オズの魔法使い
三十一歳のおれが「オズの魔法使い」の感想文も書くよ。
以下、「オズの魔法使い」のネタバレあり。
まず、読み始めて、冒頭でびっくりした。いきなり、主人公の女の子は東の悪い魔女をやっつけてしまうじゃないか。なんだ、この早さは。なんだ、この圧倒的展開は。
そこが何より素敵で、その後の長い物語をえんえんと読みつづけた。あまりにも単純で素直な寓意に、わたしは感動した。脳のないかかし、心のないブリキの兵隊、勇気のないライオン。みんな、もっていて当たり前のものをもっていない可哀相なやつらだ。この単純な寓意に、心を揺さぶられずにはいられない。わたしに、脳がなかったらどうだろうか。わたしに、心がなかったらどうだろうか。わたしに勇気がなかったらどうだろうか。とても、まともに生きていくことができない。わたしはこのドロシーの仲間たちを読んで、世界には自分にとって当たり前のものも与えられない酷い目にあっている者たちがいることを教えられるのである。この世界が、完璧じゃなく、生まれながらにして不幸な境遇に置かれる者たちがいることに気づくのである。ああ、我々は、かかしやブリキの兵隊に基本的人権を与えるために頑張らなければならないではないか。わたしは本音で思った。彼らがオズの魔法使いに、脳や心を与えられたらいいなあと。
ただ、勇気のないはずのライオンは、物語の中で、ずっと勇敢だと思ったけど。まあ、そんなささいなことはご愛嬌だろう。
そして、オズの魔法使いに会い、西の魔女をやっつけて、帰ってきたドロシーたち。ただの女の子のドロシーがちゃんと西の世界を支配する悪い魔女をやっつけました。悪いやつをやっつけるのに、大人も子供もない。男も女もないと思いました。
約束どおり、悪い西の魔女をやっつけて帰ってきたドロシーたちが、望みのものを手に入れて、とても優しい気持ちになれる物語でした。いじわるなオズの魔法使いもなんだかんだいって、ちゃんと約束を守っように見えるし。
あのまま、ドロシーが気球にのって、故郷に帰ったら、もっと素敵な物語になっていたと思います。だけど、残念ながら、話はまだつづき、ちょっとうんざりします。
でも、なんと、旅の仲間、三人がみんな、王様になってしまうのです。この大出世にはとても感激しました。簡単に出世できる楽な道があるなど、人々に読ませるには悪影響な物語だと思いますけど、でも、仲間が大出世するのは素直に心から喜べます。
最後、主人公のドロシーが、主人公だからといって特別扱いされることなく、何の得もなく、故郷に帰るところがよくできていて感心すると思いました。
おわり。