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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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42 アスが彼女に惚れるですって?

 チルーマが退室したあとは、夜会は再び喧噪に包まれていく。

 シェリールルの差配の見事さに、アメフォード侯爵令嬢とエルデアール伯爵令嬢はすぐに彼女の近くへと向かった。


「シェリールル様。あの方は何だったのでしょう」


 エルデアールが尋ねれば、アメフォードも扇子を広げた先で頷く。


「さぁ。私は存じ上げない方でしたので……。ただ、この場で我が家を悪しく言われてしまいますと……ねぇ」

「シェリールル様の仰る通りですわ。外国の大使も多くいらっしゃる中であれはさすがに」


 二人とも、茶会や夜会でシェリールルに失礼なことをしていたことは棚に上げ、チルーマをあざ笑う。

 シェリールルは目を細め、そんな二人に笑いかけた。


「不敬だと捉えられるかは、相手次第ですものね」


 その言葉に、二人は表情を一瞬硬くする。


(まぁ二人とも。この程度のことは、そろそろ軽く流せるようになっていただかないと)


 未来の王妃の立場を押しつけ――譲りたいのだ。

 舌禍地獄を繰り広げる高位貴族同士のやり合いには、慣れてもらわないと困る。


「今日は王太子殿下は、体調が優れなくてお出でになっていませんけれど――今度ぜひお二人を殿下にご紹介させてくださいませ」


 シェリールルが表情を一転させて、花がほころぶような笑みで二人に告げれば、エルデアールもアメフォードも優雅な笑みを繰り広げた。


「それは大変光栄ですわ。殿下の有限なお時間を、意味ないものにはできませんわ。ねぇアメフォード様」

「ええ。殿下のお体もお心も、臣下としてお支えしないといけませんものね」


 訳。

 絶対落としてみせるから、さっさと紹介してよね。


(このくらいの言い回しを、チルーマ嬢もできていたならねぇ。とはいえ、逆ハーってとても現実的ではないし、子爵令嬢から王妃というのは難しいわ)


 シェリールルとしては、一番の本命はやはりアメフォード侯爵令嬢だ。

 彼女は養女とはいえ、侯爵家の分家から引き取られているので、血筋としては問題がない。

 エルデアール伯爵令嬢も、金回りのよい家なのでうまく王家に取り入れば、王太子の婚約者に収まることは可能だろう。


「マツィエ公爵令嬢。妹御がお待ちです」


 コールリアルの代わりに、すぐ隣に控えていたアスミュートが声をかける。

 アンヌはドルイトと二人で話をしていたが、ちらちらとシェリールルを見ては様子を伺っていた。


「ありがとう。ではお二人とも、近いうちに招待状をお送りいたしますわね」


 シェリールルはそう告げると、アスミュートに連れられてそのままアンヌたちと合流した。



   *



「もうもう、びっくりしたわ。お義姉様ったら、とってもかっこよかったもの」

「アンヌったら。あの場は仕方がなかったのよ。あんなに大っぴらに、私の批判を他の方には意味の通らない形で叫ぶから」


 夜会の翌日。

 シェリールルとアンヌは、公爵邸の温室でお茶をしていた。

 昨夜起きた出来事の振り返り――という名の、アンヌのシェリールル褒め褒め大会だ。


「でもあれでフェシャレル子爵家は、我が家に借りができたでしょう?」

「フェシャレル子爵本人はそうでしょうけど、チルーマはどうかなぁ」

「どういうこと?」


 アンヌは、最後にチルーマがシェリールルとアスミュートを見ていたことを話す。


「アスを見ていたの? それって、アスが狙われてしまうということかしら」


 眉を寄せて不安そうな顔をしたシェリールルに、アンヌはにんまりと笑みを浮かべた。


「お義姉様。今、不安ですか」

「え? ええ。だって、あんな様子が少々……その、アレな方がアスに近付くだなんて、彼がかわいそうじゃない」


 頬に手を添えて小首を傾げるシェリールル。

 アンヌはうんうんと頷いた。


「そうですよね。ところで、もしもアスミュート様が、チルーマに惚れてしまったらどうします?」

「そんなこと、あるわけないでしょう!」


 アンヌの言葉に、シェリールルは立ち上がる。丸いテーブルが僅かに揺れて、カップがかたりと音を立てた。


「あ……。やだ、ごめんなさい。その」

「お義姉様、いいんですよ! でもどうしてそう思ったんですか」

「だって……その。アスはあんな野放図なタイプの方は好きではないかと……思って……」


 そこまで口にすると、シェリールルはしばし口を閉ざした。

 アンヌはそんなシェリールルを見守る。


(お義姉様。あと一歩! あと一歩踏み込んで考えて――あぁでも、今気持ちに気付かない方がいいんだっけ……でもなぁ)


 そんなアンヌの内心には当然気付かず、シェリールルは再び口を開いた。


「いいえ、ダメね。アスの気持ちを、私が勝手に代弁するべきではなかったわ」

「お義姉様は、アスミュート様がチルーマと結ばれるのは嫌ってことですよね」

「――そうね。さすがにあんなに荒唐無稽なことを口走る女性は、彼の伴侶としては認められないわ」

「ふふ。お義姉様、どんな方ならアスミュート様の伴侶に相応しいか、よく考えてみてください!」

「俺の話をしてるのか?」


 二人の前に現れたのは、話題の人物だった。

 

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