6 お茶会への招待~グァミルア伯爵伯爵令嬢
「アンヌ、お茶会に参加しない?」
初めて公爵家の領地で継母のレジェスとその娘、義妹になったアンヌと出会ってから、ひと月が過ぎた。
三人は三週間ほど領地で過ごし、シェリールルがその間公爵領を案内し、領地の名産や、産業などの説明、それから有力者との挨拶などを行う。四六時中一緒にいたこともあり、血のつながりのないシェリールルと母娘はすっかり打ち解け、まるで本当の家族のようになっていた。
一週間前についに三人で王都の公爵邸に到着する。
出迎えた父と兄は、随分と仲良くなった女性三人に驚きつつも、仲が悪いよりも断然良い、と笑顔で出迎えてくれた。
そうして王都の公爵邸での暮らしも落ち着いてきたタイミングで、シェリールルがアンヌに、お茶会の誘いを言い出したのだ。
「え、お茶会? 私も行って良いの? お義姉様が呼ばれたんじゃない?」
「ふふ。我が家の新しい家族に、皆興味津々なのよ。今回は令嬢だけのお茶会だから、お継母様は参加できないけれど、きっとすぐにお継母様もいろいろなお茶会に、呼ばれるようになるわ」
ひらりと見せる招待状には、グァミルア伯爵家の印が透かし模様として入れられていた。
「お義姉様、グァミルア伯爵家とは仲が良いの?」
「いいえ。今回が初めてのお茶会のご招待よ。別の派閥の方だからね」
この国の貴族は、王立学園に通う16歳になる一年前から、お茶会やパーティなどで、顔つなぎを始める。そうして人脈の下地を作っておいて、学園でそれを花開かせるのだ。
「ちなみに、こちらの伯爵家のご令嬢は、王太子殿下の婚約者になりたがっている方よ」
「待って、お義姉様。グァミルア伯爵家……グァミルア伯爵家……。そうよ! エルデアール・グァミルア伯爵令嬢!」
両手を握りしめて立ち上がったアンヌに、シェリールルは小首を傾げる。
(グァミルア伯爵令嬢のお名前を、どうしてあんなに力強く呼ぶのかしら)
アンヌは何やらぶつぶつと独り言を言い出す。この数週間で、彼女がこういう仕草を始めたら、それは前世で見てきたことに関わる、とシェリールルは学んでいた。
(今回はどんなことを言い出すかしらね。楽しみだわ)
公爵領では、名産のメロンが熟しすぎたものをメロンシャーベットにするアイデアや、印刷技術に関するアイデアを口にして、実用化の準備を進めている。
(前世の知識は、具体的な仕組みがわからないものは再現できない、なんて言っていたけれど、発想さえあれば、糸口にはなるもの。我が公爵家の領民は、皆優秀だからね)
うんうん呟いている端から見たら少々残念な令嬢のアンヌを、シェリールルはそんな風に思いながら暖かい目で見つめていた。
「お義姉様! グァミルア伯爵令嬢は、きっとお茶会でお義姉様をハメようとするわ」
「私を? それはもしかして、もしかしなくても、王太子の婚約者である私への妬み?」
「その通りです」
うぅん、とシェリールルは苦笑いを浮かべる。王太子の婚約者の立場などいつでも譲るのだから、くだらない嫉妬などせず、王家に金を積んで『お願い』をすれば良いのに。などと思ってしまうのだ。
「お義姉様がどう思っていても、この国の令嬢にとって、王太子の妻になることは憧れなんです。だって、イコール王妃になれるって事ですよ?! まぁ私は絶対に嫌だけど」
最後につけたアンヌの本音に、シェリールルも頷く。
「そうでしょう? 私はお祖母様が元王族だから、準王族みたいなものよ。ただでさえ、外では準王族の公爵令嬢として、常にジャッジされているというのに、ここからさらに王族?! 冗談じゃないわ」




