ドグラ・マグラ
長すぎるので、読書感想文には向きません。
主人公の正体は、正木博士である。世間では、主人公は呉一郎などといわれている。真に嘆かわしいことである。世間の「ドグラ・マグラ」に対する理解力のなさを示しており、わたしは「ドグラ・マグラ」という傑作が正しく理解されるように思い、ここに執筆するものである。とにかく、物語の序盤で正体不明の主人公の正体は、天才科学者正木博士四十歳なのである。
正木博士は、若作りで、十代の若者にも見えると書いてある。だから、十代の若者と思われる主人公は、正木博士なのである。
劇中に主人公に正木博士が会いに来る。しかし、その正体は若林博士の変装である。若林博士と正木博士が現在時間で同時に登場することはない。それは、二人が同一人物だからである。若林博士は巨人だと書いてある。椅子に腰かける様子が不自然だとも書いてある。それは、若林博士は、巨人に変装しているからである。若林博士の演じる正木博士も眼鏡をしている。眼鏡は変装の常套道具である。よって、主人公である青年が会う若林博士と正木博士は同一人物である。
後半、主人公は呉一郎だと若林博士が教えるのは、ミスリードである。読者に、主人公が正木博士であることを誤魔化す技である。だから、主人公は呉一郎だといわれて、正直に主人公が呉一郎だと思うようでは、稀代の奇書「ドグラ・マグラ」を読み解くのは不可能である。
物語は、正木博士の死亡記事で終わる。だが、正木博士の死体が、正木博士だと証明されたのは、名刺が死体のポケットに入っていたためである。明らかな偽装死である。正木博士は、数十年前に、死んだふりをして、開放治療場にやってきていたのである。正木博士が、記述どおりに死んだと思わせるのは、ミスリードである。
「ドグラ・マグラ」の主人公は正木博士である。わたしは何度も声を大にして、叫ぶものである。
つまり、正木博士は記憶を失い、みずからつくりあげた開放治療場で毎日、同じ狂った日々をくり返しているのである。正木博士がなぜそんなことをするのかはわからない。しかし、あの開放治療場は正木博士の仕かけたからくりなのである。
それをわからずに、主人公は呉一郎などと解釈する現在の日本の「ドグラ・マグラ」読者の主流派は猛省するべきである。
「ドグラ・マグラ」にはまだいくつもの仕掛けがあるが、現在、大きく勘違いされていると思われるこの主人公の正体をとりあげて、今回の感想を終わらせてもらう。
了




