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継母と義妹に悪役令嬢と言われたので、しっかり務めたいと思います!  作者: 穴澤 空@4/11ドアマットヒロイン発売


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29 ご退場願いますわ

「わ、わかったわよ!」


 リアシュは、瞳を閉じ片手を空に上げる。そうして小さく呟く。


「光あれ!」


(その言葉! その言葉は、世界の一大ベストセラー、聖書の有名な言葉と被ってる! 『シュペラブ』の設定、手抜きじゃない?!)


 アンヌの心のツッコミはさておき、リアシュの言葉に、小さな光の粒子が彼女の手の周りに集まってきた。その手を胸の前まで下ろしてくると、両手でそれを包むようにし、再び空に上げた。


「わっ! きれい!」


 領民の誰かが叫んだ。

 その粒子は空で弾けて、そのまま光は花びらに変わり、舞い散ったのだ。


(確かにキレイだけど……これ、何の役に立つのかしら。光魔法ってそういうのだっけ? もっとこう……怪我を治すとかそれ系じゃないの?)


 アンヌは心の中でツッコミをするが、一応口には出さないようにした。


「なかなか良くできた魔法(マジック)でしたわ。ねぇ、聖女のリアシュ様。あなたのような素晴らしい聖女には、ぜひさらなる研鑽を積んで頂きたいの。今から、すぐに聖女育成学校への入学を推薦しますわ」

「え?」


 シェリールルの言葉に、リアシュは瞳を大きく開き固まる。手元に隠していたマジックの道具を、着ているドレスの袖の奥に隠しながら、少しずつ後ずさりをする。だが、それを見逃すような人間はこの場にはいない。


 さりげない動きのまま、コールリアルが彼女の背後に回り、退路を断つ。

 シェリールルを守るように、アスミュートは脇に下げている剣に手をかけていた。


「安心して下さいな! 我が公爵家から、しっかりと寄付金を援助させて頂きます。あなたが何度も口にしていたように、公爵家の力を使って」


(お義姉様、やっぱり怒ってる!)


 美女の冷めた微笑みほど、恐ろしいものはない。シェリールルは、絶対零度とも言えるような笑みをリアシュに向け、言葉を続ける。


「大丈夫。お送りする聖女育成学校は、元王家の教育係を勤め上げた方が、信念を持って経営されている教会直属の機関なので、男性は使用人含め一人たりともおりませんの。修道女の皆さんは安心して、聖女になる為の研鑽を積まれていますわ」


 そうして、シェリールルがちらりと領民の一部に目を遣れば、そこから隠れていた女性護衛官がするりと現れ、彼女の腕を掴んだ。女性といえど護衛官を務めるだけあり、腕力がしっかりとしている。リアシュが腕を逃そうともがくも、びくともしなかった。


「さ、我が家の護衛がこのままお連れ致しますわね。あぁ! ご家族にご挨拶が必要かしら? ご家族にも支度金を用意しますわね。聖女育成学校への道中、馬車で立ち寄りますから安心してくださいな」


 シェリールルの瞳に恐怖し、リアシュは一言も口をきけないまま、護衛官に連れられ、この場を去って行った。


「シェル、何をそんなに怒ってたんだい?」


 リアシュが去った後、領民たちも三々五々と立ち去り、元の祭りの喧噪が戻ってくる。アンヌが食べた分以外は、すっかり冷めてしまった串焼きの肉は、近くにいた領民が炭火で温め直してくれた。優しい領民で喜ばしい限りだ。


「だってお兄様。アスが私たちと共にいることを、否定されたのよ」


 唇を尖らせてむくれているシェリールルに、その場にいる全員──領民までもが、かわいい! と思ってしまう。


「シェル。それで怒ってくれたの? 俺の為?」

「アスは私たちが、無理矢理一緒にいさせているんじゃないのよね?」

「当たり前だろ? シェルが嫌だと言ったって、ずっと側にいるよ。ずっとね」


(ハイ、今のはアウトーッ! アスミュート様完全にヤンデレの仲間入りです!)


 アンヌの気持ちなど、シェリールルに伝わることもない。アスミュートが、なだめるように彼女の金色の髪を撫で、シェリールルはその手に頭を預ける。


(お義姉様、それ無意識でやっているなら、凶悪すぎます。でも……無意識なんですよねぇ……)

(シェル……お前それはさすがに……。いや、アスが幸せならそれで良いか)


 空はだんだんと暮れていき、街の中央広場ではかがり火がかけられたようだった。領民の奏でる楽器の音がしてくる。美しい歌声が聞こえてきた。


「そろそろ向こうに行こうか」


 コールリアルの声に、皆が頷く。

 広場では多くの領民が、それぞれ好きな踊りを曲に合わせて踊っていた。決まりがあるわけでもない。踊らねばならないわけでもない。

 だからこそ、皆自由に、楽しく体を動かす。


 コールリアルがアンヌを誘い、アスミュートがシェリールルを誘って、音楽に合わせて踊る。それは、この領地の昔からの伝統舞踏。

 四人が踊ると、周りからは歓声があがる。畢竟音楽も歌も、力が入っていく。


 そうして、体を近付け、遠ざけ、ターンをして、楽しく踊りながら、シェリールルはアスミュートに告げる。


「そういえば私、来月修道院に行くことになったから」

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