異世界で過ごす(1)
00時00分、VRMMORPG、ファンタジアは配信終了となった。
筈だった。
しかし…。
01、02、03…。
ピッ、ピッ、ピッ…。
デジタル時計の秒針の音が絶えず耳に流れてくる。
「終わったはず…。あれ…?」
目を開けるとそこに映っていたのはギルドの中だった。
「どういうことだ?」
あわててカーソルを脳内に投影して探していく。
しかし…。
「ログアウトのボタンがない…!」
それが事実であるならば、僕はこのファンタジアのゲーム世界内で一生過ごしていかなければならない。
そんなことがあるわけがない!
頭では否定していても内心、少しだけ嬉しかったりする。
この世界で生きていくのも悪くはないかな、と。
ログアウトの手段が失われたため、一先ず保留するとしてステータスが気になった。
ファンタジアではプレイヤーはクラスと呼ばれる数千種もある役職を最大10種類選択することができ、一定の条件、経験値を満たすと選択したクラスのランクが上昇しランクアップすることができる。
しかし簡単に複数のクラスがランクアップするわけではない。
一つのクラスだけを設定すれば重点的に上がるが、複数のクラスを設定すると一つの経験値を選んだ数だけ山分けされて経験値が入る。
僕は後者の方だった。
プレイヤーの最大レベルは100でクラスの選択が最大10種類までなのは、そのレベルをクラスの選択数で山分けされるため、複数の方がクラスの最大レベルを少なくすることが出来る(その代わり、中々レベルが上昇しない)。
選択したすべてのクラスを最大レベルまで上げるためにどれほどの時間を費やしたことだろう。
ステータス画面を表示し、アビリティを確認した。
プレイヤー:天
レベル:Lv100/100
クラス:Ⅰ、剣聖Lv10/10
Ⅱ、アークランサーLv10/10
Ⅲ、アークビショップLv10/10
Ⅳ、狂戦士Lv10/10
Ⅴ、ペイルライダーLv10/10
Ⅵ、聖弓士Lv10/10
Ⅶ、始祖屍鬼Lv10/10
Ⅷ、重騎士Lv10/10
Ⅸ、アヴェンジャーLv10/10
Ⅹ、聖術士Lv10/10
よかった、ステータスなどは当時のままだ。
ホッと一息ついたはいいが、問題はこの世界にいる人々やモンスター達の強さである。
これだけ高いステータスを持っていても相手がそれ以上の強さを持っていたらそれで終わりである。
時間は00時30分になっていた。
「今日は寝よう。」
そう呟くと、僕は装備を「村人の服」に変更してベッドに入り一夜を過ごした。