Song of lost future -小鳥は歌わない-
名前を持たない少年はある日、歌姫という一族の当主に拾われた。
彼には名前がない。──いや、彼自身は知っているのかもしれない。けれども、彼は何も語らない。彼の言の葉は重すぎるから。
「あの人が死んだらいいのに」
彼が言えば、その人は死ぬ。
「これが欲しい」
彼が言えば、誰のものでも次の瞬間には彼の手に。
世界なんて滅んでしまえ、と彼が言えば、瞬く間に滅亡が訪れるだろう。
彼はそんな力を持っていた。
だから、口を固く閉ざし、何も語らなくなった。
そんな少年の自身を知り、歌姫の当主は彼を自分の娘と引き合わせた。
娘の名はカナリア。
目が見えず、足の動かない、けれど歌うとき誰よりも輝く少女だった。
I believe in future
時を掴まえて
I'm leading future
舞い上がれ
それでも僕は君を信じてる
So,I exist for you
守るから
小鳥はさえずりを忘れて
少年は言葉を封じた
歌わない 歌えない
救われぬ思い 抱え
自由な歌鳥に出会った
彼女のさえずりは
言の葉を揺らし
人を癒す
少年《歌えない鳥》は憧れた
これは彼女がくれた言の葉
少年は歌えないけれど
ずっと
抱えている。
私は未来を信じてる《I believe in future》
時を掴まえて
私は未来を導いていく《I'm leading future》
舞い上がれ
それでも僕は君を信じてる
だから、僕は君のために在り続けるよ《So,I exist for you》
守るから──
言の葉の使えぬ自分は、どうしたら彼女を支えられるだろう?
──守る。
側にいて、少女を守る。それしかない。
だから少年は口にした。
「君をずっと、守り抜く」──と。