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カラマーゾフの兄弟・第一部

大学生推薦本

 素晴らしい作品だった。最も良かったのは、笑うリザヴェリータだ。人々の悩みをなんでも諭してくれるゾシマ長老の唯一の失敗は、笑うリザヴェリータの心の奥を読めなかったことだ。もちろん、リザヴェリータの心は天才児アリョーシャにも読めなかった。アリョーシャを嘲笑して笑うリザヴェリータの本当の心は、アリョーシャへの恋だったのだ。

 恋心のわからないゾシマ長老に解決できるのは、しょせん、大人の悩みだけだろう。これから、絶対に克服しなければならない子供の試練、恋愛の問題をゾシマ長老は見抜けなかったのだ。あの、偉大なる聖人として称えられる本当に善人のゾシマ長老が。

 子供は、恋愛するにしてもしないにしても、必ず恋愛の試練にたたされる。まさに、人生最大の試練に立っていたリザヴェリータとアリョーシャの二人の問題を、リザヴェリータに「あなたはダメですよ」などといってしまうゾシマ長老の死体は、それは腐食するであろう。

 ゾシマ長老の説教は実に社会の現実をえぐり、心を打つ。悲劇に見舞われたものに神の救済を教え慰める。金持ちにも貧乏人にも結局は順番どおりに説教してくれる。優しい人だ。俗世間を超越したはずの教会の中で、さらに超越して隔絶された長老の肩書きをもつゾシマ長老を、さらに超えるものはリザヴェリータの恋愛。

 ただの嫌な人に見えるリザヴェリータと、いじめられているように見えるアリョーシャが実は昔からずっと知り合いである恋人未満の友人であることなど、ゾシマ長老は知らなかったのだろう。ドストエフスキーは、自分の哲学の上位に恋愛を置いた。これが、ドストエフスキーの判断である。

 かくのごとく、多くの思想家たちは至上のものとして恋愛をとり扱ってきたのだ。誰にも解けて、お父さん、お母さんが子供を産んでいるはずの世の中で、いまだに、ありふれた恋愛が、哲学の頂点なのである。

 第一部ではリザヴェリータがアリョーシャに恋文を渡し、婚約者となるハッピーエンドであるが、第五部まで読むと、二人は婚約を破棄してしまう。これはとても悲しいことだ。描かれることのなかった「カラマーゾフの兄弟」の続編では、二人が再び婚約して、幸せな結婚をすることを、時空を超えて、過去のドストエフスキーにお願いするものである。


おわり


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