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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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31 少年との出会い

 ホワテリの専門である病院施設を巡り、その衛生環境の良さに安堵し、修道女たちが過ごす修道院の質素さに、それでも住環境としては悪くないと、再び安堵した。壊れている箇所などの修繕は必要だったので、それに関しては予算化するように、近くに控えている文官に控えさせる。


「あの、これからの冬に向けて(たきぎ)の予算を頂けると」


 ホワテリが小さな声で告げる。

 なるほど、今はまだ厚着をすれば済む程度だが、これから本格的な冬がやってくる。そうなると、この建物は大層冷え込むだろう。

 聞けば、毎年薪代は苦心するのだそうだ。


「年間予算の見直しが必要ね。ここ数年、寒さが厳しいですしね。寒いと余計な病を得る可能性もあるわ」


 シェリールルの言葉に、ホワテリは頷く。彼女の顔にできているシワは、日々の苦労を数えてできたものなのかもしれない。

 そして最後に向かった先。


「こちらの建物が、児童院です」


 簡単に言えば孤児院だ。生まれたばかりの子どもから、大人と見なされる16歳になるまでの間の親のない子、もしくは育児を放棄されたり虐待された子、貧困に喘いだ親が棄てた子などが集められている。


「……あの、これはいつもの状態で?」


 これまでの静謐な環境が嘘のような場所だった。

 子どもが集まっているのだから、うるさいのは仕方がないだろう。だが、狭い室内に薄汚れた子どもたちが、わめきちらし、口の端に食べ物のかすを付けたまま走り回り、かと思えば雑魚寝をしている者もいる。


 有り体に言えば、育児放棄をされた子どもが来ているここも、まっとうには育児を行っていないのだ。無論、三食はきちんと食べさせているのだろう。だが、教育や礼儀作法などの人として生きていく上で大切なことを、教えているようには見えない。


「ええ……。どうしても体力がある修道女がいなくて、面倒を見られないのです」


 この修道院の中で、割り当てられている敷地も一番狭い。子どもたちが着ている服も、薄汚れたままだ。部屋の中に本らしきものも一つもない。絵本ですらだ。


「予算は……」

「病を得ている方々へ優先的に使っておりまして」


 ホワテリの言うことは嘘ではないのだろう。けして他の場所が豪奢なわけではない。台所も視察したが、贅沢をしているようにも見えなかった。建物の裏手には自給自足の為の畑もあるが、そこは職を失った者たちが働く場として提供されている。無料で得られる食料ではなく、市場よりは安いが、賃金として彼らに支払いをして得ている食料だ。


「これは、予算込みで改善が必要ね」

「マツィエ公爵令嬢?」

「ホワテリ様。子どもは放っていても、確かに姿形だけは大きくはなります。けれど、きちんと教育を施さなければ、彼ら彼女らが育っても、貧困から抜け出すことはできません」


 シェリールルの発言を聞き、ホワテリは涙を瞳に湛えた。


「ホワテリ様?!」

「今まで、何度も教会を通じて王宮に訴えたのです。けれど平民の子どもなど、放っていても育つだろう、と言われ取り合って貰えませんでした」

「……なんということ」


 この言葉に、シェリールルの感情に火が付いた。


「教会からの訴えということは、教会庁から財務部門へ直接上がっているはず……。わかったわ。宰相に直接訴えておきます」

「さ、宰相様に?!」


 慌てるホワテリに、シェリールルは満面の笑みを浮かべる。


「大丈夫です、宰相は私の父です。こういうときは、使える権力は使った方が良いのですよ!」


 走り回る子どもたちを見ながらそう告げると、近くにいた少年が睨み付け、叫んだ。


「おいお前! 結局権力と金かよ!」


「おいお前! 結局権力と金かよ!」


 ぼさぼさの髪の毛、薄汚れた肌。着古し、サイズも小さくなった服。痩せ細った体。

 そんな少年が、シェリールルを指さし叫ぶ。


「ドルイト! わきまえなさい! 誰ぞ、ドルイトを下げて!」


 周囲が緊迫する。

 ホワテリは怒気を発し、すぐ後ろに控えていたアスミュートは少しだけ歩を踏み出し、シェリールルをかばうように立った。

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