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魔女の気まぐれ  作者: 岸野果絵
神殿にて
4/15

思いきる

母フィオナに先導され、ロジーナは一室に入った。

部屋の中は、少し霧がかかったように薄暗く、石のようなものでできた寝台がいくつか並んでいた。


ロジーナは寝台のひとつに駆け寄った。

そこには師であるクレメンスが横たわっていた。

クレメンスは身体に大きな火傷を負っているようだったが、胸は規則正しく上下していた。


生きている。

ロジーナはホッと息をつくと、膝をついた。

そして眠っているクレメンスの顔をじっと見つめた。


今までの出来事が走馬灯のように浮かんでは消え、消えては浮かんだ。


ロジーナはけっして良い弟子ではなかった。

それどころか、ひどい問題児だった。


ロジーナは、いつまで経っても力の制御が上手くできず、癇癪を起しては、よく魔力を暴走させた。

不貞腐れて、クレメンスの元を飛び出したことも何度かあった。

それだけではなかった。

ロジーナは周囲ともうまく打ち解けられず、トラブルをよく起こしていた。

ロジーナがなにか問題を起こすたびに、クレメンスはその後始末に奔走していたように思う。

それでも、ロジーナが何度となく問題を起こしても、クレメンスは根気よくロジーナを指導し続けてくれた。


クレメンスの粘り強い指導で、ロジーナは一人前の魔術師となることができたのだ。

クレメンスがいなかったら、ロジーナは人間ひとの世界で生きていくことはできなかっただろう。



「師匠」

ロジーナはそうつぶやくと、クレメンスに触れようとして手を差し出した。

が、触れる寸前でそれを止めた。


もうロジーナは人間ひとではないのだ。

人間ひとであるクレメンスにとって、ロジーナは異質の存在なのだ。


ロジーナは差し出した手を握りしめ、そのままゆっくりと立ち上がった。

もう一度、クレメンスの顔をじっと見てから、思い切るように背を向けた。

そして、そのまま歩き出すと、部屋を後にした。

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