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現世
目を覚ますと、そこは見覚えのある風景だった。
火山の火口付近の岩場だ。
「クレメンス様、ご無事でしたか」
部下のフランクがクレメンスに気がつき、駆けよってきた。
「うむ。皆は大事ないか?」
「皆、無事に避難することができました。噴火活動も、今は沈静化しております」
「そうか」
クレメンスは頷くと、すぐ横に視線を動かした。
そこには瀕死の重傷を負ったロジーナが転がっていた。
夢ではなっかた。
クレメンスの脳裏にウィドゥセイト神の声が蘇る。
ウィドゥセイト神は猶予をくれたのだ。
クレメンスはロジーナを抱え上げる。
愛おしかった。
ロジーナはあんなにも強く激しく自分を求めてくれた。
もう、自分の心を偽るのはやめよう。
もう、自分の心をを抑えるのはやめよう。
いや、もはやこの気持ちを抑えることなどできない。
「後の処理はお前に任せた。私はすぐに協会に戻らねばならない」
クレメンスはフランクにそう言い残すと、瞬間移動の術を使い、その場から消えた。