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おとこのおんなのこ  作者: 平山ひろてる
第1巻 『センパイの愛した、おもいびと』
1/7

プロローグ 『おんなのこ、おとこのこ』

 ガンガンと批評よろしくお願いします。

 よろしければよろしければ。

 ガールズラブなのか? どうなのか?

 これは、どうカテゴライズされるんでしょうね。

 こんな想いをしたことは、ないだろうか。


 あなたが男の子なら、女の子になってみたい。女の子になって、自分の胸を揉んだり、色んな可愛い服を着たり、きゃっきゃうふふと、女の子仲間と、楽しい会話を繰り広げてみたい、と思ったことはないだろうか。

 あなたが女の子なら、男の子になってみたい。男の子になって、色んな遊びをしてみたい、自分のゴツゴツした、男らしい身体に触れてみたい、無茶なイタズラをしてみたい、女の子同士の世知辛い人間関係から離れ、さぱっとした男社会に触れてみたい、そう思ったことはないだろうか。

 

 実際にそうなったら、どうなるのかなあ。

 そんな喜劇の物語。そして、叶わない恋に胸を焦がす、少女たちの物語。

「ふぁー……」

 五月。そろそろ新しい環境にも慣れ、人々の気が緩み始めるステキな季節。

 ここは、ちゅんちゅんと小鳥がさえずり、カーテンの隙間から、温かな陽光差し込むあたしの部屋。

 ふんわりとした羽毛ベッドの上で、十五歳の高校生であるあたしこと、青木朱音はむくりと身体を起こす。

 ――昨日は、夜遅くまでテレビを見てた。

『女の子同士での恋愛なんて、ぜーったいにありえない、きもちわるーい、キャハハ』とさっぱり言い切った女子高生に、悲しみを覚えながら、枕を涙で濡らしながら眠ったものだ。


『男の子になりたい』。


 女の子に生まれたら、きっと一度は思うことだろう。むしろ、一度も思ったことがない子が存在するのか。少なくとも、あたしの周りには一人もいなかった。

 でも、彼らとは体格も違い、バカそうに無邪気そうに、男同士で楽しげに笑う、彼らの残酷な姿を、少女は傍で見つめることになる。

 男の子と触れあいながら子供ながら、『男の子になる』という、その考えが達成できないことを知り、やがて、少女として生きてゆくことを決断する。

 まあ、そんな小難しいことはどうでもいい。


 あたしは、いわゆる『百合系女子』だ。注目すべきは、百合女子ではないことだ。

 

 女の子が好き好き。であるけれど、まあ男の子も嫌いじゃない。

 どっちでもいけるが、どっちかというと女の子が好きなだけだ。

 男の子の友達も多いし、告白だって何回もされたことはある。

 でも、愛してしまったのは、男の子じゃなかった。

 まあ、そんなこともどうでもいいのだ。

 叶わない夢を見続ける中で、やがて現実を見つめねばならない。

 ぼうっとする頭の中で、小難しいことを考えたからか。

 どうも、おかしな夢をまだ見てしまっているようだ。

 あたしの髪の毛は、ふわりとした肩まで伸びた地毛の茶髪、身体は絹のようにすべすべで、胸も人並み以上にあるはずだし、街を歩けばそれなりの人間が振り向き、厄介な人間に声をかけられる。そんな程度の女の子。


 であるはずなのだが。


 サイズに余裕があるはずの、お気に入りのパジャマは、どこか窮屈で。

 身体が違和感の塊になってしまったような、おかしな感覚がする。

「へええ……?」

 ふと、自分の胸を見ると、割れた風船のようにしぼんでいた。

 ふっくらとした胸は小さくなり、まるで男の子のようになっている。

 小さくなった、なんて簡単に表現できるものではない。ぺったんこすぎる。

 こんなの、悪い夢だ。

 どうして一夜にして、あたしが貧乳にならなくてはならないのか。

 こんなものは悪い夢に決まっている。まだ、悪い夢を見ているのだ。

 だからこそ、あたしは頬を軽くつねってみる。

 ――痛い。夢じゃなかった。

 この貧乳化事件は現実で、あたしの胸は実際にしぼんだのだ。

「どうして……?」

 いや、胸だけじゃない。

 声も、何となく自分のものではないような、そんな感覚がする。

 どちらかというと、ソプラノ寄りの声色だったはず。しかし耳に入ってくるあたしの声は、オクターブ下がりのアルトボイス。

 ぺったんこになっただけではなく、喉までやられてしまったのか。

 しかし、なぜ、どうして。様々な疑問が、起き抜けの頭に浮かんでくる。

 

 そこであたしは、一つの嫌な予感を頭に浮かべた。


 もしかしたら、男の子になってしまったのでは?

 アニメや小説、ゲームではよくあることだ。

 朝起きたら、少女が少年になっていた。

 逆も、しかり。

 でも、それは創作物の中での話だ。

 現実には決してありえない。

 だからこそ性転換は、嗜好ジャンルの一つとして成立するのだ。

「ええー……」

 まさか、まさかね。

 恐る恐る、あたしは自らの下腹部に、おそるおそる手を移動させる。

 何もないはずのそこには、男の子である揺るがぬ証拠。

 

 ……そのものが、存在していた。


 今までそこにはなかったもの、少女が持つはずがないもの。

 それがあった。

 え?

 まじで?

 ありえなくない?

 わけがわからない。

 わけがわからないが、とりあえず叫んでおく。

 というか、口が勝手に動いた。


「ええええええええ!」


 この日から、物語は動き出した。

 男の子になってしまった、何の変哲もない、百合系女子の日々が変わったのだ。


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