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風の歌を聴け

エッチなので大学生推薦本。短いですのでおすすめです。

 幻想的な雰囲気のする作品だった。本当なら、鼠とのやりとりについて重点的な感想を書くべきなのだろうけど、おれの印象に残っているのは、大学時代までに付き合ったという三人の女の話だ。

 大学時代の数ヵ月で、57回のセックスをしたという主人公に嫉妬するけど、それなりに衝撃的な内容だった。ああ、おれは57回もセックスしてないな、と思い、なんだか惨めな気分になる。だから、それだけなら、この小説は、駄作に終わっていただろう。

 おそらく、この付き合っていた三人の女というのは創作であり、作者の実際とはちょっとズレているのだろうけれど、それでも、読者はどうしても、作中の人物を実在の自分と比較して考えてしまうものである。

 そんな嫉妬の対象である主人公に対して、読者が許しを与えるのは、大学時代に付き合っていたという女の人が、醜い女だったというところである。それで、なんだ、それならそれほどうらやましくないや、と読者は思うのである。少なくとも、おれはそう思った。これが、この作品の絶妙なバランス感覚である。一歩まちがえたら、すごく嫌味になってしまう性愛の部分を、醜い女と付き合うことによって、嫉妬を打ち消しているのである。それは、見事な青春劇としかいいようがない。

 しかも、その醜い女は自殺して死んでしまう。おいおい、である。

 57回もセックスしておいて、主人公の彼女だった女は不幸だったのではないか。

 この作者の小説を読むと、差別意識が散りばめられていて、だから、あまり素直に褒める気にはなれないのだけれど、男女の関係についての絶妙なできごとは、賞賛せざるを得ない。自殺した醜い女。それは、主人公の心を痛めつけたにちがいない。

 主人公が付き合ったという三人の女。

 高校時代の彼女。これはよしとする。

 16歳の家出少女。これなんかは、完全に創作だろう。現実だというのなら、おれは完全に世間知らずである。この物語の場面は東京なのだろうか。

 それから、三人目は自殺した醜い女。どう考えても、彼氏であった主人公の罪である。主人公は罪を背負って生きている。

 なぜだろう。日本文学にみられる若者の自殺は、さわやかな感動をおれに与えるのである。深く考えれば、主人公の罪悪であるはずの彼女の自殺が、あっさりと描かれている。そこに、おれは勝手に、若者の未熟さと高揚感、そして、喪失感を感じるのである。

 若者の高揚と喪失は、青春である。

                  了


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