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異世界の勇者とかほんと迷惑だから帰ってくんない!?⑤

L・O・V・E、クソビッチ! ぎゃぽぉ!

     *


「おい、アシュ! いるかー?」


 大鉄扉(だいてっぴ)を叩きながら声をかけるが返事はない。

 魔王城最下層。回廊から何度も石造りの階段を下り、牢獄よりもさらに地下。階上よりも少々肌寒い。


「いねえのか? おい、開けるぞ!」

「ちょ、ちょっと、勝手に入っていいの? 魔王ってアンタよりはるかに強くて怖いやつなんでしょ?」


 マリカが不安げな声でおれを見上げてきた。


「いいんだよ。まだ怖くないから」

「まだ?」

「そのうちわかる。どっちみち、おれは魔王からこの部屋の出入りの自由をゆるされてる」


 正確には魔王のバスルームへの出入りをだ。もちろん、あれ以来浸かりに来たことはないけれど。

 おれは両腕に力を込めて、大鉄扉を押す。


「む、う?」


 ぎっ……。

 わずかに軋み音がしただけで、大鉄扉はびくともしない。鍵らしきものは見当たらないというのに。


「こんなに重いのか。アシュのやつ、腐っても魔王だな」


 おれは両手に魔力を宿し、もう一度大鉄扉を押した。今度は重い音を立てながら、ゆっくりと開いてゆく。


「ぬ、ぐぎぃ!」


 これは驚いた。

 シエルがアシュであるときは、てっきり魔力操作などできないものだと侮っていた。だが、この扉はよほどの怪力か魔力を込めた腕でなければぴくりとも動かない。それこそ正統血統の勇者が押してもだ。

 アシュめ、無意識に魔力操作をしてやがるな。


「んがぁ!」


 勢いよく大鉄扉を開くと、アシュがわずかに開けたときとは違って二枚の扉が室内の壁面に固定された。おれは両膝に両手をついて、乱れた息を整える。


「ぶはっ、重てえ!」

「な、何よ、この部屋……」


 おれより先に室内に歩を進めたマリカが、部屋中を見渡して感嘆の声を上げた。

 はるか上空、天井が霞むほどの高さにまで壁中に立てかけられている本棚には、あいかわらず本がぎっしりと並べられており、机や椅子、ベッドに至るまで人類の発想するキングサイズというものを一足飛びで凌駕する大きさだ。


「ま、魔王ってこんな肉体サイズなのっ!? ミノタウロスよりでかいじゃん!」

「そいつは先代魔王ヴィケルカールのサイズだ。今の魔王はそうでもない」


 それどころか、おれの半分程度の大きさしかないのだが。


「いねえなあ。寝てるのかもしれないと思ったが」


 この広大な魔王城でアシュを捜すのはなかなかに困難だ。

 おれは頭を掻いて、ため息をついた。

 残念なような、安心したような、複雑な気分だ。

 勝手に蔵書を漁ったら、さすがに怒るだろうか。やはり一声かけてからにするか。


「出直すぞ、マリカ」


 そう言いながら振り返ると、マリカはすでに本棚から何冊もの本を引っ張り出していた。


「おい、勝手に触るなって」

「うわっ、ええ! どうしてこんなものがこの世界にあるの!?」


 マリカが手に取っていたのは異世界の書物だった。


「読めるのか?」

「読めるよ。だって日本語だもん。アタシの国の文字だし。うわ~、これなんてアタシがまだ日本にいた頃に出版された異世界召喚モノじゃん。まだ読んでなかったんだよね」

「なに!? それを読めば異世界召喚の魔法術式がわかるのか!?」


 マリカが眉をひそめて首を傾げた。


「何言ってんの? たかがラノベにそんなもん書かれてるわけないでしょうが」

「らのべ? なんだそれは?」

「あ~、えーっと、比較的若い人が読む大衆文学って言えばいいのかな? そんな大層な中身のない、楽しむためだけを目的として作られた小説だよ」

「物語か。要するに、それを読んでも帰れんということか」


 マリカが肩をすくめて、ラノベとやらを本棚に戻した。


「まー、こんなもんで異世界と現世を行き来できるなら、日本からこの大陸には山っほど自称勇者がやってきてると思うよ。だいぶ性格は偏るだろうけどさ」

「なんだ、ニホンって世界は勇者になれるほどの人材が逃げ出したくなるくらい居心地が悪いのか?」

「人によってはね。受験とか学校とか会社とか色々あるからね。その証拠に、異世界に逃げたいって考える大衆が多いから、異世界召喚とか異世界転生なんて物語が流行したんだよ。ほら、この本もそう。これも。これも。ほとんどが二〇一五年出版ね。他の本棚には古いのもあるかも。へえ、純文学もあるのか。こっちは古文だ。医学書に辞典、なんでもありね。国立図書館並じゃん」


 しばらくして、取ってつけたようにマリカが呟いた。


「ま、アタシはそれでも帰りたいけどね」

「そういう物語を読んでいた時点で、おまえもニホンから逃げたかったんじゃないのか?」

「うーん、昔はそうだったんだけどなあ。結構堪能したし、もういいかなって。日本にはお父さんやお母さんもいるし、死んじゃったら結局どこにいたって終わりじゃん? いひひ!」


 それは是非とも帰してやりたいところだ。

 うちの家庭がこんなだからこそ、そう思った。なんだか不思議なことに、今はセラトニア家よりも魔王軍が家族のように思えている。

 ふと気づく。

 だとしたら、おれはセラトニアに帰れたとしても、今度は魔王城が恋しくなるのだろうか。


「無事に帰れたら、ただで異世界旅行できたと思って想い出にするよ。たぶん、魔法とかは使えなくなるんだろうなあ」

「そうか」

「そうだよ? 日本には魔法って概念自体がないかんね」


 短い沈黙のあと、マリカが少し頬を染めて小さく呟く。


「話してるときのアルカンはさあ、優しい顔してんね。さっき畑で魔物たちの農業のことを話してたときもそう思った。なんだかんだ言っても、アルカンは敵も味方も誰も見捨てられないでしょ。だからこんなところでこんな苦労ばっか背負ってるんだよ」


 マリカが後ろ手を組んで、楽しそうに笑った。


「おまえ、調子いいぞ。最初おれのことを魔物扱いしてやがったクセに」

「うん。でも、アルカンの言う通りだった。話して見なきゃなんにもわかんない。アルカンとも、もしかしたら魔王ともそうなのかも?」


 いや、魔王シエルの人類侵攻を止めるには、もはや話す以外に方法がないからやっているだけなのだが。

 時々正気に戻って、おれは自分が何をやっているのかわからなくなる。


「まあいいさ。たぶん魔王のやつはそこらへんを徘徊してると思うから適当に捜すか」

「はーい」


 そう言って魔王の部屋の大鉄扉をくぐり、石の上り階段へと足を踏み出した直後、階段を下ってくる足音が響いてきた。


「あら、アルカン?」

「リリンか」


 花びらのようなスカートを揺らしながら階段を下ってきたリリンが、おれたちの前でぴたりと足を止めた。

 リリンが切れ長の瞳でマリカを一瞥すると、マリカが大慌てでおれの背中に隠れる。

 何やらものすごく脅えている。


「勇者、出してあげたんだ?」

「まあ、危険はねえからな」

「ふうん。アルカンが言うならそうなのかもしれないわね」


 リリンが階段を下りながら近づいてきて、おれの背中に隠れていた勇者に顔を近づけた。マリカが大慌てで唇を隠して、おれの背後から前へと回り込んできた。


「ひ――っ、アタ、アタシ、そっちの気はナイデスカラネ!」

「ふうん? ふふ、赤くなってるわよ? もしかして気持ちよかったの?」


 長い金髪を揺らして、リリンがまたマリカに顔を近づける。


「そ!? そんなわけないじゃない! ちょ、ちょっと、来ないでよ!」


 どうやら唇を奪われたことが相当ショックだったらしい。あの光景はおれ自身にとっても相当衝撃的だったけれども。

 優雅におれの周囲を回るリリンから逃れるために、マリカがドタバタとおれの周りを走り回る。

 鬱陶しいぞ。


「リリン、アシュに用でもあったのか? この先には魔王の部屋しかないぞ」


 リリンが足を止めて、おれを見上げた。


「いいえ。魔王城のまだ行ったことがない場所を歩いていただけよ。アルカンは?」

「アシュを訪ねてきたんだが、いなかった。あいつめ、どこをほっつき歩いてんだか」

「魔王様ならあなたの部屋の前でウロウロしていたわよ。扉に耳をあてたり、床との隙間から覗こうとしたり、不審な動きをしていたわ」


 なぬ!? あいつめ、またこっそりベッドの下に忍び込むつもりじゃあるまいな!

 だめだ。想像したら怖い。


「わかった。ありがとう。行ってみるよ」

「どういたしまして。…………ああ、アルカン」


 去りかけたおれとマリカが同時に振り返った。


「……浮気はだめよ?」


 リリンが唇の前に指を立て、静かに微笑む。


「――ッ!?」

「え!? 嘘! ア、アンタまさか……こ、このヘンタイ純魔と……!」


 あわてて否定しかけて、かろうじて言葉を呑む。

 もしかしたら何かしらの意図があるのかもしれないが、リリンがおれを特別な人と思ってくれているのだとしたら否定だけは絶対にだめだ。それくらいのことは恋愛経験のないおれにだってわかる。


「おれが勇者なんかとどうこうなるわけねえだろ」

「ゆ、勇者……なんか……」


 なぜかショックを受けたらしいマリカの呟きを黙殺し、リリンが目を丸くして首を傾げた。


「何を言っているの。魔王様とよ」

「バ――ッ!? も、もっとあり得ねえでしょうがっ!? まったくもってあり得ねえっ!」


 リリンが数秒間おれの目を見つめてから、少しだけ唇を尖らせて小さく呟く。


「ふうん。そう?」

「あたりまえだっ」


 また見つめ合う。

 マリカがおれとリリンの間に入って、両手を広げた。


「ちょ、ちょっとちょっと! アタシは数にも入っていないわけ? それって女としては結構ショックなんですけど!」


 おれとリリンの視線が、同時にマリカに向けられた。


「なんだおまえ、おれのこと好きなの?」

「そ、そんなわけないでしょうがッ!!」


 食ってかかったクセに、なぜかマリカが即否定をした。


「そうじゃなくて! 話の流れ的に、今アタシのことを相当ないがしろにしてたじゃん!」


 リリンが困った子供でも見るかのように、半笑いで視線を向ける。


「あなたは好きにしたらいいと思うわ。アルカンもコレとなら遊んでもいいわよ」

「ソレはない」

「指さすな! あと、ヒトのことをアレコレソレコレゆーなぁぁ!」


 またすごい表情でおれたちを睨みつけている。異世界の女は騒々しい。


「まあ、行くか」

「早く行こ、アルカン! こいつ嫌い!」


 マリカがまたおれの腕に両腕を絡めた。


「お、おい」


 それでもリリンの表情にはさしたる変化もなく、おれたちに小さく手を振っている。

 ほんとにマリカに対してはなんの警戒もしていないようだ。マリカはそれが気に入らないらしく、おれを強引に引っ張って足早に石階段を上がり始めた。

 振り返ると、リリンは何事かを思案するように口元に手をあて、おれたちとは反対方向、つまり魔王の部屋へと続く大鉄扉に視線を向けていた。


「アンタほんと何してんの! あんなのと付き合っちゃだめでしょ!」

「あ、ああ。いや、別に付き合ってないぞ?」


 微妙な関係だ。おれは惚れているが、リリンはどうだかわからない。


「あいつ、さっき浮気って言ってたじゃん」

「からかわれただけなんじゃねえの? おれがじゃなくて、おまえが」

「う~~~っ、ますますムカつく! ちょっと金色のさらさらストレートで超美少女でおっぱいが大きくて腰が細くてお尻の形が綺麗で足が長いからって調子乗ってんじゃないわよ!」

「すげえベタ褒めだな。概ね同意だが」

「くっ、キスがうまいからってなんだってのよ! なんなのよ、あの舌の動きは!」

「うまかったのか?」

「え? あんなに仲良さそうなのに、アンタ、あいつとしたことないの? やっぱり遊ばれてるんじゃない?」

「やめろ。不安になる」


 いくつかの階段を上がりきり、いつもの回廊へと出る。

 昼間に活動する魔物らの足音や話し声が響いている。おれたちが回廊を歩くと、一斉に黙り込んで視線を向けてきた。


「うっわ~……居心地わる~……。アタシ、めっちゃ睨まれてない……?」

「まあ、本来なら敵同士だからな。我慢しろ」


 おれも本来は敵なのだが。むしろおれが一年前に大暴れしたことが原因で、かなりの魔物が勇者というものに恐怖を抱くようになってしまった。

 新しい厨房の前を通りかかったとき、ゴブ蔵が仲間のゴブリン族を連れて、ちょうど扉から出てきた。


「ア、アニ――ぴいぃ! ゆ、ゆゆゆゆう勇者ぎゃわあああぁぁぁ!?」


 飛び退いたゴブ蔵の背中に押されて、扉をくぐろうとしていたゴブリン族たちが次々とすっ転んでゆく。なんか見ていておもしろい。

 ゴブリン族はもはやパニック状態で、全員一丸となって尻をついたまま後退りをし、どうにか厨房内に戻ろうとして十体ほどが入口に挟まってしまっている。一体たりともなかに逃げ込めていないあたりに、種族の知能限界を垣間見れた気がした。

 どいつもこいつも泣きながら口々に「マジどくッス」「ミニマム落ち着くス」「殺されるッス」「地の果てまでチョー逃げるス」「殺戮パーリーの始まりス」などと、よくわからんことを喚いている。


 だが、たった一体だけが腰を抜かしながらも両手を懸命に広げて牙を剥き、逃げる仲間を守ろうとしていた。

 長としての矜持か。勇者を見て逃げ出してしまったことへの償いか。

 腰は抜かしたままでも、なかなかどうして立派な覚悟だ。


「ゴブ蔵、大丈夫だ。武器は取り上げたし危険はねえよ。こいつにはもう戦う気もねえしな。――そうだろ、マリカ?」

「ま、まあ……。アンタたちが突然襲ってきたりしなければ……」


 マリカが居心地悪そうに後ろ手を組んで呟く。けれどゴブ蔵のほうは、涙目でマリカを睨みつけたままだ。

 オークどもの性欲はさておき、すぐに仲よくしろと言ったところで難しいのはわかる。だが、マリカはおれと同じ種族でゴブ蔵はもはやおれの友人だ。

 両者が殺し合うところなんて見たくはない。

 おれはマリカとゴブ蔵の間に入って、腰を抜かしたゴブ蔵の視線の高さに合わせてしゃがみ込む。


「聞いてるか?」

「お、あ、へい! マジ聞こえまくってるッス! 頭ンなかでチョーがん~がん鳴ってるくらいバリクソ聞こえてるッスよ! 聞こえすぎっしょ! ヨー! マジ聞こえすぎっしょ?」

「落ち着け。そこは普通の音量でいいが、マリカにケンカを売るんじゃないぞ?」

「ケッ、アニキがそう言うならあっしらからはマジ売りませんがぁ? そちらさんが売るってーなら、ま~いつでも買ってやりまスよぉ? うぇ~い!」


 なぜかハイタッチを求められたので、おれはゴブ蔵の手を叩いた。


「じゃあアタシから売るわ。なんかアンタら言葉遣いムカつくし」


 マリカが冷たい視線を向けて言い放つと、ゴブ蔵が白目を剥いて悲鳴を上げた。


「ピキャァァァァーーーーーーーーーーーっ!? レッツ殺戮パァァーリィィー!?」

「嘘だよ?」

「……は……はひ……はひはひぃぃ……ひんひぃん……っ」


 黒目に戻ったゴブ蔵が、今度は心臓を押さえてものすごい汗を垂れ流している。このままじゃアシュのように小便まで漏らしてしまいそうだ。その前に心臓が止まるか。


「おい、やめてあげて?」

「う、うん。なんかちょっと罪悪感出てきた」


 毛むくじゃらの背中を撫でながら声をかける。


「大丈夫か? 落ち着いて深呼吸しろ」

「う、う、うぇ~い」


 普通に返事しろや。同情する気が失せちまうだろ。


「じゃあ、おれらはもう行くからな」

「ア~イッ!」


 マリカがギロっとゴブ蔵を睨む。


「返事は、はい、でしょ!」

「ひあっ!?」


 気持ちはわかるが、どうやらこれがゴブリン族の標準語らしいから、もうゆるしてやってほしい。おれはあきらめて慣れることにしたよ。

 立ち上がり、マリカを引き連れて自室を目指す。


「ア、アニキ!」

「ん?」

「厨房、完成したッスよ! へへ」


 ゴブ蔵が得意気に言って、人差し指で鼻を擦った。


「おお、そいつぁ楽しみだ! あとで見せてもらうぜ。お疲れさん」

「ア~イッ! アザマ~ス!」


 またしてもマリカがゴブ蔵をギロリと睨みつけた。


「ぴぃぁ!?」

「やめろって。あれがあいつらの公用語なんだから」


 おれはマリカの背中を片手で押して回廊を急ぐことにした。先ほどから半年間は洗っていない犬のような臭いが背後から流れてきているのだ。


「ぷご、マリカたん、やっぱギャンワイイぷぎぃ」

「ブヒヒヒ、でもあの地味顔は絶対ビッチブヒよ? あどけないほうがビッチブヒュヒュ」

「ぷぎゃー! そのほうが興奮するプキィ! ビッチングマリカた~ん!」

「エル、オー、ヴイ、イー、クソビッチ! ぎゃぽぉ!」


 オークども、全部聞こえてんだよ。ブタ野郎め、部下の教育くらいちゃんとしろってんだ。

 マリカが肩越しに振り返りながら、おれに尋ねる。


「ねえねえ、あいつらだけ殺していい? アタシのことビッチって言ったよ?」

「だ~めだってもう!」


 おれは両手でマリカの背中を押して自室の扉を開け、彼女をさっさと押し込んだ。


「プギ、やっぱりビッチブヒ! バカ参謀を速攻でたらし込んだブヒよ!」


 あ?


「でもあのバカ、リリン女王様とデキてるブヒよ?」

「それを言うなら、ぼんくら魔王ともアヤシいブヒ! あのバカはきっとロリコォンの精霊に取り憑かれてるブヒよ!」

「ブー、あいつばっかずるいブヒ! きっとマリカたんは騙されてるブヒよ!」

「バカ参謀がたらし込んだ可能性はあるブヒね! い、嫌がるマリカたんに……ブプ、こ、興奮してきたブヒブヒコポォ!」

「覗くブヒ! 覗きに行くピギィ! ぎゃぷぅ!」


 おれは足早に戻ってオークどもの前に立った。

 オークどもは、何やら頭部にMA☆RI☆KAと記された鉢金を装備していて、着ぶくれと見紛うかのようなぶかぶかの上衣を羽織っている。

 おれは意図的に凄惨な笑みを浮かべた。


「……全部聞こえてんだよ。誰がバカ参謀だって? あ?」

「プギャアアアァァァ!」


 四体のオークが一目散に逃げ出した。

 やつらが回廊の闇に消え去るのを確認してからおれは自室に戻り、回廊に誰の目もないことを確かめて扉を閉ざした。


オークたちが萌え豚にクラスチェンジしました。

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