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魔女の気まぐれ  作者: 岸野果絵
その後
12/15

求婚

「経過は順調だ。これなら跡は残らないだろう」

クレメンスはそう言ったが、ロジーナはどうしてもそうは思えなかった。

前に比べれば色もだいぶ正常に近くはなってきていたが、ロジーナにはまだまだひどい状態いしか思えなかった。

これが元通りになるとは想像できなかった。


「私の言うことが信用できぬか?」


信用してないわけではなかった。

クレメンスはこういう嘘をつく人間ではないのは知っていた。

それでも、どうしてもロジーナは納得できなかった。


「心配するな。もし消えなかったとしても、私が責任をとる」

ロジーナは無言で床を見つめていた。


「ずいぶん反応が薄いな。一世一代のプロポーズをしたつもりだったんだが」

ロジーナは視線を上げた。


プロポーズ。

ロジーナは想定外の単語に戸惑った。

どの発言がそれに該当するのか、全く見当もつかない。

ロジーナはクレメンスの言葉を必死に思い出そうとしていた。


「わかりにくかったか。そうか。ふむ。少し研究せねばならぬな」

クレメンスは腕を組みながらそう言うと、視線を落とし、何かぶつぶつと考えはじめたようだった。


ロジーナは首をひねった。

先ほどの発言といい、今の発言といい、ロジーナにはさっぱりわからない。

なんだかキツネにつままれたような気分だった。


「師匠?」

「クレメンスだ」

「え?」

「私の名はクレメンスだ」

「はぁ……」


どうにも会話がかみ合わなかった。

これ以上会話続けるのは難しい気がした。

ロジーナは黙り込んだ。


「私の名は嫌いか?」

しばらくの沈黙の後、クレメンスがぽつりと言った。

ロジーナは思わず首を左右に振って否定する。


「ならば呼んでくれ。私の名を」

クレメンスは真剣なまなざしでロジーナを見つめる。

ロジーナの心臓がドキリとなった。

「えっとぉ…クレ…メンス先生?」

ロジーナは震える声で言った。


「敬称はいらない」

ロジーナの鼓動がはやくなる。

今すぐ逃げ出したい気分になったが、クレメンスの瞳に射すくめられて動けない。


ロジーナは意を決して言った。

「クレメンス」

思ったよりも大きな声になってしまい、ロジーナは慌てて口元をおさえた。

「やっと呼んでくれたな」

クレメンスは微笑んだ。

その優しい瞳にロジーナは惹きこまれる。


「ロジーナ。残りの人生を共に過ごしてほしい」

「はい」

ロジーナは頬を真っ赤に染めながらこくりと頷いた。

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