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再び噴火口に立つ
ロジーナは噴火口の前に立っていた。
ちょうど百年前、ロジーナはこの中で死んだ。
だが、父であるウィドゥセイト神によって現世に戻された。
ロジーナは全てを思い出していた。
なぜ現世に戻ってきたのか。
現世でなにをしなければならなかったのか。
ロジーナはウィドゥセイト神からの課題をすべて終えた。
だからこそ、今ここにいるのだ。
夕日が周囲を赤く照らしながら沈んでいく。
ロジーナは口元に微笑をたたえながら、ゆっくりと辺りを見回す。
長い年月だった。
全てを思い出す事が出来ないくらい、いろいろな出来事があった。
いろいろな人と出会い、そして別れた。
ロジーナが共に過ごしてきた人々は、既に旅立ってしまった。
悩み、苦しんだ日もあった。
孤独にさいなまれた日もあった。
喜びに満ち、楽しく幸せだった日もあった。
何もかもが愛おしく、美しい思い出だ。
辺りは暗くなり、空には宝石を散りばめたような星々が輝いている。
夜はウィドゥセイト神、そしてロジーナの支配する時間だ。
ロジーナの身体を眩いばかりの銀色の光が包み込む。
噴火口の底から、凍てつくような冷たい風が吹き上がる。
ロジーナにとって、その風は心地良い風だった。
ロジーナの口元がかすかに動く。
「ありがとう。さようなら」
ロジーナはニッコリ笑うと噴火口へと足を踏み出した。




