ヒミカ
「本当にお前じゃないんだろうな? ヒミカ」
「だから違うって言ってるじゃない。マカ」
アタシはうんざりしていた。
ソウマの店に呼び出されて早一時間。
ぬるくなったハーブティーを一口すすって、もう一度繰り返した。
「何度も言ってるケド、アタシじゃない。信じろとは言わないけど、いい加減にしてほしい」
「…いい度胸だな。じゃあ心当りはないのか?」
マカはテーブルの上に置いていた新聞紙や雑誌を、指で叩いた。
彼女もいい加減、イライラしている。
「まぁまぁ、二人とも。お代わりが何が良いですか?」
「冷たい緑茶」
「今度はコーヒー、ミルクだけ入れて」
「はい」
差し出されたコップを二つ、ソウマは笑顔で受け取った。
しかしマカは大皿を更に差し出す。
「あと茶菓子も追加で」
「はいはい」
皿の上に山盛りになっていたチョコレートとクッキー、スコーンはすでに影も形も無い。
「それで?」
「何よ?」
「こ・こ・ろ・あ・た・り・だ」
…区切りやがった。
「まあ無くはないけど…。もし当たっていたら、アタシにこの件、任せてくれる?」
「お前にか? …フム」
偉そうな態度を取る年下の女の子。
でも実際、ウチの血族の次期当主。
権力は彼女の方が上だ。