これが、僕の精いっぱい
全てではないけれど
僕は思いつく限りの言の葉を紡いで、消えてゆきたいと願います。
僕が紡いでいた拙い言の葉を汲み取ってくれてありがとう。
決して本当の意味を理解されないとしても、書き記すものというのはそういうものだから。
そういうもだからこそ、僕は救いを求めた。
僕は暗闇ばかりを見て、その外に様々な色があることを知りながら、暗闇の中にいて、けれど外の色に焦がれて、僕は外を見たけれど
僕には眩し過ぎた。
眩し過ぎたんだよ。
出会った君も、君たちも、君に紡いだ言の葉も
僕にはどうしようもなく、苦しくて、やっぱり心は暗闇を求めて
馬鹿だった。
僕は馬鹿だったんだよ。
その事実を改めて突き付けられて、僕は勝手に傷ついて、
馬鹿みたいに蒼い空を見上げたんだ。
でもやっぱり太陽は眩しくて、僕には直視できなくて
僕は僕の紡いだ言の葉たちに懺悔とも言えぬ懺悔を述べながら、
それでも出会いに感謝する自分の偽善に吐き気を催しながら、
自ら全てを絶つ気概もないまま、暗闇に消えていくんだ。
誰も傷つかなければいいな
必ず誰かが傷つく僕の最後の物語を書いて、僕は世界に帰っていくんだ。
崩壊の待つ、僕の世界へ。
理解しなくていいよ。
これは罰だから
自分勝手に生きてきた罰だから
君がどうか、泣かないでいてくれると嬉しいな。
僕には過ぎた願いだけれど。
ねぇ、これは遺書のようだと思う?
まあ、僕が別の世界に行って、この世界に遺していく手紙だから、これは遺書で間違いないんだけどさ。
僕は
僕は最後に、
本当に書きたかったことを書いて生きたかった。
でも、僕にはもうわからないんだ
この世界でどう生きたらいいのか
どう言葉を紡げばいいのか
今まで、息をするように、様々な物語を書き綴ってきたんだよ?
でも、なんだか急に虚しくなって
"僕"という存在がわからなくなって
どうすればいいのか、わからなくなった。
僕には僕の世界がある。
君には君の世界がある。
生きとし生けるものたちには、各々の物語があって、それを自分なりに綴っていくことが、生きる意味だと思っていた。
でもそれは、自分という存在に価値を見出だせてこそできることなんだ。
僕は"僕という存在がわからなくなった。
もう、僕は"僕"だけの世界でしか生きられないんだよ。
だからね、お別れの言の葉を紡ぎに来たんだ。
蒼穹の果てに辿り着いた先
君のいない僕の世界ただ終わりを待つだけ
真っ直ぐな空に唱えた願いは届くことなく、消えていく
そう、知っている。
それなのに……
僕はもう随分と運命とやらに振り回された
僕の運命は青空に消えていくためにある
君に出会わなきゃ、よかったと後悔したよ
僕は君に依存して、
青空に辿り着けない!
蒼穹の果てに辿り着く先は
君のいない世界の果て、そうだと思っていたよ
けど、それは違う……
僕は気づいたんだ
蒼穹の果てに消えたのは僕だったんだと
紅い世界に消えたかった
その願いももう、遅いけど
どうせ僕は一人だから、構いやしない。
誰もいないさ
なげやりになっているつもりなんてこれぽっちもないよ
僕はただ
僕が今
一人なのが虚しいだけ
誰かこの蒼穹を埋め尽くしてほしい
雲でもいい
星でもいい
僕に空、見せないで
好きだったんだよ……
全て過去だけど。
一人零した言葉は誰にも届かない。
知ってる
僕は一人だから。
最初から一人だから、それを望んだから
蒼い蒼い空を見上げるなんてできない!
だから僕は紅い夕闇に消えることにしたんだよ。
蒼穹の果てに存在するのは
僕の望む世界じゃなく、紅い日暮れの色で
蒼穹はいつも、見送るばかりで
君とともに世界の彼方へ遠ざかってゆく……
ねぇ、僕はどうして此処にいるのかな?
君はどうしてこんなにも遠いのかな?
どうして世界はこんなにも狭くて広いのかな?
僕の手は、蒼穹に、君に届かないよ。
日暮れの炎に燃え尽きて、真っ暗な闇に飲まれていく
星一つない、雲の覆う空
けれどこれは僕が望んだことなんだ。
理解されなくていい。
僕は沈んでいくんだ。
蒼穹の果てに
君を求めた罰に
一人を好んでいた僕が、友を求めてしまった罰に
僕は沈んでいくんだ。
壊れて、ばらばらになって、結局、哀れみばかりが憑き纏う最後で
僕は紅い陽に沈んでいく。
心を抉る黄色が射す、オレンジの花の景色に沈んでいくんだ。
運命の輪はそういう風に回っている。
それをきっと輪廻と呼ぶ。
希望も夢も他人に託して
巡りめく世界の崩壊を
僕という世界の崩壊を、僕は受け入れよう
そして僕は籠の中から出られる
悪の実をかじって、僕は堕ちていくことを選んだ
かみさま、ごめんなさい
僕は夢を見つけられなかった。
ごめんね、夢を見つけるために描いた物語。
僕は君たちを巡り続ける世界から助けられても、君たちを生かすことができなかった。
ごめんね、幸せな世界を与えられなくて。
僕は僕の衝動を君たちの想いで書き消そうと君たちを利用した。
ごめんね、君たちの恋を傷つけて。
特別であることに憧れて、君たちの友情を傷つけようとした。
ごめんね、どうか幸せに。
僕は僕の中で弔えないものを言葉で飾り立てて、君に押し付けた。
ごめんね、一時でも、君を、君の大切な人を傷つけて。
君たちにはいつも辛い役割を与えてしまっていたね。少しの幸福を君たちに与えられたならいいのだけれど。
ごめんね、言い訳ばかりで。
傷だらけで穴だらけの物語を綴ってしまった君たちに、僕は頭を下げことしかできない。
ごめんね、でもどうか、生きて。
君たちは僕の不行き届きで沢山傷つけてしまったね。
ごめんね、でも僕はもう、君たちの運命を変えられないかもしれない。
君たちには、思い入れがあるとか言っておいて、物語を綴れずにいたね。
ごめんね、君たちがまた巡り会うことを祈ることしか、できない。
救われず、報われない運命を背負わせてしまった君には、なんと言ったらいいのか……
ごめんね、それくらいしか、謝罪の言葉が浮かばない。
君たちの物語は半端で止まってしまったね。夢は最初から僕も知っていたのに。
ごめんね、いつか君の本当の夢が叶うと信じているよ。
辛い思い出を忘れられて死んで生きている君が僕は少し羨ましい。
ごめんね、君がいつか思い出したとき、最善の選択ができるから。
勢いばかりで描いてきた君たちを僕は蔑ろにしているつもりはないよ。
ごめんね、それなのに言葉は一纏めで。でも僕は少しだけ、君たちの存在に救われていたんだ。
君とは、言葉を交わせないね。
ごめんね、結局僕には君の気持ちを書ききれなかった。本当に好きなのに、ごめん。
最後に、正しくも、間違ってもいない道を歩む君たちへ。
ごめんね、謝ることは沢山もある。最後まで君たちの行く先を書かないこと、君たちの行き着く先が結局救われない君たちは結局、残酷な運命にしか辿り着けない。
懺悔しても足りない。
僕の業は深く、罪は多くを抉った。
だから、僕は僕に罰を課す。
それが少しでも償いになればいいと思う。
それが譬、僕だけの思い込みでも。




