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ここから書いた年齢が三十二歳になる。
面白かった。全部で三つの要素をもつ小説だと思う。それは、学校をサボることと、コンピュータを使うことと、アダルト産業に関わることだ。全部、青春の一部だと思う。三つの要素はどれも面白く、おれの興味を引いた。
学校をサボることは、映画「ぼくらの七日間戦争」を連想するのだけど、とても不思議なすがすがしさを時々もっているものだ。学校から開放されると、レールにのせられた人生から外れた気分になり、自分が人生の主役であるかのような錯覚に陥るものだ。おれの高校時代は、毎日、遅刻することが学校体制への反抗の現われだった。一年間で、百二十日遅刻していた。教師が通知表に本当のことを書けないので、二十七回に減らして、嘘をついていた。おれの大人との戦いの一部である。おれの青春だ。
この物語は、女子高生が何の理由も無しに登校拒否を始めるところから始まる。
下手くそなコンピュータを使い、ちょっとしたバイトを始める。それは、アダルトサイトの風俗嬢の代わりにエロチャットをすることである。性的なことに詳しくない主人公は、たどたどしくもエロチャットを行う。おれは風俗に行く女の話を読むと、すべての女が風俗を経験しているのではないかと猜疑心が沸いて、とても、嫌な気になるのだけれど、おれの感情を無視して、物語の主人公はエロチャットを始める。
エロチャットの相手をする男たちは、本気でコンピュータの向こうに美女がいると思って、楽しんでチャットをしている。実際に、綿矢りさはかわいいし、この小説の主人公もそこそこ可愛いのだろうけど、エロチャットで話が弾むと面白いだろう。男は、風俗嬢相手でもいいので、女の性に対する本音を聞きたいのである。だから、エロチャットは営業が成り立つのである。
主人公が処女であり、風俗産業の手伝いをして、処女のまま一人の男と付き合うこともなく終わるこの物語は、とても興味深く面白かった。
おれが勝手にいってしまえば、女はやはり、アダルト産業を拒絶していないということである。それは綿矢りさだけが拒絶していないだけかもしれない。本番なしのエロチャットだけだけど、風俗は風俗である。でも、風俗の男に女を牛耳られるのが嫌なおれは、あまり、女が風俗に参加する話を聞きたくないのだ。
でも、面白かった。これは、おれがまだ未熟なのだろう。
おわり




