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スターリングの短編集「蝉の女王」収録の短編「巣」です。

SF好きのおれが書くスターリングの短編「巣」の読書感想文


 短編「巣」において、スターリングは多様な価値観を提示している。それは、人は宇宙に適応するためにサイボーグになるというサイバーパンク的価値観が有名だ。しかし、今回は、わたしは短編「巣」の主軸である文明論について考えたいと思う。

 一九八〇年代、アメリカにおいても、人口爆発や環境破壊のため、人類の未来は明るいものではないと思われていたようだ。文明をもつと必ず世界は滅亡する、これが短編「巣」の一行要約である。スターリングは、短編「巣」において、種が文明をもつことを否定してみせた。

 もし、人類が文明をもったことが悪であり、文明の発達が必ず種の滅亡をもたらすのならば、宇宙のどこかにいる宇宙人も、高度な文明をもつことができないはずである。

 人類の文明は地球の生態系を破壊している。そして、なのにも関わらず、人類はたいして幸せになることができずに生きている。文明をもつことが、種だけでなく、生態系そのものを破壊してしまうとしたら、我々の思い描いている進化と成長の世界観は簡単に崩れ去ってしまうことになる。

 そこで、スターリングが用意したものは、とても、意外な生命体だった。それは「巣」と呼ばれ、人類の調査によれば、一億年以上、生存してきた生命体であるはずだった。一億年以上も生きられる生物、それは、ほんど不死に近い。その生物は、一億年以上、生態系を破壊する文明というものをもたずに成長を維持してきたのか。否、その生態系もやはり、文明を一時期は、発達させたのである。それがなぜ、人類とは異なり、その文明は種を、または生態系を破壊してしまわなかったのか。

 それは非常に面白い発想だった。短編「巣」が長らく絶版であり、読書するにも入手困難であるから、バラしてしまうが、スターリングの考案した生命体「巣」は、知性をもたないのである。そのため、文明の発達による生態系の崩壊ということが起こらない。

 では、知性のない生命体に生きる意味はあるのか。

 なんと、生命体「巣」は、自らの危険を察知した時にだけ、知性のない生命体だったのに、発作を起こし、一時的に知性を発現させるのである。

 なんという見事な生命観。なんという見事な文明観であろうか。

 文明は世界を滅亡させる。だから、知性は必要な時にしか、出現しないのである。

 非常に賢く、独創に富んだ生命体像を教えてもらい、世に過小評価されているスターリングに多大に感謝するものである。

                了


SF短編小説ベスト10

1位 時のハインライン

2位 ジャックポット(シマック)

3位 スターリング

4位 天の向こうクラーク

5位 カミロイ人の初等教育ラファティ

6位 四次元方程式ブルウアー

7位 父祖の信仰ディック

8位 人間培養中アシモフ

9位 血清空輸作戦ハインライン

10位 われらなりに、テラよ、奉じるはきみだけ(ティプトリーJr)


ディックの短編ベスト10は

1、父祖の信仰:時間飛行士のささやかな贈り物収録

2、変種第二号:パーキーパットの日々収録

3、にせもの:パーキーパットの日々収録

4、変数人間:永久戦争収録

5、不屈の蛙:模造記憶収録

6、おお、フローベルとなりて:時間飛行士のささやかな贈り物収録

7、あんな目はごめんだ:模造記憶収録

8、かけがえのない人造物:まだ人間じゃない収録

9、安定社会:マイノリティリポート収録

10、ベニーセモリがいなかったら:時間飛行士のささやかな贈り物収録

だ。短編集「シビュラの眼」「ペイチェック」「悪夢機械」は未読。

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