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魔女の気まぐれ  作者: 岸野果絵
火山にて
2/15

戸惑い

 クレメンスはとっさにシールドを張り、ロジーナの後を追っていた。


本来であれば、時間稼ぎをするのはクレメンスのはずだった。

それをロジーナが代わってくれたようなものだ。

冷静に判断すれば、避難するべきであった。

ロジーナもそれを望んでいたはずだ。


クレメンスはわかっていた。

自分が追いかけたところで状況が好転することはない。

無駄な行為になるのは確実だった。

なんら利益を生まない。

それどころか不利益のが大きいだろう。

自分は避難しなければならないのだ。

頭では理解していた。

だが、感情がそれを否定した。


彼女一人を逝かせるわけにはいかない。



*********************************


 ロジーナはすぐそばに魔力を感じた。

よく知っている魔力の気配だった。

紛れもない、ロジーナの師匠クレメンスの魔力だ。


「なんで……」

ロジーナは戸惑っていた。

救いたかった。

救える可能性があるのなら、自らの命と引き換えにしてもいいと思った。

だから噴火口へ飛び込んだのだ。


「お前ひとりで逝かせはしない」

クレメンスは、ロジーナの脳内に直接語りかけてきた。

「どうして?これじゃ私が犠牲になった意味がないじゃないですか」

ロジーナは叫んだ。


「お前を見捨てないと約束しただろ?」

「そうじゃなくて。国は?協会はどうするんですか?」


クレメンスは魔術師協会の会長であり、国の重鎮でもあった。

クレメンスを失うことは、協会にとっても、国家にとっても大きな痛手となる。

協会や国のためにも生きていてもらわなければならない。


「私に何かあっても問題ないように、後進を指導してきたつもりだ」

ロジーナにはクレメンスの言っていることが分からなかった。

わかりたくなかった。

なぜ、こんなことになってしまったのだろうか。


ロジーナが救いたかったのはクレメンスただ一人。

国も協会も関係ない。

ロジーナにはそんなものはどうでもよかった。

他の誰でもないクレメンスだから、無事に生き延びてほしかった。

クレメンスがいたからこそ、ロジーナは何のためらいもなく噴火口に飛び込んだのだ。


「お前のいない世界になど未練はない。お前と死ねるなら本望だ」

「師匠……」


ロジーナの視界が歪んだ。

マグマの熱のせいなのか、そうではないモノのせいかは、ロジーナには判断できなかった。

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