表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
PR

よるは、とけない

掲載日:2026/07/05

 とわちゃんはお姫さまだ。

 甘いものと編み物と、それから僕が好きで。ピーマンと、怖いことが嫌いだ。いつもお城の中で、笑っている。幸せそうに。

 そんな君を、僕はただ愛することしかできない。




 お仕事からかえってきたあなたと、ちょっぴり夜ふかしする時間がすきだった。

 きょうは雪がふっているから、ホットチョコレートをいれてもらった。マグカップにどろりとしたそれを注いで、マシュマロをうかべる。チョコレートのほろ苦いにおいとあなたのあまい声が混ざっていた。

「とわちゃん、きょうは何したの」

「きょうはね」

 わたしはぱたぱた、と走っていって、もってきた。

「てぶくろを編んだのよ」

 じゃーん。といって、紺色のてぶくろを見せる。あなたはちょっと目をみひらいたあと、ふふ、とわらった。

「上手にできてるね」

「これはプレゼントなの」

 わたしはちょっと恥ずかしくなって、てぶくろをあなたの胸にぎゅう、とおしつけた。あなたの目が細まる。

「大事にするね」

 あなたのおおきな手がわたしの頭をなでた。髪、ぼさぼさだ。もっときれいにとかしておけばよかった。


「椎名くん、わたしプリンセスなのよ。プリンセスには敬意をはらうべきよ」

「そうでしたね、お姫さま」

 あなたはひざまずいて目線をあわせてくれる。ほら。やっぱりわたしの王子さまだった。

 子どもだからってからかわれているみたいだけれど、気にしない。

「王子さま、ちかいのキスをしなさい」

「はいはい」

 あなたは心からうれしそうに、きれいな目をとじて、おでこにキスしてくれる。わたしもうれしくなって、ぽかぽかしながらそっと顔をあげた。あなたの前髪がくすぐったくて、くすくすわらう。


「椎名くん、ぜったいはなれないでよね?」

「うん。離れないよ」

「あしたの3時のおやつはなぁに?」

「いちごのドーナツだよ」

「はんぶんこしてくれる?」

「もちろん」

「やったぁ!」

 わたしがとびはねて喜ぶときが、あなたは一番しあわせそうだ。

 わたし、愛されてるんだ!だあいすきなひとに!


「椎名くん、だあいすきよ」

「うん、愛してるよ、とわちゃん」

「ぜったいぶったりしないでよね。わたし泣いてでていっちゃうわよ」

「────うん、大丈夫だよ」

「あ!椎名くん。チョコレートがさめちゃうわ」

「⋯⋯そうだね。飲んじゃおう」

 あなたはまたいつもみたいにふにゃ、とわらった。

 静かにかんぱいをして、いっしょにマグカップに口をつけた。

 暖炉のなかにとびこんだみたいに、あたたかかった。




 チョコレートの中のマシュマロはとっくに溶けてしまっていた。それにとわちゃんは気づかない。おいしいねぇと言って呑気に笑う。可愛いとわちゃん。小さなとわちゃん。


 お姫様になりたいっていう願いを、やっと叶えたとわちゃん。 

 いつかの夢から、永遠に覚めないとわちゃん。

 ほんとうはもう、とっくに大人になっているとわちゃん。

 

 

 体だけがおおきくなっていくことにも、もちろん気づかないね。

執筆していてとても楽しかったです。

とわちゃんかわいいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ