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魔女の気まぐれ  作者: 岸野果絵
その後
11/15

絶望

クレメンスは看護師からの連絡を受け、すぐに館に戻った。


ロジーナの部屋は固く閉ざされていた。

クレメンスはやむなく開錠の呪文を使った。

しかしそれだけでは容易に開かなかった。

ドアの内側にはバリケードが築かれていたのだ。


クレメンスはなんとかバリケードを越えると、暗い室内を見回した。

部屋の隅に、かすかに動く影を見つけた。


「ロジーナ」

近寄って声をかける。

「来ないで。来ないでよ」

頭からすっぽりと布団をかぶった姿のロジーナがいた。

「一体どうしたというのだ」

「止めて。来ないで。ほっといて」

ロジーナは壁にびったりと張り付く。

「放ってなどおけるはずがないだろう」

「嘘よ。みんなしてそうやって嘲笑ってたんだわ」

「一体何のことだ」

クレメンスは布団を掴んだ。


「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ」

ロジーナは金切り声をあげたが、クレメンスは構わず、強引に布団を引きはがした。

「やめて。見ないでぇぇ」

布団を取られたロジーナは、頭を抱えるように顔を隠してうずくまった。


「ロジーナ」

クレメンスは震えているロジーナの肩を優しく抱く。

「離して!!」

ロジーナはそれを振り払うようにして顔を上げた。


「そうよ、まるで化け物よ。こんな化け物、死んでしまえばよかったんだわ」

叫ぶようにそう言うと「うわぁぁ」と再び伏せて泣き出した。


「ロジーナ。お前を醜いなどと思うものは誰もいない」

「嘘」

ロジーナは伏せた状態で、首を左右に振った。

「少なくとも、私はそうは思わない」

「嘘つき」

「ロジーナ。お前がなぜこのような姿になったのか、なぜこのような火傷を負ったのか、みな、よくわかっている」

ロジーナは身じろぎすらしない。

「なぁロジーナ。私は決して醜いとは思わない。それどころか誇らしく思っているのだ」

ロジーナはずっと「嘘つき、嘘つき、嘘つき」とつぶやいていた。


室内にはロジーナのしくしく泣く声だけが響いていた。


しばらくすると、ロジーナの泣き声が途絶えた。

クレメンスはロジーナを強引に抱き寄せる。

抵抗するロジーナの両腕を掴むと、顔の火傷跡に口付をけをした。

顔だけでなく、頭部や首筋の火傷跡にも何度も何度も優しく口付をする。


クレメンスはすっかり大人しくなったロジーナの顔を両手で挟んだ。

「ロジーナ。お前は美しい。お前の美しさを理解できぬ者など相手にする必要はない」

「師匠……」

ロジーナの瞳から涙があふれる。

クレメンスはロジーナを優しく抱きよせると、嗚咽をもらすロジーナの背中を優しくさする。


「そろそろ名前で呼んでくれたもいい頃なのにな」

クレメンスのつぶやきはロジーナには聞こえていないようだった。

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