表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

52/61

52 チルーマの計画

 マツィエ公爵家から事前に王城へと潜入させていた侍女が一人、王城侍女のお仕着せを着て廊下を歩く。

 先ほどコールリアルに指示を出されていた侍女だ。

 彼女は予定の刻限になると、王太子の住まう東宮へと入る。

 夜間の警備たちは王城侍女の服を着た、公爵家レベルの作法を持つ侍女に何の違和感も持たずに中へと通した。


 夜の王太子の部屋への訪問ということもあり、侍女はいつもよりもキツい顔に見えるようにメイクをし、さらにカツラを被っている。万が一にも王太子に気に入られないように、そして身元が判明しないようにとの対策だ。


「夜分に失礼致します」


 銀色のトレーを持った侍女は、ストランド王太子の部屋の前で声を上げた。


「こんな時間にどうした」


 扉の向こう側から王太子の声がする。どうやら侍従もすでに下がらせているらしい。


「王妃殿下よりのお手紙にございます」


 当然、嘘である。

 けれど、使われている封筒も封緘も王妃本人のもの。

 ロット第二王子へと王妃が出したものを、使用済みとわからないように丁寧に開封し再度封を閉じたのだ。

 夜の灯りの中であればわからないであろう。


「母上から? 良い。中へ」


 部屋の入り口にいる護衛が扉を開けた。

 二人きりにならないよう、扉は開け放たれている。

 上位貴族に仕える所作を見せる彼女に、王太子は不信感を一切持たない。

 

「ふむ。確かに母上のものだな。ご苦労」


 机にあるレターナイフで開き、手紙を読んだ王太子の口元が緩んでいく。


「この手紙は、持っていった侍女に戻すよう書いてある。母上には、確かに承ったと伝えてくれ」

「かしこまりました」


 トレーに封を開けた手紙が再び載る。

 侍女はそのまま王太子の部屋を出ると、暗闇へと消えていった。


 手紙には王妃の手を模した文字で、『王太子夫婦の寝室に、そなたの為の妃を用意した。資格があるか確認せよ。この手紙は侍女を通じて私に戻すよう』と書かれていた。


 それはつまり、王妃が王太子の相手を新たに見繕ったという意味だ。

 王太子は書かれていたことに含まれている意図を考える。


(何度も相手を変えることはできないからな。俺が気に入るかを、秘密裏に確認しようということか)

 

 王太子の部屋の隣は応接室になっている。さらにその先が王太子夫婦の寝室だ。

 当然未だ使われたことはないが、掃除は日々されているので、どこもかしこも磨き上げられている。

 その扉を、ゆっくりと開いた。


「……王太子殿下……ですか?」


 部屋の奥にあるソファから、少しだけ不安そうな声が響く。

 チルーマは『シュペラブ』を元に、王太子の好みを短時間で割り出し、庇護欲をそそられる声を上げた。


「ああ。そなたは」


 その声に期待を大きくさせた王太子は、チルーマの方へと足早に向かう。

 ソファに座るチルーマは、シェリールルがかつてアメフォード侯爵令嬢やエルデアール伯爵令嬢の為に分析した、王太子が好む女そのものだった。今回の件に彼女は一切関わっていないが、公爵家の侍女たちはコールリアルの指示の元動いている。


「チルーマ・フェシャレルと申します」

「フェシャレル……たしか子だくさんの子爵家だったな」

「はい。実はアタシはシェリールル公爵令嬢に嫌がらせをされて……社交界に今出られなくって」


 くすん、とわかりやすい泣き声も、シェリールルの被害者という立場も、王太子には効果絶大だった。


「それはかわいそうに……。どれ、俺が慰めてやろう」


 ソファの隣に座ると、王太子はチルーマの顔をじっくりと確認する。

 乙女ゲームの逆ハーエンドヒロインだけあって、顔はとても可愛らしい。しかも王太子好みのメイクも施されているのだ。

 ごくり、と音が出そうな勢いで生唾を飲み込むと、王太子はそのままチルーマの髪の毛を撫でる。


「殿下……」

「ストランドだ……スティと呼んでくれ」

「スティ……。アタシ……」


 潤んだ瞳で見上げられれば、王太子は自制が効かなくなっていく。

 さらに、王妃からの推薦があるという勘違いも彼を後押しした。


(子爵家は地位が低いが――確かアメフォード侯爵令嬢も、元は男爵家の娘だ。いざとなればどこかの家に養女に出させれば、どうとでもなるだろう)


 アメフォード侯爵令嬢は、傍系からの養女である。

 縁もゆかりもない子爵家から養女にした場合とは、雲泥の差があることに王太子は気付いていなかった。

 なお、チルーマの実家は貧乏子爵家を乗っ取りに近い形で手に入れた、成金子爵家だ。高位貴族との縁など当然ない。


「アタシのこと……守ってくださる……? これがシェリールル公爵令嬢に知られたら、アタシ酷い目に遭わされてしまうかも」


 実際は、諸手を挙げて祝福されるであろうが。

 当然、そんなことは知らない王太子はすっかりチルーマの言葉に乗せられてしまっていた。


「守る……。ああ、俺はか弱く愛らしいチルーマを守らねばならぬな。その為には、チルーマを知りたい」

「アタシの全てをスティに捧げるわ。だからたくさん……愛して……」


 王太子の首にそっと手を掛けるチルーマを、彼はそのまま抱きしめる。

 ほどけやすく結われた髪が、はらりとほどけた。

 しどけなく見えるその姿はとても扇情的で、王太子の欲望ははち切れる直前だ。 

 そうして幾度も口付けを交わすと、彼女を抱き上げベッドへと連れ込むと、一晩中チルーマを離さなかった。


 翌朝。

 ロット第二王子の手が入っている使用人がこの部屋へと掃除に入ると、にわかに騒々しくなっていく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ