哀切の歌
銀の森と呼ばれる場所に住む絶唱姫ミクという吸血鬼の少女がいた。
歌声は、彼女のもの。
しかし、その声はシュウにしか聞こえない。何故なら彼女の体は森の湖の水底に眠っているから。
彼女は魂で歌う少女。その歌は彼女自身が吸血鬼であるにも関わらず、吸血鬼を祓う力を持っていた。
だがそれゆえに、彼女は歌うこと以外許されなかった。歌い続けていなければ、彼女は生きていられない。歌うのをやめれば、彼女は吸血鬼に殺されてしまうのだ。
そんな彼女が、世界の創造主、メアの力を借りてまで、シュウと話すことを望んだ。
彼女は、シュウにただ一言、願った──
Don't you need my hand?
この広い空の下
君は今 何を見ているの?
寂しい顔をしないで
Don't you need my heart?
この手に掴まって
君には今
聞こえていますか?
私の声
届いていますか?
Don't you need my hand?
本当に必要なのは
私じゃない
君の方なんだ!
Uh...
どうか願いを叶えて!
Don't you need my mind?
この手を振り払っても
追いかけていくから
絶唱姫 ミク
第一楽章 「哀切の歌」
「どうか、お願い」
「私の祈りが、貴方に届きますように」
「貴方を救いますように」
「私の勝手な願いを聞いてくれる貴方に──」
ミクの願いを聞いたシュウは決意する。
少女の願いのために戦うことを。
双銃"銀の茨の蔦"を手に、襲いくる吸血鬼に少年は立ち向かう──
運命の戦いの火蓋が切って落とされた。
第二部へ続く。




