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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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50 ドルイトの行動

 ザキネア子爵領の港に、チルーマ・フェシャレルは立っていた。

 彼女は外務大臣が主催していた夜会で騒ぎを起こしたことで、隣国キャトタワ王国へと留学せざるを得なくなっている。

 騒ぎのせいで、このドグラン王国での社交が望めないためだ。

 ただ、キャトタワ王国とドグラン王国では言葉が違うため、チルーマはこの留学が嫌でたまらなかった。


「なんでアタシが、キャトタワ王国になんて行かないといけないのよ。隣国行ったら、逆ハーできないじゃん」


 あの騒動で父親に散々叱られたにも関わらず、転生者脳のチルーマは何が悪かったのかが理解できていない。なおかつ、自分がヒロインだと信じて止まないために、逆ハーすら諦めていなかった。

 まったく話が通じないチルーマに、彼女の家族は隣国の全寮制の寮に押し込めることを決め、彼女を馬車に乗せて港まで一人送り込んだ。


「失礼、ご令嬢」


 港で一人、船に乗りたくないとあぐねているチルーマに、声がかかる。

 チルーマはその声を良く知っていた。

 前世、大好きな推しの声優が声を当てていたからだ。


「ドルイト?!」


 振り向けば、そこには裕福な商人だと一目でわかる服装をした、ドルイトが立っていた。

 彼はチルーマに優しく微笑みかける。


「以前、お会いしたことがありますよね。港にいるということは、どちらかへご旅行でも?」


 公爵家の家庭教師に学び、上流貴族とも商取引ができるくらいのマナーを身につけたドルイトは、さすが『シュペラブ』の攻略対象だけあって、その姿は絵になった。

 チルーマはドルイトにうっとりとした目線を投げかける。


「りょ……旅行じゃなくて……アタシ……嫌なのに……」


 どう見ても嘘泣きだとわかるが、ドルイトは彼女に同情的な表情を浮かべた。


「ご令嬢、良かったらあちらのカフェでお茶でもいかがでしょう? お時間は大丈夫でしょうか」


 チルーマが乗るべき船は、あと一時間もすれば出航する。

 だが、彼女は行きたくもない隣国への船に乗るよりも、推し声優の声を聞きたいと思ってしまった。

 こくり、と自分が最大限可愛く見える角度で頷けば、ドルイトは優しく微笑む。


「では、お手をどうぞ、ご令嬢」

「アタシっ、チルーマよ」

「チルーマ嬢」


 公爵家の家庭教師に大絶賛された笑みを浮かべたドルイトは、チルーマをカフェへと連れて入っていった。

 その姿を確認したアスミュートの手の者が、鳥に手紙を括り付け、彼の元へと報告に飛んだ。

 羽音を聞きながら、ドルイトはカフェの奥にある扉の前の席へとチルーマを座らせると、店員にお茶とケーキをオーダーする。


「チルーマ嬢。あなたは隣国に行かないといけなくなったんですよね」

「そうなの。あの日、あなたを助けたいと思っただけなのに、悪役令じょ……えぇとシェリールル・マツィエ公爵令嬢の計略で、この国にいられなくなって……」


 店内は数人の男たちがコーヒーを飲み、語り合っていた。

 適度なざわめきは、二人の会話を消してくれる。

 チルーマの言い分に、ドルイトは少し困ったような表情を浮かべながら頷く。


「それは……私にも責任がありますね。どうでしょう、チルーマ嬢」


 彼女の手をそっと握る。

 目線は柔らかく、小首を傾げる確度まで計算して、ドルイトはチルーマを見つめた。


「実は私は殿下からご相談を受けていて、チルーマ嬢を探していたのです」

「えっ、で、殿下がアタシを……?」

「はい。私はあくまで商家の人間ですし、平民です。チルーマ嬢は子爵家のご令嬢ですから、やはりご身分のある方がお似合いになるかと」


 意味深な言葉選びをすると、ドルイトは続けて口を開く。


「これは内密に願いたいのですが……。殿下がチルーマ嬢のことをとても気にかけていらして――けれど、なかなか立場上ご自身から動くことはできないでしょう? そこで、チルーマ嬢自ら動いていただきたく」


 チルーマの脳内では、一気に物語が展開していった。


(『シュペラブ』にはそんなシーンなかったけど、()()()殿()()と会っちゃえば、絶対アタシと恋に落ちるもんね! 今の段階では逆ハーはなんか難しそうだし、だったら王太子妃になってから、攻略対象を集めればいっかぁ)


 その様子をつぶさに観察していたドルイトは、店員に手を上げる。


「チルーマ嬢、紅茶がなくなっているようだね。今新しいのを頼んだ」

「ドルイトは優しいのね。うふふ。アタシが王太子妃になったら、お城に呼んで一緒にいられるようにしてあげるからねぇ」


 その笑みに、ドルイトは吐き気を催しそうだったが、それをおくびにも出さずに微笑む。


「さあ、新しい紅茶をどうぞ。あとは私が段取りを進めますから、チルーマ嬢はあなたの魅力を最大限に活用していただければ」


 ドルイトのその言葉を最後まで聞き取ることができず、チルーマは瞳を閉じて意識を消していった。

 彼女の様子を確認し、ドルイトは立ち上がる。それを合図に、店内の男たちも一斉に動いた。

 チルーマをその後ろにある扉から外につけた馬車へと移動させる。

 馬車の中にはマツィエ公爵家の侍女が待機し、その場でチルーマの服装を美しく王太子好みのドレスに替えると、これまた王太子好みのメイクを施す。髪の毛は少し触れればほどける程度に纏め上げる。


「支度は完了致しました」

「ありがとうございます。では皆さま方はこちらのカフェの中に」


 侍女をカフェに移動させると、ロット第二王子とコールリアル、アスミュートがそこに現れた。

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