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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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37/61

37 夜会開始です

 外務大臣の屋敷は、王都の中だというのに、緑の森の中にあった。深い木々に囲まれた屋敷は、まるで城のよう。

 まさに外交の為の城屋敷と言えよう。


 その屋敷で、今宵夜会が行われていた。12月になり寒さが募り、空気が澄んできたこの時期に、毎年開催されるこの夜会は、国内に滞在する外国の要人を招待して行われる。


 今夜のシェリールルのエスコートは、兄のコールリアル。義妹のエスコートはアスミュートが務める。


「お義姉様じゃなくてごめんね?」

「いやぁ、さすがに公式に近いこの場で彼女のエスコートはできないよ。──今はまだ」


(アスミュート様隠さないなぁ。これでお義姉様、気付かないんだからすごいわよね)


 今夜の夜会には、王太子は来ない。なんでも、体調が悪いそうだ。ちなみに、毎年体調が悪い。


「まぁ、私としては欠席してくれればお兄様にエスコートしていただけるから、嬉しいくらいなのよね」

「俺もシェルのエスコートできるのが嬉しい。彼には、いつまででも体調不良になっていて欲しいものだな」


 小さな声でくすくすと笑い合う。両親は外務大臣と共に、各国の大使と歓談していた。


「まあ! シェリールル様じゃありませんか」


 呼びかけの主はアメフォード・ルディリアン侯爵令嬢。相変わらず、同じ派閥の令嬢たちと連れ立っている。


「アメフォード様ごきげんよう。あれから、ディスカッションには度々参加されていると、伺っていますわ」


 王太子の誕生日を祝う夜会にて、シェリールルにワインをかけようとした令嬢だ。野心家のルディリアン侯爵の元、王太子の婚約者の座を奪おうと、虎視眈々と狙っている。それを後押しすべく、シェリールルは彼女に度胸と対応力をつけさせる為、王都街計画のディスカッションに参加させていたのだ。


「ええ! 本当に素晴らしい経験をさせていただいていますわ! もう、王太子殿下の婚約者の座など、どうでもいいくらい!」

「えっ?! あ、その、それはちょっと……っ!」


 ここで王太子の婚約者の座を諦められたら、何の為に手を回したのかわからない。

 体勢を立て直し、扇子をはらりと開いた。


「アメフォード様は随分と積極的になられたようですわ。これはもう、未来の王妃としても、きっと頼りになられるでしょうねぇ」


 王妃、という単語にアメフォードは動きをビクリと止める。


(そう。王太子の婚約者という響きより、未来の王妃という響きの方が、あなたには魅力的でしょう?)


 目を細め、アメフォードに微笑む。

 今日のシェリールルのドレスはシャンパンカラーに深い金色の刺繍が施されたもので、刺繍と同じ金色の糸で作られたレースが袖口やオーバードレスとして飾られている。


 そんなドレスと相まって、シェリールルの圧倒的な美しさを見せつけられると、却って「私もその立場になればこうなれるのかも」と思ってしまうのだろう。


「そ、そうよね。私、やはり貴方様よりも王太子殿下のことを大切に想っておりましてよ」


 先ほどの言葉を撤回するかのように、アメフォードは同じく扇子を開き微笑む。


(ああ! なんて素直な方なの! 良かったぁ。アメフォード様は侯爵家のご令嬢ですし、一番婚約者の交代としてもスムーズにいけそうなのよね)


 まさかアメフォードは、シェリールルがこんなことを考えているなどと、思いも寄らないのであろう。


「ご挨拶はこのくらいで、失礼いたしますわ」

「ええ、ごきげんよう」


 颯爽と去って行く彼女の後ろを、派閥の少女たちが付いていく。


「そういえば、シェルはああいうのないね」

「ああいうの? ああ、派閥の少女たちを連れて歩くこと?」

「そうそう」


 双子の兄は小さい頃から一緒にいるのだ。その記憶の中で、シェリールルが派閥の少女たちを連れ歩く姿を見たことがなかった。 

 もちろん、友人と呼べる同年代の少女たちはいるが。


「お互い気を遣ってしまうじゃない? だから私はちょっと苦手で……」

「お義姉様はそうでなくっちゃ! 孤高の悪役令嬢は格好良いです!」

「そう? ふふ。アンヌがそう言うのであれば、私はこのままで良いわね」

「……孤高の悪役令嬢というものが、どういうものなのかわからないんだが、コール」

「俺に聞くな、アス」


 アメフォードとのやり取りを静観していた3人は、彼女たちが去った後すぐにシェリールルを囲む。余計な男に声をかけさせない、そんな気概が男2人には見て取れた。


「失礼。シェリールル・マツィエ公爵令嬢」


 そんな男共の気持ちを無視するように、堂々とシェリールルに声をかけてきたのは、ミスト家の家長であった。すぐ横にはドルイトも立っている。

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