灯虎先生とドキドキディスカッション☆
あとがきは例によってまた後でだ!
「失礼します。灯虎先生に用があってきました」
美稲は、震えそうなか細い声を上げながら職員室の中へ入る。職員室の中は、沢山の先生がいるはずだが中は誰もいないかのように静まり返っている。
「ほぅ、何の用だね」
灯虎先生が笑みを浮かべながらこちらを向く。顔はアンパンマンのような顔なのだが、どこから湧いているかわからない圧迫感と誰に対しても慇懃無礼な口調の為、なぜか誰も逆らうことができない。威厳という言葉を体現したかのような存在なのである。
「えっと、その校内放送の件について。その、いくらなんでもクラシックだけというのはおかしいと思います。どぅか見直しては貰えないでしょうか」
「……ふむ?私は校内放送を打ちとめた訳ではないのだがね」
灯虎先生からは意外な答えが返ってきた。美稲は思わず呆けたような声をあげる。
「へ、先生がダメといったんじゃないんですか」
「いやいや。俺はそんなことは言っていない。ただ、昼のご飯の時に流すには不適切な歌詞が挙げられていたから怒っただけだ。あんなものを流しては学校の風紀が乱れるからなぁ」
「な、なるほど」
美稲は、内心、前田君ご愁傷様と心の中で憐れんだ。どう考えてもロックな曲は無理そうである。
「わかりました。では、校内放送は以前のようにやっていいのですね。」
「あぁ、そうなるな……。」
「わかりました。失礼いたします」
美稲はこの雰囲気から脱出すべく,すぐさま教室の外にでた。
「はぁ……緊張した―」
美稲は威圧感から解放されほっと息を大きく吐いた。
「ほら、うまくいったろ?」
バックの中からな上機嫌な声が聞こえる。
「うーん。それにしても、校内放送自体がとめられていたわけじゃ、なかったね……。何が原因なのかしら……。」
「ふーむ。雰囲気で誤解されてたような気がするが……、一応放送委員会の顧問の先生に聞いてみる必要がありそうだぜ。」
「のむらっちかぁ……。ヘタレだからなんとなく理由も察せるんだけど……。」
放送委員会の野村先生は、教師としては先生から人気のあるほうである。怒る時には怒り、生徒が悲しんでいるときには悲しみ……。そう言う人徳溢れる先生なのだ。ヘタレという弱点を除けば。
「今日の総合の時間、委員会ミーティングだろ?早速行ってみようぜ」
美稲はこくりと頷き、教室へと戻った。それと同時に、美稲の頭の中である一つの疑問が湧き出た。ピアンは、灯虎の先生のことをよく知っているような口ぶりであった。ということは、灯虎先生と知り合いである可能性が高い。また、桜生であるということ。
(ピアンって先生……?)
美稲はふとそう思ったのだ。
―――――――――――――――
「と、いうことでミーティングを始めまーす」
と気だるげな表情を見せているおさげの少女、神田橋は、この委員会の委員長である。彼女はマイクを持つと性格が変わるという噂であるが、1年前に放送を封じられてからは常にこのように気だるげだ。
「えー、とはいっても放送登板を決めたらあとは自由活動ってことでー」
やる気なさげだ。少なくとも委員会活動中彼女がやる気を見せたことはない。
「ロックんロールだ!神田橋!」
前野は小鳥のように小うるさい。
「はぁ」
神田橋は頷く。
「いいか、校則がなんだ。法がなんだ!。俺たちの魂は、肉体は、そんなものに縛られちゃいないだろう。全てをはだけ晒すべきなんだ!」
唐突に前野君が制服を脱ぐ。ボクシング部で鍛え上げられた無駄な筋肉美が教室内に伝播する。
「前野、脱がなくていいから。」
この委員会の担任である野村先生が困った顔をして前野を諫める。
「はい、えー。それでは何か変わったことはありましたかー?放送中に」
美稲が手を上げる。
「えっと、野村先生?今日、ちょっと気になることがあって……。その、灯虎先生に――――」
彼の名前を上げた瞬間、委員会活動中の人間が青い顔をし始めた。そう、彼らは、放送委員会。その活動に入ろうとするものは必然的に目立ちたがりであり、灯虎先生に何かしらの指導を受けたのだ。
「えっと……あの悪魔がなんて?」
前野君が青ざめた顔で美稲に問いかける。その口元は青白く変色して見えたほどだ。
「えっとね……、私ね放送委員会の活動を中止になった理由を聞いたんだけど、放送活動自体は中止になってないって。ノムッチは何を勘違いしたの?」
野村先生はうろたえながら反論する。
「ええっ!だって、俺怒られたし、あの先生のどこから湧いてきたかわかんねぇ威光に逆らえなくて……」
「まぁ、そこはいつものノムッチって感じだな。さてと、じゃあ明日からロックなミュージックをフューチャーしてやるぜぃ」
「あぁ前野は、歌詞があれな者はだめだってさ。」
「くっ!予想はしてたがしかない!放送がまたできるんだったらな!神田橋!」
前野は、神田橋にむけて笑顔のサムズアップをする。神田橋は小さく微笑みながら
「ええ」
と頷いた。
美稲「怖かったぁ……。でも、また放送できるようになってよかった。」
ピアン「だろ?しかもこのことによって新しい魔法が手に入ったみたいだな」
美稲「どんな魔法?」
ピアン「その名も『コンセント』だな!」
美稲「?スマホの充電でもできるようになるの?」
ピアン「んーっとだなちがうぜ!『consent』の方だ。あらゆる契約に対して承認『させる』ことができる呪文だ!」
美稲「えっと使い道は?」
ピアン「それは、いろいろあるとおもうぜ!なんせ、無理やり承認させるんだからな」
美稲「悪い顔してる……。あんたやっぱ、顔に出やすいわね……。」
ピアン「……わるかったな。顔に出やすくて。それに、お前だって普段は猫かぶりじゃねーっか」
美稲「地のままで生きていくよりこっちの方がいいこといっぱいあるしねー」
ピアン「おまえのそういうところ、怖いと思っいってええええ。やめて!引っ張らないでアッー」