夕べに明日明くる
文学フリマ短編小説賞応募作品「亡国の歌姫と琴の騎士」より、姫の好きな祖国の歌。
夕暮れになると城の広間から国中に夕刻を告げる歌が響き渡る。
その歌こそ"夕べに明日明くる"。国歌と並び、国民に愛される王国の歌である。
一の詩は夕暮れ刻の空の中啼きながら飛んでいく烏に、明日も同じように平和な日々が訪れるか問う。
二の詩では、夜が明けて、澄み渡る空を舞う白鷺に同じことを問うが、言葉を持たぬ鳥が答えることなどできるはずもない。それは人が自ら考えることなのだということを示す。
そして、その先は──
(姫君)
夕べに沈む夕日が
今日の空と重なる
(二人)
明日も同じ色だろうか
(姫君)
声 枯らし啼く烏に
静かに問いかけてみる
(騎士)
明けて昇りし日の向こう
今日の空も青しと
(二人)
明日も同じ色だろうか
(騎士)
知らずに飛び交う白鷺
答え得るはずもなく
(二人)
明日明くる 明日明くる
(姫君)
貴方の許へ
(二人)
明日明くる 明日明くる
(騎士)
誰しも夢見る
(騎士)
夕べに沈む夕日は
郷の空と重なる
(二人)
明日も同じ色だろうか
(姫君)
声 枯らし啼く烏は
静かに遠い過去を見る
亡国の歌姫と琴の騎士
劇中歌
"夕べに明日明くる"
さて、この歌では様々な言葉遊びがされています。この歌単体でも楽しめる言葉遊びですが、本編「亡国の歌姫と琴の騎士」と併せて読んでいただくと、尚のことお楽しみいただけますので、本編もよろしくお願いいたします。
ここで謎解きのヒントをいくつか。
・"鳥"に注目してください。この歌の中には鳥が三羽隠れています。
・"夕べ"は夕方を表す雅的表現です。
・タイトル自体も言葉遊びです。
・早口言葉。
こんなところですかね。
何かわかった方、答えを知りたい方は私、九JACKまで。
「亡国の歌姫と琴の騎士」あらすじ
西の塔には、歌声を呪われた姫がいます。姫の歌を聴いた者は皆、死んでしまうのです──
近くの村にいた老人の親切な忠告を無視し、琴を片手に西の塔に向かった少年がいた。騎士のように立派な鎧に身を包んでいるものの、武器らしい武器は一切なく、持ち物は琴だけ。そんな奇妙な少年が姫と出会ったとき、終わらなかった物語が動き出す。
ジャンル:ハイファンタジー
是非、読んでみてください。




