21 では我が家へどうぞ
「あたくしとロットさまのこいなかを、とりもちなさい!」
「なっ!」
ミエット王女の爆弾発言に、すぐさま反応したのはロット王子だった。
「何を言ってるんだ、ミエット王女。そういうことは、他者に頼むことではないだろう!」
「あら、ロット殿下。私は全然構いませんよ? こんなに愛らしい王女殿下ですもの。ご婚約者となられるなら、仲良く過ごされる方がよろしいのでは?」
これには、この場の男性三人が黙ってしまった。
ミエット王女は、にんまりと笑う。
「うふふ。ではけっていね。マツィエこうしゃくれいじょう、どうやってあたくしとロットさまのなかをよくするの?」
彼女のその笑みに、ロット王子は気付いてしまった。
(こ、こいつ……! 僕がシェリールル義姉様のことを好きだって、知ってたな?!)
そう。ミエット・キャトタワ王女は事前の調査で、ロット第二王子と、兄の婚約者のシェリールルがやたらと仲が良いことに気付いていたのだ。
なのでこの四人でのお茶会も、最初の頃は隠れて様子を伺っていた。ロット王子がシェリールルにどう接しているのか、シェリールルがどう対応しているのか、その目で見ておきたかったのだ。
そうして、確信した一つの結論。
(ロットさまは、マツィエこうしゃくれいじょうのことがすきなんだわ)
だからこそ、乱入することにしたのだ。
隠れて見ていたことを悟られない為に、わざわざ遠くの入り口まで戻り、走り寄ってくる。ここでシェリールルを味方にできればしめたものだ、そのくらいまで思っていた。
(おんなのカンはあたるのよ)
見た限りシェリールルがロット王子を恋愛対象として捉えているようには思えなかった。まだ幼い王女ではあるが、そうした感覚というものは、鋭いらしい。
「そうですねぇ。では、ミエット王女殿下、我が公爵家にてロット王子殿下と共に、過ごしてみてはいかがでしょうか?」
シェリールルの発言に、全員が彼女を見る。
「シェリールル義姉様、それは……僕も公爵邸に泊まって良いということ?」
「ええ、もちろん陛下の許可をいただいてからですよ」
「うん! 僕、今すぐに父上に言ってくるよ!」
先ほどまでの、若干暗くなっていた表情はどこへやら。ロット王子は明るい、キラキラとした表情を浮かべる。
「それは後ほどになさってください、殿下」
水を差すように、厳しく告げるのはアスミュート。隣でコールリアルも頷いている。当然だろう。このどさくさで、ミエット王女を放置して去ろうとしていたのだから。
「逃げさせろ、良いだろ?」
「ダメです。王族としての責任を全うしてください」
隣に座るアスミュートと、こそこそと小さな声で囁きあう。向かい側に座る女性二人には、その声は聞こえていないようで、シェリールルとミエット王女は楽しそうに、公爵邸の中で着るドレスの話で盛り上がっていた。
「王女殿下も、きちんとお付きの方々に確認をなさってくださいね。後ほど、両殿下宛に、我が家から招待状をお送りさせていただきます。そちらは封を開けずに、ロット王子殿下は陛下に、ミエット王女殿下は今回一緒にいらしている方で、一番権限をお持ちの方にお渡しください」
この言い回しに、アスミュートもコールリアルも、シェリールルに何か考えがあるということに気付く。ロット王子は、恐らくいつも通りであれば気付いていたのだろうが、今はミエット王女との仲を取り持つ話から一転──してはいないのだが──公爵邸でのお泊まり会に心が飛んでいる。ミエット王女は、さすがに王族とはいえまだ4歳だ。言葉の裏をしっかりと読み取ることは無理だろう。
──勘を働かせる以外。
そうして、元々はロット王子から公爵邸でミエット王女を預かるよう依頼された話が、何故かロット王子まで預かる話に広がり、この日は茶会を終えたのだった。
*
「もうやだぁぁぁぁぁ」
公爵邸に、ミエット王女の叫びが響く。




