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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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55 王太子夫婦の寝室にいたのは

 コールリアルが先に部屋に入る。


「嫌なにおいだな……」


 性行為独特のにおいが充満するこの部屋に、シェリールルを入れたくはない。


「……スティ、戻ってきたの?」


 ベッドの天蓋からさがる薄いカーテンを幾重にも重ねた中から、声が聞こえる。

 そこから出てこようという気はないらしい。


「シェルは少しそこにいてくれ。君たち、この部屋の窓を全て開けて空気の入れ換えを」


 侍女の後ろにいた使用人たちに指示を出すと、コールリアルは部屋の中を見回した。

 この一週間、辺境伯家出身の使用人たちがこの部屋を担当するよう、ロット第二王子が差配している。

 シーツは初回の血が付いているものから、つい今朝方までの毎日の汚れがついたものまで、丁寧に保管しているというから、用意周到だ。


「えっ、ちょっと……誰!」

「お嬢さんはそのままベッドの上にいるんだ。そこから動くなよ」


 コールリアルはいつもより低い声で、ベッドにいるチルーマへと声をかける。

 上位貴族が人を従わせるときに使う発声で、それを聞き慣れない彼女は従う事しかできない。


 テーブルの上には宝石箱から溢れるほどのジュエリーが、乱雑に置かれていた。

 情報によれば、数日前に宝石商が呼ばれたという。金の流れは、アスミュートが手を回して書類を保管している。


「さ、シェル入ってくれ」


 室内の空気が入れ替わったことを確認すると、コールリアルは扉まで戻り彼女に手を差し出す。

 その手を取り、シェリールルは部屋の中に入った。

 中を確認し、テーブルの上のジュエリーを見て溜め息を吐く。


「このジュエリーは誰の、何のための予算を使ってのかしら」

「その声……! シェリールルね!」


 コールリアルに指示されたとおりベッドの上にはいるが、カーテンを僅かに開きチルーマはシェリールルを確認した。


「まぁ、以前夜会でお会いした方ですわね。この部屋のベッドで、どうしてあなたは一糸まとわずにいられるのかしら」


 バサリと扇子を開くと、シェリールルは困ったような表情を見せる。


「なっ、なによ! アタシに嫉妬してるからって、そんな意地悪な言い方!」

「嫉妬? 私があなたに嫉妬する要素なんてあるのかしら」


 可愛らしく小首を傾げると、チルーマの顔が真っ赤に染まった。


「そういうとこっ! ほんと悪役令嬢って感じで最低!」

「シェリールル! お前なんでここに……っ!」

「ようやく到着したか」


 扉側から聞こえた王太子の声に、コールリアルが笑いを含めるように反応する。

 シェリールルが扉を振り返り王太子を確認すると、その後ろには父である公爵とアスミュート、ロット第二王子、それに何故かアンヌもいた。


(アンヌって、今日登城する予定あったかしら?)


 予定はなかったが、決定的なシーンを見逃したくない一心で、密かに公爵に頼み朝から登城していたのだ。

 アスミュートが公爵を呼びに王城の彼の執務室に行くと、アンヌが待ってましたとばかりに同行してきた。


「皆さまお揃いなのは、ちょうど宜しいですわ。王太子殿下、今のこの状況を説明してくださる?」


 敢えて気位が高そうな口調で王太子へと言葉を投げる。

 こうすれば彼は、すぐにシェリールルにけんか腰の言葉を返してくるのが分かっているからだ。


「状況説明? はっ。チルーマを虐め、社交界から追放したのに、彼女が俺の寵愛を受けているのが、それほど悔しいのか」


 何を言っているのかわからない。

 シェリールルは素直にそう思った。

 だからこそ、純粋に首を傾げ王太子の次の言葉を待つ。

 それが、王太子には気に入らなかったのだろう。


「返す言葉もないのか。残念だったな、シェリールル。チルーマは母上が公認した、お前の代わりの婚約者だ。つまりは王太子妃となり、次期王妃となる女性」

「王妃殿下が公認?」

「ああそうさ。その彼女を虐め、国外に追いやろうとしたなど言語道断! シェリールルの有責で婚約を破棄し、身分を剥奪して娼館に身を預けることを命じる!」

「スティ、格好いいっ! アタシが王妃になるのね……。ふふっ、シェリールルが妓女になるだなんて、いい気味!」


 気分良く宣言した王太子に、チルーマがアッパーシーツを体に巻き付け、ベッドから這い出てきた。

 そんな彼女の腰に手を回して、王太子はもう片方の手で彼女の手を握る。


「えぇと……何からというか、ほぼ全てがおかしいのだけれど、とりあえず婚約を破棄することは賛成ですわ」

「フン。最後まで可愛くないヤツだな。床に這いつくばって、俺に許しを請えばいいものを」


 あくまでもシェリールルの有責だと思い込んでいる王太子は、ダン、と大きく足音を立てて床を示す。

 周囲にいるのは全てシェリールルの味方だが、彼女の好きなようにさせるという事前の打ち合わせがあり、今は煮え湯を飲まされたかのように、ギラギラとした目で王太子とチルーマを睨むだけ。

 それがまた、王太子にとっては自分が正しいと思い込む理由にもなっているらしい。


「そうですね。殿下には一つずつご説明差し上げたいと思いますわ」


 シェリールルは目を細め、チルーマを見た。


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