです』


 純粋な、友達への想いなのか。


『私に悪意はありませんでした。みーちゃんを裏切ったつもりもなかった。でも結果、みーちゃんはあんな酷い事をしなければいけないほど歪んでしまった。痛かった。逃げたかった。でも、私が悪かったんです。それに、みーちゃんは友達だから。ちゃんと向き合わなきゃって思ったんです』


 異常なまでの純粋。淀みなく悪意のない純粋な犯行。

 刑事にとってみれば、これほど恐ろしく救いがたいものはない。

 彼女を真に救うのに何が必要なのか。それは罰ではないだろうが、この国の仕組みでは一旦そうするしかない。


「どうなるんでしょうね、彼女」

「……見守るしかねえだろ」


 自分達が彼女に出来る事は、多分何もないだろう。


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