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紫露草

 文学フリマ短編小説賞応募作品、「紫露草」イメージソング。


紫露草の大まかなあらすじ。


 生命学という生命を一から作り出すという一見無謀に見える研究を礎に国の傘下で研究を行う研究室。

 そんな室長に選ばれたのは、生命学の祖と言われ、誰からも羨望の眼差しを向けられるような天才科学者、エリサ・クリスティ。

 そんな天才の助手に選ばれたのは、生命学を学び始めたばかりのひよっこ中のひよっこ、トウル・ワトソン。選ばれた理由は「ワトソンくんって助手っぽい名前だろう?」というもの。

 そんな理由で選ばれたトウルへの周りの当たりは強く、嫌がらせなど日常茶飯事。その上、エリサの助手となってから、科学者ならではのエリサの奔放ぶりに振り回される毎日。

 けれど、研究に熱心に打ち込む姿にトウルはいつしかエリサに惹かれていた。

 けれど、「尊敬だが愛していない」という言葉を持つ紫露草を渡して、トウルは自分の気持ちを誤魔化す。

 何せ、生命学界において、エリサは雲上人のような存在だ。助手とはいえ、こんなひよっこが釣り合うわけがない、とトウルは諦めていた。


※あとがきにはネタバレあり※


紫露草 花言葉


「おはようございます」

職場にはいつも通りの上司

「いい加減寝てくださいよ。家に送りますから」

その人がむずがるだけなら可愛いもんです


依頼片付け、無理矢理引きずって車に乗せる

海辺を走る天気のいい夜のこと


「月が綺麗ですね」って呟いたところ

「海が綺麗ですね」って返されて

悪戯に笑うその頬つねって引っ張った

「尊敬ですが愛してない」

そうなんだとわかっている

まさかあの人が僕を思うわけないから




「おはようございます」

職場にはいつも通りの上司

「また徹夜したんですか。もうほぼここ住居ですよね」

目の下の隈を見やりながら珈琲を淹れる

何もない朝

昼間が波乱に満ちてるけど


依頼失敗 国家機密作戦逆手に取って

依頼主手玉に取る姿は紫露草


「星が綺麗ですね」って呟いた夜に

「月が綺麗ですね」って返されて

まるでわかってないのは僕の方だったってことだ

紫露草 立ち枯れて

青い桜並木に出た

「桜綺麗ですね」って季節外れに誤魔化した




憂鬱な会合 依頼主との打ち合わせ

人目を忍んで入れられた薬

そのカップはあの人のだ──!




「星が綺麗ですね」って呟いてみると

「月が綺麗ですね」って返されて

まるでわかってないのは僕の方だったってわけで

紫露草 枯れ落ちて

あの人の珈琲 飲み干した

そこには露草から落ちた色が沈んでいて






「星が綺麗ですね」って綴られたノート

「月が綺麗ですね」って見つけて

あまりのすれ違いに気づいて空笑う



 一方エリサは。

 エリサがトウルを選んだ理由は、トウルに言った通り、「ワトソンって助手っぽい」というものだったが、ひよっこながらに研究熱心で、気配りができて、嫌がらせにも文句一つこぼさず、自分が無力なせいだ、と自分に厳しく叱咤する。その姿にいつの間にか、焦がれていた。

 エリサはトウルを選んだことは間違いじゃないと思っている。本人は気づいていないようだが、エリサには勿体ないと思えるほど気端が回ってよく出来る人物なのだ。

 そんな彼の行動の端々に、愛しさを感じずにはいられなかった。

「ワトソンくん以外を助手にするつもりなんてないね」

「海が綺麗ですね」

 どんなに言葉を尽くしても、彼は自分を卑下するばかり。もうちょっと胸を張ってほしい。この想いにも、気づいてほしい。

 けれどエリサも臆病で、遠回しにしか気持ちを伝えられない──




そんなもどかしい両片想いの悲恋小説。

詳細が気になる方はぜひ「紫露草」をお読みください。


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